表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルバム  作者: 一色蒼生
4/6

3話 いざ、目的地へ。

3話です。ストックが尽き、投稿が遅れました。

7月15日 土曜日



ジリジリと肌を焦すような暑さ。夏という季節を嫌でも実感する。夏は嫌いではないが好きという訳でもない。だが、夏は夏でこの季節にしか出来ないことだって沢山ある。そう、例えば....。


「8時30分か。流石に早く着きすぎたか。」


駅前の時計台の下にある椅子に座り、腕時計の時間を確認してみると集合時間30分前に着いてしまった。楽しみすぎて早めに起きてしまい、時間に余裕を持って出たつもりが完全に早く着きすぎてしまった。時間ギリギリや遅れてくるよりはマシだが、少し暇である。時間を潰すためにスマホゲームをやろうと電源をつけようとしたら、真っ黒い画面に自分の顔が写った。そこには、にやけている自分の顔が写っていた。だって仕方ないだろう?ついにこの日がやって来たのだ。そう、夏のイベントの一つである、クラスメイトの女子とのプール。俺はこの日を待ちわびていた。ただこの日が近づくにつれ俺は浮かれていってバイトに集中できない日が多かった。店長とバイトの先輩には少し迷惑を掛けてしまったかもしれない。今度、店長はともかく先輩にはジュースくらいは奢っておかないと。と心の中で謝罪をし、暇を潰す為スマホでゲームのアプリを立ち上げた。そこから10分くらいだろうか、聞き覚えのある声が聞こえた。


「おーい、悠人ー!」


声がした方に顔を向けると裕人が駅の方から出て来るのが見えた。格好はサンダルに茶色いハーフパンツに白いTシャツという、シンプルで夏らしい格好だった。あと、小学生が持っていそうな黒色のプールバックを肩からぶら下げていた。


「おい、なんだその小学生が持っていそうなバックは」


「あぁ、これか?家にこれしか無くてさ」


「いや、絶対他にもあるだろ」


「弟が夏の臨海学校に行くから、それで俺のリュック貸してるんだよ」


「そういう事か」


納得した。ただ幾つか、リュックやカバン持っていてもいい気がするが。そこは裕人の自由なのでこれ以上は特に何も言わなかった。そこからは裕人と話しながらあとの二人が来るのを待っているが。流石に夏というだけあって何もしなくても汗が滝のように流れ出てくる。何か無いかと辺りを見回すと丁度近くに自販機があるのを見つけた。


「裕人、何飲む?」


「え?あぁ、なんでもいいぜ。悠人チョイスで」


「そういうのが一番困るんだよ」


「大丈夫、俺は悠人のセンスを信じてるから」


「変なの買ってきても、文句いうなよ」


「悠人はそういうの買わないから」


「よくご存知で」


そう。俺は口ではああ言うが、実際買った事が無い。たまにコンビニやスーパーで、なんだこれ?と気にはなるが買うまでには至らない。何故なら、それで予想より美味しければいいがそうでなかった時の喪失感となによりも残してしまうのが勿体ない。そういう理由があり俺はあまり奇抜な物は買わない。


「さて、どれにしたもんかねぇ。裕人は炭酸系でいいだろう」


そう言って、財布からお金を取り出し、自販機に500円玉を入れた。裕人の分は炭酸系で決まっているが、自分のは何にしようか少し悩んでいた。とりあえずボタンを押し、裕人の分は買い終えた。出てきたお釣りの内200円をまた、自販機に入れ。特にこれと言って飲みたいものがなかったので、無難なお茶にした。ガコンとお茶が落ちてくる音がして俺は取り出し口から出そうとしていた時にまた、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。


「あれ?悠人じゃん?おっはー!」


「ん?あぁ、桜木か。おはよう」


「何、悠人も喉乾いた系?」


「そんな所だ。桜木も何か飲むか?」


「え?いいの!」


桜木はるんるんといった感じで「何にしようかなー」と言いながら飲み物を選んでいた。その間に俺は、自販機に今出てきたお釣りと先程のお釣りを入れた。


「よーし!これだ!」


「何買ったんだ?」


「これ!」


「漢の…スイカジュース?」


「いや〜気になってたんだよね。ありがとう」


「どういたしまして」


そんな会話をしていると、自販機からティロリロリン♪という音の後に、「数字が揃ったよ!もう一本選んでね」という音声案内が聞こえた。見てみると小さなディスプレイに数字の7が4つ見事に揃っていた。


「へぇ、これって当たるんだな。運いいな」


「あたし、こういうのよく当たるんだぁ」


「と言っても飲む人いなくないか?」


「え?茜音にあげればいいんじゃない?」


「そうだな。そうするか」


自販機のボタンに手を伸ばしボタンを押そうとしたが、ピタッと止まってしまった。何故なら俺は折原さんの好きな飲み物をよく知らないからだ。いつも学校では、水筒を持ってきてそれを飲んでいるからである。悩んでいる俺を見かねたのか桜木は自販機のボタンを押してしまった。


「あっ!おい!?勝手に!」


「え?大丈夫だよ、茜音とは幼馴染だから悠人よりは好み知ってるから」


「そうなのか...って幼馴染!?」


「え?言ってなかったっけ?」


「初耳だが?」


「そうだっけー?あたしと茜音は幼稚園からずっと一緒でさ、幼馴染なわけ!」


「へ、へぇー」


かなり昔からの付き合いだったという事に驚きを隠せなかった。まぁ、でも。幼馴染の桜木が選んだのだから間違いは無いだろう。


「はい、これ。茜音に渡しといてね」


「え、桜木が当てたんだから自分で渡せば良くないか?なぜ俺なんだ?」


「い・い・か・ら!渡しといてね?あと、あたしが当てた事言わなくていいからね?」


「は、はい...」


何故か桜木に物凄い威圧を感じ、ただただ返事する事しか出来なかった。あと、何故わざわざ当てた本人じゃなく俺が渡すんだろうか。少し疑問に思ったまま裕人の元へ戻っていき。裕人に買った飲み物を投げ渡した。


「裕人、ほれ!」


「おっと...サンキュ...って桜木?」


「なによ、いちゃ悪いわけ?」


「いや、誰もそんな事言ってないだろ。にしても、桜木の私服初めて見たけど....」


「な、なに?おかしいって言いたいの?」


「なんで俺の言う事は、すぐマイナスに受け取るかなぁ!?」


「じゃあなんだっていうの」


「普通に似合っていて可愛いなぁーって。俺は好きだぜ」


「そ、そう....。と、というか!中村はその格好もう少しどうにかしたら!。悠人みたいに少しはお洒落したら....モットカッコイイのに。」


「ん?最後何て言ったんだ?」


「な、なんでもない!馬鹿!」


「えぇ。何で怒ってるんだよ」


「怒ってない!」


桜木の方は裕人から顔を逸らし、若干顔が赤いような気がするが、ぎゃあぎゃあと言い合っている。やはり、この2人がいると騒がしい。俺は2人から少し離れた所で買ったお茶を飲んだ。美味い!やはり、夏は冷たいお茶だろうと一人心の中で思いながら冷たいお茶を堪能していた。しかし、俺の服装は白のスニーカー、ジーパンに水色と灰色のアシンメトリーの長袖のシャツだ。当然、暑いので袖は2回折ってまくっている。シンプル且つ清潔感がある様に気を使っている。俺の服装はともかく桜木の服装は、裕人が言ったように似合っていた。少しヒールが高くなっている茶色のサンダルに、白のロングスカートに上は茶色い半袖のシャツに、腕には銀色のブレスレットを着けていた。カバンも服装に合ったお洒落な物だった。腕時計の時間を確認してみると、そろそろ約束の9時になろうとしていた。すると、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。


「佐倉くーーん!!」


「折原さ....」


手を振りながら折原さんがこちらへ向かって来た。しかし俺は、折原さんの姿を見て固まった。何故なら、いつもは結んであるはずの髪はおろしており。服も当然、制服ではなく白いワンピースを着ており、それに合わせてか白い大きな帽子をかぶっていた。普段とは違う格好で見慣れておらず、更に俺はその姿に見惚れてていた。そのせいなのか自分の心臓の鼓動が速くなっているのを感じる。


「佐倉君、おはよう。ごめんね、待たせちゃった?」


「お、おはよう、折原さん。だ、大丈夫だよ。みんな今来たところだから」


「よかったぁー。一応早めに出たんだけど、道が混んでてギリギリになっちゃった」


えへへと言いながら微笑んでいた。それを見た俺はドキッとした。収まりつつあった心臓の鼓動がさっきより更に速くなっている気がする。落ち着け俺、と心の中で何回も自分に言い聞かせなんとか平静を装った。しかし改めて折原さんのワンピース姿を見てみるとまるで、ドレスを着ているみたいに上品で尚且つ白百合の様に美しかった。折原さんが来たことに気づいたのか桜木達が歩いてきた。


