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群青の少女戦記  作者: だいだらぼっち
一章
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始炎

  数分後、俺達はリビングに向かおうとしていた。

「文乃は……まだ帰ってきてないみたいだな」

反射的に玄関にローファーがない事を確認して安堵する。そりゃそうだ、こんな可愛い子を部屋に連れている事を知られたら、どうなるかわからない。

「文乃? 惣一朗の兄弟ですか? 」

「そう、正確には双子の妹。まぁ、俺の方がほんの少しだけ早く産まれただけなんだけどね」

「へぇ……双子なんですか。私には兄弟はいないので、なんだか羨ましいです」

凛音が興味ありげな顔で呟く。

「いや、そんな良い物でもないよ……結構いいように使われるだけって部分もあるし」

ありのままの真実を述べる。特に、高校生になってから完全に主従関係が出来ている気がする。それとも、俺が妹に甘いのだろうか。


 リビングのドアを開ける。

「そういえばシュークリーム買ったんだけど食べる? 今日のお礼ってことで」

「ありがとうございます。お礼という事なら、大量のシュークリームをあらかじめ注文しておいた方がいいですよ」

シュークリームをほおばりながら、俺を少し揶揄う様な口調でそう話しかける。

「俺はこれから山ほどお前の世話になるのか……ってまだ分かんないことが多すぎる!! そもそも護衛って、いつまで、どんな風に守られるんだ? 俺はこれからもあんな奴らに襲われ続けるのか? 後!! そもそもなんで俺に捕獲命令が出てるんだ!! 」

「……一度にそんな沢山質問しないで下さい。まだ食べてる途中です」

ムッとした表情の凛音に叱られる。

「あっ……すんません…」

シュークリームを食べ終えて一息ついた後に凛音は話し始める。


 「そうですね。まずいつまで、という事ですが詳しくは私にも分かりません。なので、本部から帰還命令が出た際ということにしておきましょう。次に、どのようにという事ですが、それについては後々説明します。残り2つの質問ですが、そればかりは敵に聞いてみるしかありません」

「なんだよそれっ! 分からない事だらけじゃないか! 」

いつもの口調より力が入る。まるで凛音を攻めている様な口調になってしまう。

「すいません……私にも分からないことだらけなんです……」

凛音は申し訳なさそうに頭を下げる。そんな彼女を見て、先程の自分の言い方が如何に愚かだったのかを思い知る。

「いや…。強く言い過ぎた。ごめん」

素直に謝る以外の選択肢はないだろう。

「いえ、気にしないで下さい。もし私が惣一朗の立場だったのなら、もっと酷く動揺していたでしょうし……惣一朗はとても強いです」

落ち込む俺を慰めるように話しかけてくれる。この子、良い人すぎないか。


 「いや、ほんとに申し訳なかった。ところで、さっきのどうやって守るって話なんだけど、凛音が1日中守ってくれるの? 」

期待の念を込めて質問する。勿論、多くの下心を込めてだ。

「違います。惣一朗はアホですか」

まるで、甘えるな、と言わんばかりの顔で凛音はその質問を一蹴する。というより、当たり強くないですか。上げた後に落とされた気分だ。

「いくら私が付いているからと言っても、常に貴方を守り続けることは不可能です。最悪の事態が起きる前までに、惣一朗にはやってもらう事がいくつかあります。まず、一つ目は<地導術>いえ……<地導力>を使えるようになって貰います。これは、最低限の自衛は自分で行ってもらうためです。強ければ強い程良し、です。私を守れる位強くなってくださいね」

凛音は何故か少し寂しそうな口調で、最後の一言を付け加える。確かに、自信はないけれども。


 「了解……と言いた所だけど、俺にできるのかなぁ。今まで<バベル>なんて見たことないぞ」

シュークリームを食べながら呟く。

「推測ですが、惣一朗は既に<地導回路>を持っています。原因は不明ですが、それが働いてなかっただけでしょう。でなければ、あんな大怪我、一般人が瞬時に治す事はできません。それに、僅かですが<導力>を感じます」

「でもほんとに、いつもとなんも変わんないよ。身体の中で何かが回ってる感じなんて全然しないもん」

「……それはきっと、私が惣一朗を回復させる際に、私が使った力が、通常と逆向きに回る回路から生成された物だからでしょう。きっかけがあれば回路は動き始めるはずです。そうですね、手を少しこちらへ」

 

 「手? よくわかんないけどどうぞ」

指示に従って黙って手を突き出す。

「今から貴方に通常の向き、時計回りの回転で生成された地導力を与えます。初めは少し違和感があるかもしれませんが、我慢してください。準備はいいですか?」

「よし、よろしく頼む……!! 」

凛音は頷き、手に力を込める。その瞬間に、身体の血管に沿って異物が流れ込んでくる。鼻の奥に綿棒をねじ込まれるような、反射で今すぐ手を振り払いたくなるような違和感だ。首のあたりの皮膚がざわつく。

「……うっっ、ぐっ、あああああ……! 」


 全然少しじゃないやないかい!!と心の中でツッコミを入れた直後、目が壊れるような、強烈な停電に襲われた。そして一筋の光とともに出現した風景は、俺が見た事あるものだった。

「これは……前、夢で見た……!!」

一面の砂漠に照りつける灼熱の太陽。そして、明らかに場違いである風車。今回は風は吹いていない。そんな空間に俺は立っていた。

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