娘は使用人のおじさんを信頼し始めるようです①
登場人物
6手のおじさん『シュ──』
私『───』
多眼のお姉さん『タガさん』
角のお兄さん『ツノ』
暖炉の人『暖炉さん』
魔王様『───』
モブの男の子『松田くん』
私は1度も、お父さんにあったことがありません。
母に聞いてみたところ、離婚はしていない。私がどこで何をしているのか質問したところ───
「パパは魔界で魔王様をしているのよ」
「……」
───信じるわけがなかった。
仮に魔王の娘だとすると、なにか能力があると思い、魔法陣を描いたりしてみたが、痛い子で終わった。
お父さんには会えず、なにもいまま、気づけば高校生になっていた。
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私はいつも通り学校の図書室で本を読んでいた。
時計を見るともう5時。
そろそろかえらなければ、と立ち上がり、図書室を後にし、学校の外へ出る。
校門を出た、その時。
「待て」
声が聞こえた。
「君に話がある。一緒にお茶でもどうだ?私がおごってやろう……」
冷たい風が吹いた。
何だこの人、変なおじさんっ。
間違いない!お茶に誘って誘拐するタイプのおっさんだ!校門で待ち構えるなんてきっと上級者だ!
「どうした?ドリンクバー割引券もあるぞ」
それに白いマント、真っ黒い服。
うわぁ目付きわるいしとても怖い。
真っ黒な髪の毛だし、全身真っ黒で怖すぎる。
「ではいくぞ」
連れていかれる!
おじさんは指ですっと道を指した。
「なにをしている」
私はざっと足を1歩引き、構えた。
「もしや、私を怪しいやつだと思って警戒しているのだな?安心しろ。私は女に触れたことは1度もない」
おじさんはジロっと私を睨んだ。
「だから君にも手をだすことはないぞ」
うわぁこのおじさん童貞なんだ。
私を初めてにするつもりなんだ。←聞いてない
「う゛わ゛わ゛わ゛わ゛わ゛わ゛ァァァァァァ」
逃。
ドドドドという効果音と共に私は風の如く走り始めた。おじさんもまた、私に追いつこうと走って
「おい貴様!なぜ逃げる!止まれ!」
「いや゛ァァァ速い!ねぇ速い!おじさんの癖に!」
「なにを勘違いしている!私は不審者ではないと言っているだろう!止まれっ!」
「どう見ても不審者!」
追いつかれ、がしっ、と腕を掴まれた。
「頼むから落ち着いてくれ」
「はなしてください。お願いします」
「逃げるなよ」
ぱっと手をはなされた瞬間────
「誰かッッ!助けてください知らないおじさんにおっかけまわされています!誰かーーッッ!」
ブォォォンとおとをたてながら私は逃げる。
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しかしおじさんは速かった。
おじさんは私の手を両手でギリギリと握った。
「いいか?」
「はい」
「私は何もしない」
「はい」
「怪しくもない」
「はい」
「また逃げたら私は怒るぞ」
「はい」
私は不審者のおじさんに捕まってしまったことの衝撃で思わずぼろぼろと泣いてしまった。
おじさんは焦った。
「おい!泣くな!」
怖い。
「泣くな!私が泣かせたと思われるだろ!」
いや実際そうなんです。
おじさんはさっとハンカチを差し出した。
「ほら、これで拭け」
あれ?私は両手で抑えられてるんじゃなかったっけ?
「すまない、泣かせるつもりはなかったがただ君が怯えていたから安心させたくてだな」
え?……手が───
「おじさん、変なことききますけど、手……いくつあるんですか?」
3つあるように見えたけど。
「変わった質問だな」
「あぁはい……すみません」
「普通に6つ」
おじさんはジャーンと6つの手を見せてやった。
────は?
6…………?
「ギャワ゛ァ゛ァ゛ア゛ァ!!!!!!!!!」
私はまたしてもすぐおじさんに押さえつけられた。
「大きな声を出すな!とにかく大人しくしろ!」
そして手を離してもらい、ふーっ、とふかーく深呼吸してから告げる。
「すみませんでした…失礼ですがサイボーグかロボットですか?」
「違う。生まれつき普通。君は生まれつき2本なのか?手が2つなんて不便だな」
えっ…私が異常なの?
私は自分の2つの手を見て確認した。
「こちらのせかいでは、手が2本なのが普通らしいな。驚かせてすまない」
私は勇気をだして言った。
「それで…大切な話ってなんですか?」
早く帰ってほしいな。
「あぁそうだったな」
そして私はは真剣な表情になり───
「君を誘拐しようとする連中がいるんだ」
───おじさんを見た。
私は引きながらやっぱり、と思った。
「違う、私じゃない。いい加減にしてくれ」
「じゃあ、誰が何のために私を誘拐するの?」
「魔族だ。君は魔王と人間の間の子であり、この上なく珍しい娘だ。」
んー魔族?魔王?
「そういえばお母さんが父は魔王だって言ってたけど、本当なのかな?」
「分かるだろう?私は人間ではない」
おじさんは自分の6つの手を見せびらかして言った。
「おじさん人間じゃないの!?サイボーグだと思ってた!ってことはもしかして、本当に」
「そうだ、私も魔族だ」
おじさんは「おじさんじゃない、お兄さん」と呟いていたが、無視した。
「それで、魔族のおじさんはなんの用ですか?誘拐が目的ではないみたいですし」
私はおじさんを見やった。
「君を──」
「君を護るために来た」
「!」
「魔族からすれば君なんて簡単に誘拐ができる、恐らく魔族によってはひどいことをされることもあるだろう」
私は息を飲んだ。
「手足を切って連れていくかもしれないし、心臓だけを連れていくかもしれないからな。あとはなんだ、料理して食す者もいるだろうし、その、あれだ。性奴隷にされたりペットにされたり、何が起こるかわからんぞ」
「うわ魔族怖い。性奴隷って」
このおじさんも怖いし。
「まぁ安心しなさい。私が絶対に君を護る」
そしておじさんは嬉しそうに
「私は魔王様の使用人の中で1番信頼されている。1番だぞ、すごいだろ。だから魔王様に娘を護るように命じられた。」
私はじーーーっとおじさんを睨んで
「本当に父さん魔王なんですか?そもそも魔界とか魔族自体半信半疑です。」
え、怖いななんだこの娘。
おじさんは娘に怯えていた。
「目の前に魔族がいるんだぞほら見ろっ!どう見ても人間ではないだろう!」
おじさんは6つの腕を広げた。
娘は腕を触り
「あ、でも触った感じ義手とかロボットじゃない、本物の男のゴツイ手だ」
おじさんは急に触られてぎょっとした。
「おしさんが魔族なのは認めます。疑ってごめんなさい」
「あぁ、信じてもらえればいい……だがな」
おじさんは鬼の形相で
「私はおじさんではないお兄さん。分かったか」
近い近い。
「手の痺れもないし、指先は器用だ30本全部。だから私はおじさんじゃないお兄さん」
「…はい」
おじさんの基準って。
「話が長くなってしまってすまないな。この辺りで別れるとしよう。」
「護るっていってもずっと着いてくるってわけじゃないんですね!(よかった!)」
おじさんは鼻で笑った。
「当たり前だろう。大人は子供と違って忙しいんだ。学生と違ってな」
学生で悪かったな。
私はムッとしながらおじさんと別れた。
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次の日、放課後。
またしても私は図書室で本を読んでいた。
「先に帰るねー」
「はーいまたねー」
私は友達にさよならをした。
校門を通り過ぎようとしたその直前。
おじさんはまた、校門の前でまっているのでは?私はふとそう思った。だとしたらまずい!友達と帰れば良かった!
私はそーっと校門の先を覗いた、が、おじさんはいなかった。ほっとした。
「ん?」
背後に気配を感じた。
振り返ると──────
───紙袋被っとる───
紙袋を被った新しい不審者を見つけた。
「君、魔王様の娘だね?」
話しかけてきたッッ!
「そうだろ?」
こわっ!
