【短編】狂科学者~脳内狂狂殺人鬼。闇実験をした先に~
かなりの年配で、ぼさぼさになった頭を掻いた白髪だらけの小太りの男が一人、自らが設けた実験室で密かに不気味な笑みを浮かべた。
「ついに……あいつに復讐する時が来たのう……」
その低い声は狭い密室の地下室内に響き渡り、今の自分の気持ちを正確に声に出したもののようだった。
あいつは昔、ワシから医者である立場を奪い、馬鹿にして去って行った。
それもあいつ自身が逃れるため、ワシに濡れ衣を着せたものだ。
そのせいで今、ワシの人生は盛大に狂い、それが許せなかった。
だから刑務所で過ごした30年間、ずっとそいつをどうやって殺すかだけを考えていた。
勿論、そいつをただで殺すつもりはない。
しっかりと苦しみを味わいながら死んでもらいたい。
だから、ギロチンはダメだ。
苦しみというよりかは恐怖が強め、一瞬で死んでもらうのは困る。
自分が無罪のはずなのにその傍らを背負って苦しみの日々を過ごした30年間を、一秒も足らずして償ってもらうのはあまりにもつり合わなすぎる。
やはり、薬品を使ってじわじわと殺すのが丁度いい。
そして、苦しみを担ってる中で火あぶりにする。
死体処理はする必要はない、放置しておけばそのうち朽ちてハエが集まる。
30年もの間、考え抜いた結果がこれだ。
石で頭を少しずつ叩き割ってやろうとも考えたが、やはりこれが一番だろう。
薬品については自分は元医者でかなりの薬物を家で所持していたものを組み合わせて作った最高傑作で、体を麻痺させて動けなくしその後に痛みの連鎖の苦しみが続く。
体が麻痺することで逃げることも自殺することも出来ない。
まさに今の自分にピッタリの理想の薬品だ。
その効果についても保証付きで、彼の温もりのある家族一人一人に効果を試して、息絶えるまでの苦しみ方を観察しておいた。
そしてそれは恨んだ相手の家族にとどまらず、狂科学者の身内や見知らぬ通行人までもを地獄に落とした。
それらの死体は勿論、暗闇の部屋の中、ひっそりと部屋の片隅で冷え固まっている。
「……で、次はお前の番じゃぞ!」
――ついにこの時が来た。
あいつに被せた袋を剥ぎ取り、顔をひっぱたいて起こしてやる。
それと同時に、あいつに少し前にかけた優しい麻酔が解けた。
「臭っ……」
部屋には死肉の匂いが漂い、マスクをつけてない彼の鼻を刺激する。
「これは、お前の家族の死肉の匂いじゃぞ! お前の家族のだぞっ! まさかお前、死んだ自分の家族のことすらも馬鹿にするのかっ! それを臭いと言い表すなんて、ワシには全くもって理解できんっ!」
狂科学者は、厳重なマスクをした鼻をさすって嘆く。
その時、彼は戸惑いからやっとこの状況を理解した。
さっきまで麻酔をかけられて眠っていた上に、今は身動きまでもが縄で縛られて完全に奪われている。
これはもう、この先の展開が完全に見えている。
「放しやがれっ! この狂科学者がっ! 俺の家族を返せっ!」
男は自分の思いを必死に叫ぶが、30年間自分を恨み続けた狂科学者には一睡も伝わらない。
「30年前、の失敗をこの医者に押し付けたお前の責任じゃ! 長い苦しみの中、息絶えるがいい……!」
ワシは、躊躇いも無しに暴れる男の手に注射を打ち込んだ。
彼が痙攣し、その動きが止まるまでずっと冷淡な目で見つめた。
男もワシを恨みの目で見つめる。
こっちが恨みたいもんじゃぞ!
動けなくなった男の首を一度締めてみるが、思っていたような表情はしてもらえなかったのですぐに首を握る力を弱めた。
「フォッ、フォッ、フォッ……」
最後に狂科学者は不気味な笑いを残し、こちらを睨む男の方へマッチで付けた火を放ってその場を立ち去る。
これで、狂科学者が本当に満足したのかどうか分からない。
彼の目の向く向きが、それを語っていた。
目の前にはしっかりと整った服を着た警察が二、三人。
狂科学者は、又もや刑務所行きになることになった。
これに関しては、誰も恨む必要はない。
警察も、こういう人を逮捕するのが当然だろう。
もう家は燃えて、住む場所もない。
だから、タダ飯が食っていけるとなればそれはそれで運がいい。
狂科学者は手に持っていた注射器を落とし、手錠をかけられた。
これを読み終えた読者の皆様、貴重なお時間を使っていただき本当にありがとうございます。
この作品を執筆した作者から言わせてほしい人が一つだけあります――「作者がサイ○パス」とかだけは絶対に思わないでくださいねっ!
変な薬物とかも犯罪とかも犯したことは無いので安心してください。
あくまでも想像上のフォクションです!……フィクションです! ←ココ重要
次作への励みになりますので、朗読後に評価等お願いします。←ココも重要