角の生えた男が娘を迎えに行くそうです①
私はるんるんで学校を後にした。
ふふふ、何があったかというと、今日はずっと借りたかった本が借りれたし、何より数学とかいうクソ教科が自習だったのだ。
今日はいいことがよく起きる日だ。
校庭を出ると、いつも通り人の気配があり──
「おじさん、お待たせしまし───」
「本当に待たされたよ。はやくいこーぜ娘ちゃん」
そこに立っていたのは、紙袋をかぶり、片目だけを袋から覗かせ、何より紙袋から飛び出ている角が印象的な男だった。
「誰だぁぁーーッ!」
「新手の魔族おじさん」
「怖いっ!怖い!魔族?うわ嫌だ!」
「お父さんは魔王なのにそんなに魔族が怖いか」
「わわわ私をどうするつもりですか殺す気ですか!?」
「うん殺すよ」
───私は暴れた。
「ぎゃぁぁあああおじさん助けて!おじさんっ!」
「いやまってまって冗談だ娘ちゃん」
がしっと私の服を掴み、動きを止めた。
「『おじさん』ってシューのこと?」
「強いですよ!真っ黒で白マントで多手のおじさん!」
私はびくびくしながら言った。
「やっぱりシューのことか。あのおじさんは今日は高熱を出しちゃって迎えには来れないよ」
「えっ!?魔族も病気にかかるんですか?」
「え気になるとこそこ?」
うそだろ、と私は衝撃を受けた。
「シューの代わりで、俺が来た」
「嘘だっ!信じない、騙されない、惑わされない!」
「マジかっっっ!」
角さん(仮)は明らかに戸惑っていた。
「俺も魔王様の使用人だ。信じて。シューほど怪しくないだろう」
「怪しい」
「そっか」
ってか思ったんだけど、突き出てるあの角本物なのかな?めっちゃ気になる。
「困ったな。どうやったら悪い人ではないと証明できるんだ?」
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魔界にて。
「ぐへぁぁ関節痛い頭いたいあーつら」
おじさんは寝込んでいた。
すると電話の着信が部屋中に鳴り響く。
「なんだ?角か」
よっこいせ、と立ち上がり、電話を手に取り応答した。
『あ?もしもし?シュー?あっなんで逃げるんだ!』
「?」
『やだぁあああああ』
「?」
『俺は味方なんだ!』
「もしもし?」
『危ないから一緒にいろ!』
「おい…」
『あっシュー、今娘ちゃんの迎えに来たところなんだが、俺を怪しんでいるんだ』
「あぁ矢張りな。娘は臆病ですぐ逃げる」
『助けてっ!おじさん!おじさんっ!おじさん早くきてぇぇ!助けてっ!』
「え」
『だからシューは来ないってば』
娘…すごく呼ばれている気がする。
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角さんは電話を娘ちゃんに突きつけた。
「ほら、おじさんだ。話してみ」
「おじさん?…」
『私はまだおじさんじゃない、お兄さん』
「おじさんっ」
『娘、その、迎えに行けなくてすまない』
「ズル休み」
『ちがうっての』
「私、迎えはおじさんじゃないと、その……嫌…です」
『えっ』
おじさんは頭にはてなマークが無数に浮かんだ。
『本当に申し訳ない。明日は私が行くから』
「はい…」
『あとその角の生えた男は私の同僚だ。安心しろ』
「はい。何かあったら、というか明日こなかったら絶対許しませんからね、明日は絶対に来てください絶対」
あーやっぱり魔王様の娘だ。
角さんはというとやっぱり娘に怯えていた。
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迎えは私じゃないと、嫌だ……?
信頼されているのだろうか、熱のせいで顔が火照る。初めはあんなに怯えていたのに。
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「ねーねー娘ちゃん。なんでシューのこと『おじさん』って呼ぶの?」
おじさんと違ってよく喋る人だこいつは。
「えっと…シューってのは…」
「手が6つあるおじさんのニックネーム」
はぁ。シューっていうんだ。おじさん。
「まぁでも高校生から見るとおじさん扱いされる年齢なのかうわっ、歳は取りたくないねー」
何歳なんだろ…
「そ、そうですね」
「こうして歩いてる時、シューと話したりすんの?」
「え…いや、無口です。たまに気配すら感じません」
「へー…」
おじさんマジで喋らないんだよ。ずっと空見たり風景みたりして私と目を合わせてくれないし。
「まぁ気まずいけど許してやって。魔王様から、娘ちゃんとの会話は控えるように言われてるからね」
…なんでだろう。
「…なぜです?」
「シューは魔王様の部下だ。娘ちゃんとは恋人同士にはなれない、なってはいけない」
へーおじさんは父さんにそう言われているんだ。過保護だなぁまったく。
「魔王様の部下と魔王様の娘のカップル…!まさに、禁断の恋ッッ!命懸けになるよー!」
こんな大人にはなるまい。やかましい。
「会話してるうちに好きになっちゃうかもしれないからねー歳の差も結構あるし絶対ないのに!」
「うん」
「なによりシューだし」
「そういえばあなたも魔王様の部下ですよね?こんなに話してい怒られないんですか?」
「えっ、ばれる訳ないじゃん!会話したかなんて!」
「あー…」
「話している方が楽しいだろがい、シューは頭がおかしい。よく黙っていられるよな。どうせバレないのに」
べらべらと角さんは愚痴を並べるみたいに私と会話をする。そこで、ちょっと冗談を言ってみた。
「私が父さんにちくるかもしれませんよ」
「え?やめて?殺させる」
やっぱり心配性なんだなー、私が魔族を好きになるわけがないのに。怖いし。




