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私は私を愛せない。(仮)  作者: 國田宮瀬
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何限か授業が終わり、午後。体育の授業が来た。まだ5月とはいえ、女子生徒は日焼けを気にして長袖長ズボンの体操着を着ている。私もその1人だ。

こうしてみると、みんな同じジャージに女子生徒は私含めポニーテールが過半数、男子はみんな同じような髪型だし…。日本人が集団主義的だということは知っていたけど、改めて見ると…なんか気持ち悪い。こういうのを見ると、私一人くらい、ここに存在しなくてもいいのではというそういう感覚に陥る。


体育の授業はいつも緊張する。授業内容は問題がないのだけれど、始めのストレッチのペアを組む時に緊張するのだ。私はいつもマナミと組んでいるのだが、マナミも気まぐれな子なのでもしかしたら一緒に組んでもらえなくなる時があるのではと、そんな不安がある。

体操着に着替えてチラッとマナミを見ると笑顔で首を傾けてくれる。今日は無事だろうか。私はこんな性格だから、このクラスではマナミ以外の生徒とそこまで話したことがない。そう、私はクラスで友達と言えるのがマナミしかいないのだ。


「じゃあ、2人1組になってストレッチ開始」


体育担当の先生が笛を吹くのと同時にみんなペア組を始める。私はこの笛の合図が嫌いだ。みんな、1人になるまいと表では見えない必死さが私には分かってしまう。私は動けずにいて、足で砂をいじっていた。


「愛莉、やろ〜」


ふと声をかけてくれたマナミに顔を上げる。私、すごく驚いた顔をしていたと思う。


「何、どうしたの」

「ううん、ありがとうマナミ」


私はこのクラスからマナミが居なくなったらどうすればいいのだろうか。もしそうなったら私に声をかけてくれる人は他にいるのだろうか。


「あ、今日1人休んで奇数なんだね。誰か3人になってもいいから篠山さんいれてあげてくれるー?」


先生が声を上げて言う。篠山さんって大人しめで地味系の…。って、もし私も1人になって先生のところに行けばこうやって大声でクラスメイトの前で名前呼ばれて1人だって言われるのか。

目線だけをキョロキョロさせて見ると、みんな先生の言っていることを聞いてないような、そんな雰囲気がした。マナミもボーッと爪をいじっている。



「あっ。」



ふいに先生の方を見ると目が合ってしまった。


「よし、神城さんたちのところいっておいで」


先生にそう促された篠山さん。あぁ、こちらに向かってくる。


「マナミ、篠山さんうちらのところ来る」

「まぁ、いいんじゃない。1日くらい」


そう言われればそうだ。篠山さんと今日組んだからといってずっと一緒というわけではない。


「ごめんなさい、よろしくね」


控えめな笑顔で私に挨拶をしてくれる。うーん、地味だ。でも、私たちに自分からそう言うのは勇気がいることだよね。あなたからしたら私たちって友達でも何でもない人なんだから。


「よろしくね」


一応そう言ってみると重たい頭の髪が一礼した。マナミも会釈を交わした。

ストレッチが始まると別に友達ではないからと気にするほどでもなかった。ただ控えめに柔軟の補助をしたりというだけだった。


「よし、じゃあ今日はそのペアでちょっとキャッチボールしてみようか!ボール取りに来てー!」


あぁ。今日はとても窮屈だ。と心から思った。たぶん、それは篠山さんもそうだろうなと。マナミは相変わらず何を考えているのかわからなくて、率先してボールを取りに行ってくれた。



「見て、空気パンパンのやつ!」



無邪気な笑顔でボールを投げてくるマナミからボールを受け取り、篠山さんに投げた。

そこからは順調に授業が進み、ふと時計台の方を見た瞬間にチャイムが鳴った。



「あの、今日はありがとう。ボール、私が返しておくね」



篠山さんはどこまでもいい人だった。

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