私はびくびくしながら恐る恐る言った。
「ひ、人違いだと思いますけど」
「あー、間違いない。魔王様と人間の子供だ」
不審者は急に距離を詰めて──
「!?」
鋸を首に当てた。
「僕さぁ、魔族なんだよね。人間の頭を集めるのが趣味なんだ」
うわぁあぁあああぁぁああ魔族だぁぁあぁあぁぁ
「君は実に珍しい!少しの間だけ、頭を貸してくれないかな?ちゃんと洗って返すから!」
「やだーッッ!」
「大丈夫☆きっと痛くないから!」
「やだそれ絶対痛いって死ぬからそれ!」
私が喚いていたその時
バギッ、となにかが砕ける音がした。
おじさんが、紙袋マン(仮)をその辺に落ちているような棒でぶっ飛ばした。
紙袋マン(仮)は「おふっ」と言って───
──ぐちゃ、と地面に落とされた。
「大丈夫か?」
おじさんが心配してくれた。
「え?」
「大丈夫かと聞いているだろう」
「…はい」
「そうか」
うべっ、かふっ、と血を吐きながらよろよろと紙袋マン(仮)は立ち上がった。
おじさんは私の前に立ち言った。
「む…まだ動けるようだ、下がってなさい」
うわぁこわい。吐血してるよ。赤い。
紙袋マン(仮)はおじさんを見上げた。
「いきなり酷いことするねアナタ」
「あの娘に手を出さないでくれないか。あの娘が死ねば私も殺されてしまうのでね」
「へぇ、それじゃあアナタはガードマンかい?」
血で染まった紙袋をハンカチで拭きながら言った。
「でも魔王の娘の頭は欲しい」
そう言いかけた瞬間
「ならばここで死ねッッ!」
「ぎゃぁぁぁぁあぁあぁああぁ!!」
ずかずかぼこぼことおじさんは石で紙袋マン(仮)を殴りまくった。
「ちょっと!おじさん、やりすぎですよ!」
「騒ぐな、危ないから君は帰りなさい」
「…!(危ないのはおじさんでしょ全身真っ黒だし)」
「なにをしている!行きなさい!」
「お、おじさん」
「心配するな!追いかけてあげるから!」
「(追いかけないでください)その…殺人で捕まっても私、関係ないので、そこらへん…お願いしますね」
「そこ!?」
そんな茶番をしていると紙袋マンは立ち上がった。
「う゛おぉぉおおおおお!僕の本気を見せてやるぅぅ!う゛ぉぉぉぉぉ!!」
「いやうるさい」
「ふぬっ!」
紙袋マンは塀を壊した。
「あー塀が」
そして、塀を娘に向かって投げた。
「えいっ!」
「ふぁっ!?」
娘に当たりそうになった刹那。
「!?」
おじさんは娘を抱きかかえ、ドテッと落ちた。
「あー残念」
紙袋マンは頭をポリポリかきながら言った。
「魔族は突然襲ってくる。だから早く帰れといっただろう!」
「……ごめんなさい」
娘はガタガタしていた。
「あやまるな、むすm──」
途端、ガンッ、という音がした。塀がおじさんの頭に当たったのだ。
「いたた」
そしておじさんは紙袋マンを見て
「後ろからとは卑怯者め…このクズ。まったく、最近のガキはゲロ臭い戦法をふるようになったな、魔族としてのプライドはないのか」
所々口が悪い。
しかし、紙袋マンは今更気づいた。
出血量が多すぎる、と。
「すみません。出直してきます」
「何?」
おじさんはナイフを取り出した。
「ダメだ。貴様の出番はこれからない。殺す。」
「えっ!?」
そして私に訊ねてきた。
「始末した方がいいだろう?なぁ娘」
「えっ、殺すの?えー」
私は申し訳なさそうに
「ちょっと殺すのは可哀想なので……全治100年とか?(私死んでただろうし)」
「やだ怖い!」
「全治100年だそうだ。さよなら」
紙袋マンはおじさんのナイフを持っている右手を掴みながら必死に抵抗した。
「待って!許してくださいお願いします!」
「触るな」
「いやじゃぁぁ〜〜」
「私の腕は2本だけではないぞ」
ざくっ。
「ひっ」
現れた3本目の手で握ったナイフであっけなく紙袋マンはやられてしまった。そう。倒れてしまった。
「さぁ家まで帰るぞ。見ない方がいい」
「はい」
おじさんは私の目を隠しながらゆっくりと歩き始めた。




