傷
「ねぇ、私のこと・・・愛してる?」
私は問う。
「あぁ、愛しているよ・・・」
あなたは答える。
いつもの答え。
同じ答え。
でも、いつからだろう?
あなたが答える度、私の心に『傷』が増えていくようになったのは・・・
はじまりは、あなたからだった。
震える手で私を抱きしめてくれた。
「私のこと、愛してくれる?」
私は聞いた。
「愛しているよ。」
あなたは答えた。
私は愛されている。
あなたは私を愛してくれる。
そう思っていた。
あの日までは・・・
あの日、街中であなたを見たの。
私の知らない『誰か』と、楽しそうに歩いているあなたを・・・
そしてその『誰か』を、あなたが抱きしめたのを・・・
だけど、私は何も言わなかった。
あなたに何も聞かなかった。
だって、私はあなたに愛されているから・・・
私もあなたを愛しているから・・・
でも・・・
その日から、私の心に『傷』ができた。
「ねぇ、私のこと・・・愛してる?」
私はあなたの背中に問いかける。
「あぁ、愛しているよ・・・」
あなたは振り向きもせず答える。
いつもの答え。
同じ答え。
同じ答えの筈なのに・・・
私の心に『傷』は増える。
深くなる。
「ねぇ、私のこと・・・愛してる?」
私はもう一度、あなたに問いかける。
「あぁ、愛しているよ・・・」
あなたももう一度、そう答える。
「私も・・・・・・愛しているわ・・・」
私も答えを返した。
背中に隠したナイフを握りしめて。
あなたは、ようやく振り向く。
でも、もう遅いの。
私は痛くてたまらない。
あなたが付けた心の『傷』が、痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて・・・・
だからあなたも、同じ痛みを感じて。
私を愛してくれるなら・・・
振り向くあなたの胸に、私はナイフを突き立てる。
深く深く・・・
あなたは口から血を吐いて、怯えた眼で私を見ている。
どうしてそんな眼で私を見るの?
私を愛してくれないの?
愛してるって言ったのに!
私はこんなにもあなたを愛しているのに!!
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
やがて、あなたの眼から光が消える。
私は、動かなくなったあなたの唇に自分の唇を重ねる。
錆びた鉄の味がした。
でも、唇を重ねると心の『傷』が塞がっていくような・・・
そんな気がした。
ねぇ、あなた・・・
「愛しているわ・・・」




