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アルバム  作者: 一色蒼生
2/6

1話 夏休み、始まる。

続きです。何度も確認していたら遅くなってしまいました。

1話  夏休みの始まり


7月4日 火曜日



雲一つ無い見事な快晴。その中で、少し早い気もするがミーンミーンと外で蝉が木に留まり鳴いている。この鳴き声を聴くと嫌でも夏と思わせてくれるので夏の風物詩の一つだろう。


「........................」


「おい、裕人。目が死んでるぞ大丈夫か?」


「いや、これ、宿題の量おかしくね?」


「それは自業自得だろう、テストで赤点取りまくった裕人が悪い」


「そ、それにしてもこの量は尋常じゃねぇよ!?」


「俺には頑張れとしか言えねぇわ」


今日は7月4日の火曜日。テスト返却兼終業式だ。うちの学校の定期テストは6月21日から24日の4日だ。そこから10日間テスト休みで生徒達は学校に来ない。そして今日はさっきも言った通りテスト返却兼終業式、長期休みでテンションが上がるものもいれば、テストで赤点取りまくって課題の量に絶望する人も所々見かける。現に目の前に絶望してる奴が1人。


「そ、そんな!?見捨てないでくれよ!!」


そう言って俺にすがりついてくる裕人。


「やめろ、暑苦しい、少しは教えてやるから離れろ」


「ゆ、悠人ー!!助かるぜー!」


「え、まじ?こんなに赤点とったの?よくこれでこの学校に合格出来たね」


どこから湧いたのか桜木が裕人の答案用紙を見て驚いている。俺は見てないがそんなに酷いのか?


「おまっ!?いつからそこに!!答案用紙返せ!この野郎!!」


「へへ〜ん!やだよ〜ん!返してほしかったら取ってみな!べぇー」


「この野郎....上等だ!!俺をあんまり甘く見るなよ!!」


「.......はぁ、また始まった」


この、裕人と桜木のやり取りは日常茶飯事なので気にするクラスメイトはいないが中々騒がしい。今度はテスト用紙の取り合いですか。この前はお弁当の取り合いだったのに、よくも飽きずにやるもんだと感心と呆れが半々だった。気にせずぼーっとしていたら。


「あはは、また始まったね」


少しびっくりしたが横から声がしたので見てみると折原さんがいた。何なんだ、折原さんといい桜木といい気配でも消せるのか?祖先は忍者とか?いやいや、無いな。そんなくだらない事を自問自答していた。


「お、折原さんか」


「ん?どうかしたの?」


「何でもないよ、裕人と桜木がくっつくといつもあぁなるから、仕方ないと言えば仕方ないけど、よく飽きないなぁーっと思って」


「あの二人本当に仲良いよね」


ふふっと笑いながらそう言う折原さん。口元を手で隠しながら小さく笑う姿は、無意識に可愛いと思わず口から出てしまいそうなほど可愛らしく笑っていた。流石、お嬢様と言うべきかその一挙手一投足から隠しきれない可憐さと優雅さが滲み出ていた。そんな事を思っていると話題は当たり前と言うべきか、テストの話題に切り替わった。


「そういえば佐倉君はテストどうだったの?」


「まぁまぁかな、世界史が今回範囲広くて手こずったよ」


「そうだよねー世界史って日本史と違って範囲広いからね、私も手こずったよ」


「それでも折原さんは今回も学年1位でしょ?凄いなぁ、学年1位なんて俺には無理だよ」


「そ、そんな事ないよ!佐倉君だってそう言いながら学年5位でしょ?前回なんて2位で私と1点差でしょ?」


「い、いや、たまたまだよ。今回は世界史があって順位下がちゃったし」


「じ、じゃあ、私でよければ世界史教えてあげようか?なんなら他の教科も!」


気のせいか若干顔を赤くしてそう言ってくる折原さん。これは願ってもないチャンスだ。あの、総合点数学年1位でしかも美少女の折原さんに教えてもらえるとはなんという贅沢。この誘いが嫌な男子はいないはず。


「いいの?折原さん大変じゃない?」


「だ、大丈夫だよ!た、大変じゃないから!」


何故か焦っている折原さん。理由は分からないがこれはチャンスだ。折角折原さんが教えてくれると言ってるんだ。これを期に折原さんと距離を縮めるチャンスだと思い、断る理由がなかった。


「なら、時間がある時教えてもらおうかな」


「うん!任せて!いつでもいいよ!」


自信たっぷりな二つ返事で了承してくれた。これなら夏休み後の定期テストの世界史は大丈夫だと思う。少し心に余裕が出来た俺はこんな事を口走ってしまった。


「あの、折原さんって夏休みの予定とかある?よかったら俺の実家に遊びに来ない?」


「え?.......あの、その、え?」


俺はとんでもない事を言ってしまった。まだ付き合ってるわけでもないのに、いきなり実家に遊びに来ない?ってそれは困惑するだろう。なんと言って誤魔化したらいいか今の自分の頭では思い付かず、オロオロしながらどう言い訳しようか必死に考えた。


「ち、違うんだ!折原さん!その、何て言うか...そう!実家にいる親に友だちを紹介したくて、べ、別に折原さんが嫌なら無理にとは言わないから!」


珍しく焦ってしまった。あぁっ!余計な事言うんじゃなかった。何を言ってるんだ俺は!そんな事言ったら引かれるに決まってるじゃないか!とそんな後悔を心の中でしている俺に予想外の答えが返ってきた。