「あっ!茜音じゃん!おっはー!」


「うん。おはよう、真央ちゃん、中村君」


「おう、おはよう。折原さん」


「これで全員揃った事だし行くか」


俺達は、折原さんが乗って来た車の所へ向かった。そして俺と裕人は驚愕した。少し遠くてよく見えなかったが、そこにあったのは真っ黒で一般的な車より長い車体、全長8メートルくらいはあるだろうか。それは紛れも無いリムジンだった。そして側には執事服を着た優しそうなおじいさんが立っていた。



「悠人、俺。リムジンなんて実物初めて見たぜ。実在するんだな」


「裕人、安心しろ。俺もだ」


「2人共何ぼーっとしてるの?置いていくよ?」


「あ、あぁ!裕人、いくぞ」


「お、おう。何か緊張してきた」


俺も少し緊張していた。リムジンなんてそうそう乗れるもんじゃない。何なら人生で1回も乗らない人の方が多いんじゃないかと思う。リムジンの近くまで来たら、執事のおじいさんがこちらに気付いたのか近寄って来た。よく見たら高木さんだった。


「真央様、悠人様、裕人様。お待たせして申し訳ございません。」


「じいさん、何で俺の名前を知ってるんだ?どこかで会ったりしたっすか?」


「失礼致しました。私、折原家の執事をしております、高木と申します。以後、お見知りおきを。それと、裕人様のことは茜音お嬢様から聞いて存じております。」


「そうなんすか、よろしくっす!高木さん」


「はい、こちらこそ、今後とも茜音お嬢様をよろしくお願い致します。」


「おう!任せて下さいっす!」


「お久しぶりです、高木さん。そんなに待ってないんで大丈夫ですよ。あと、様はやめて下さい。普通に悠人でいいですよ」


「そうでございました。悠人さんお久しぶりでございます。しかし、3人共見るに汗をかいておられます、多少とは言えお待たせを」


「茂さん、大丈夫だよ。本当にあたし達待ってないから。というか茂さんと悠人は知り合いなの?」


「はい。ちょっとしたご縁がございまして。それでは、この炎天下の中立ち話をするのもあれですので、お乗り下さい。それとお荷物はお預かりしましょうか?」


「俺は大丈夫っす。そんなに大きくないんで」


「あたしも」


「俺も大丈夫です」


「かしこまりました。席は自由に座って頂いて大丈夫でございます。しかし、シートベルトだけは必ず着用をお願い致します。では、どうぞ」


リムジンのドアを開けて俺達を招き入れてくれた。中に入ってみると見た目より広かった。そして何より驚いたのが内装だ。まず、座席が逆L字型になっており、その正面に長いテーブルが置いてありその上にはワインやウィスキーなどそれ用のグラスが置いてあった。あと、気になったのが。後ろからは運転席が見えなく代わりに大きなモニターがあった。どこを見てもキラキラしており本当に車か?と思ってしまう程である。席は前から裕人、俺、桜木、折原さんの順に間隔を一つずつ空けて横に並んで座った。4人全員入った事を確認すると、高木さんはドアを閉めた。


「見た目だけじゃなく中も凄いんだな」


「おい、裕人。あんまり勝手にいじるなよ?」


「悠人、俺を何だと思ってるんだ」


「確かに、中村ならあっちこっち触りそう」


「流石に触んねぇよ!」


「大丈夫だよ中村君。爆発とかはしないから」


「茜音?それはちょっと違うかな」


「え?」


「あっ、そうだ折原さん。これ、よかったら」


「わぁ!佐倉君、ありがとう!私、これ好きなんだ。でも、よく知ってたね。私がこれ好きな事」


「あぁ、それはさく....いっ!?」


「だ、大丈夫?」


「う、うん大丈夫」


桜木に弁慶の泣き所を蹴られた。かなり痛かったので変な声が出てしまった。蹴られた脚を撫でつつ、折原さんに苺ミルクを渡した。チラッと桜木の方を見てみると、鬼の様な形相で「余計な事言うんじゃねぇ」と言わんばかりに俺を睨んでいた。そういえば、当てた事を言うなと釘を刺されていた。すると、突然。車内のスピーカーから声が聞こえた。


「皆様、シートベルトは着用されましたでしょうか。改めまして、本日皆様の執事兼この車の運転手を務めさせて頂く、高木と申します。目的地まで一時間程かかりますが、トイレなどは途中パーキングエリアがありますので。何か問題がございましたら、備え付けの電話をお使い下さい。私が居る運転席に繋がりますのでそのまま用件を申し付け下さい、対応致します。話が長くなってしまいましたが、出発致します。」


そう言い終わると、プツっと切れた。にしても四人が乗ってもまだ、かなりの広さがある。一般的な車のサイズだと四人乗ったら結構ギリギリだと思う。そう思うとリムジンを所有している折原さんはお嬢様なんだなぁ改めて思う。雰囲気とたまに突拍子もない事を言ったりする所はお嬢様感があるがそれ以外は普通の女の子って感じがする。あと、やっぱり可愛い。そんな事を思いながら無意識の内に折原さんの事をずっと見ていたらしく、折原さんが恥ずかしそうにしていた。それに気づいたのか桜木が。


「悠人。何でずっと茜音の事見てんの?」


「さ、佐倉君。わ、私の顔に何かついてるかな?」


「えっ!?あ、いや、大丈夫。何もついてないよ、少しぼーっとしてただけで。ごめん、勘違いさせちゃって」


「そ、そっか。何もついてなくてよっかたぁ」


「なんだ?悠人、寝不足か?俺はしっかり寝て来たぜ」


「い、いや、ちゃんと寝たよ」


「そうか、あんまり無理すんなよ」


「あぁ、ありがとな。裕人」


「ねぇ!暇だし何かしよ!」


「確かに暇だけど何すんだよ」


「あ、確かここに......あった!」


そう言って座席の下の収納スペースから折原さんが取り出した物は細長い棒の様な物だった。一つだけ、先端が赤く塗られれおり、それ以外は数字が書かれていて、宴会やキャバクラなどで使われていそうな見覚えのある棒だった。


「茜音、それって王様ゲームで使うやつじゃ......」


「王様ゲームってなに?」


「何でもない、忘れて」


「えー気になるよ!教えてよ、真央ちゃん!」


「茜音にはピュアでいてもらいたいから」


「意味が分からないよ。真央ちゃん!」


「とりあえず、しりとりでもしようぜ」


「「小学生か!!」」


思わずつっこみをいれてしまった。桜木も同じ事を思っていたらしく同時につっこんでしまった。結局、やる事がなくしりとりをして途中のパーキングエリアまで時間を潰した。パーキングエリアに着いてからはトイレを済ませた後、暫くお土産コーナーなど見て周った。その後は車に戻り、目的地に着くまで他愛もない話をした。


…………………


「ん〜着いたー!広〜い!」


「いや、なんだあの建物。ホテルか?」


「す、凄いな。思ってた以上に広そうだ」


「この施設の広さは、詳しくは聞いてないけど。「東京ドーム十個分くらいだ」ってお父さんが言ってたよ」


「「じゅっ!?」」


「ゆ、悠人。つ、つまりあれだろ。この敷地内に東京ドームが十個入るってことだろ?」


「あ...あぁ、そういうことになるな。東京ドーム十個分の面積があるという事だな」


「中村はともかく、悠人まで何アホな事言ってんの?置いていくよ?」


「おい、今さらっと馬鹿にしたろ」


「聞き間違いじゃない?」


「この距離で聞き間違えるもんか!絶対言ったろ!」


「しつこい男は嫌われるよー?」


「あっ!おい!逃げんな、桜木!」


「のろまな中村が悪いんだよ〜ん!」


「佐倉君、私達も行こっか」


「そうだね、荷物持とうか?」


「え!?い、いいよ!そんなに重くないから!」


「そう?でも重かったらいつでも言ってよ。俺も、一応男だしさ」


「う、うん!ありがと。佐倉君」


毎度恒例の裕人と桜木のやり取りを後ろから見つつ、俺と折原さんは裕人達を後から追った。これから折原さんの水着姿を見れると思うと胸が高鳴った。しかし、今の俺には後に起こる事など知る由もなかった。

次回、水着回です。プールといえば、自分が幼少期の頃に遊具があるプールに遊びに連れて行ってもらった時。滑り台で滑ろうとしたら、頭を強く打ち気絶した事があります。皆さんはどんな思い出がありますか?それではまた次回もお楽しみに。ご機嫌よう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