「え、えーと佐倉君がよければ一緒に行ってもいいかな?」


「え?あ、う、うん!全然OKだよ!」


まさかのOKという答えで呆気にとられてしまい返答がぎこちなくなってしまったが、折原さんに嫌われなくてよかった。そう、心の中で大きく安堵した。未だに心臓がバクバクしているのが自分でもよく判る程、大きく鼓動していた。


「え?何、何ー?茜音、悠人の家に遊びにいくのー?私も行きたーい!」


「おぉ、丁度良かった。桜木も行くか?」


「もち、いくよ〜ん、夏休み暇だしそれに旅行楽しそうじゃん?」


さっきまで裕人とふざけあっていた桜木がいつの間にか帰ってきていて、話を聞いていたのか桜木も行きたいと言い出した。まぁ、桜木も後で誘おうと思っていたので丁度良かった。更にこの話を聞いていたのか桜木の後から裕人の声がした。


「俺も行くぜ?」


「えー、中村もいくのー?」


「なんだよ!悪いか?そもそも最初に誘われたのは俺だ」


「べつにー」


この2人よく飽きないものである。しかし何だかんだあり今年の実家への帰省はよくつるんでいる3人と一緒に行く事になりそうだ。去年は夏休みには帰れてなく冬休みは1人で帰ったので、その時は少し退屈だった。でも、今年は友達と帰るので退屈する事はないだろう。そんな事を思いながら騒がしい友人達との実家への帰省が少し楽しみになっていた。


「それじゃあ個人でスケジュール空けといてくれ、俺も帰る日が決まったらコネクトで連絡するから」


「おう!わかったぜ」


「はいはーい了解」


「うん、わかった」


すると、測っていたかの様にチャイムが鳴ると同時に担任の先生が入ってきた。


「さぁ!みんな体育館へ移動だぞー!」


先生の掛けでクラス全員が体育館に向かい始めているクラスメイトを見ながら俺は少し憂鬱だった。何故なら、多分大体の学校の校長の話は長いと思う。座って聞くならまだしもそれを立ったまま聞くのは拷問なんじゃないかと思う。そんなことがあるので体育館へ行くのは気が進まなかった。


「どうする?俺達も体育館へ向かうか?」


「あーめんどくせぇー。話しなげぇからなぁ」


「さぼっちゃう?」


「おっ?珍しく意見が合ったな」


「ふ、2人ともだめだよ、バレちゃうよ」


「大丈夫だって、うちの担任点呼とらないし」


「悠人はどうすんだ?」


「あぁ、俺か?そうだなぁ…たまにはサボってみるのも悪くないな」


「よし!決まり!で、茜音はどうするの?」


「わ、私は....」


折原さんは少しためらっていた。まぁそうだろう真面目な折原さんからしたらサボりなんて有り得ないことだろうと思っていたが。折原さんは少し沈黙したあとにこう言った。


「わ、私もサボる!」


「よし、決まりだな」


「で、どうするんだ?これから屋上にでも行くか?」


「さんせーい」


「なら、屋上で時間を潰すか」


意外にも折原さんが乗り気で内心びっくりしたが、特に何も言わずに俺達4人はサボるために屋上へ向かった。俺達が今いる階は3階、屋上は6階の階段を上がった所から出られる。ということはあと、3階登らなければならない。これが結構しんどかったりする。


「はぁ...中々疲れるな」


「そうか?俺は楽勝だぜ?」


「それは..あんたが体力馬鹿なだけよ」


「はぁ....はぁ...屋上までこんなに階段登るとは思わなかったね」


4人はようやく屋上への扉の前まで来ていた。ある1人は除いてみんな肩で息をしていた。ドアを開けると当たり前だが目の前は屋上だった。


「少し風が吹いていて涼しいな」


「でも、かなり暑いぜ」


「日陰で休もー死んじゃうよー」


そう言って俺達は日陰がある場所に腰を下ろした。夏だ、誰もがそう思うであろう暑さである。少し遠くを見ると建物などがゆらゆら揺れて見える、蜃気楼だろうか。しかし7月の始めだというのにこの暑さ。異常気象ではないかと思うくらい暑い。それに少ししか経ってないというのに制服が汗ばんできて少し気持ち悪い。


「うわー日陰でもあちぃー」


「だーれー屋上行こうとか言い出したのー」


「裕人」


「中村君」


「ちょっ!?悠人に折原さんまで!」


「中村帰りにアイス奢りね」


「はぁ!?なんでだよっ!!」


「「賛成」」


「3対1で中村に拒否権は無し」


「まじかよぉ」


そう言ってがっくりとうなだれる悠人。それから俺達4人は暑い中、終業式が終わるまで夏休みの予定や他愛もない話をして時間を潰した。その後、終業式が終わる時間を見計らって他のクラスに紛れて教室に戻った。授業は無いのでお昼前ぐらいに学校は終わった。下校は裕人、折原さん、桜木、俺の4人で帰った。その帰り道、裕人が奢ってくれたアイスを食べながら帰って行ったが、そこでも裕人と桜木は騒がしかった。しかし、その時食べたアイスはいつもより少し美味しく感じた。

夏って何か雰囲気が好きなんですよね。皆さんは、どの季節が好きですか?僕は、春が好きです。それではまた次回。ご機嫌よう。

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