第2話 この国には幼稚園はないのかな
私はスクスクと育ち、もうすぐ5歳の誕生日を迎える。
自分で歩けるようになって初めて見た自分の顔は西洋絵画の天使のような美少女だった!やったね!
そしてお母さんだと思っていた人は同い年の男の子のお母さんで私の乳母だった!
英国には「ナニー」って制度があったもんね!お貴族様は自分で育児なんてしないのね!知ってた!
「エリザベス様、もうすぐ旦那様がお帰りになられます。お出迎えのご準備を………何をなさってるんですか?」
「折り紙!お母様がご病気だから「千羽鶴」を作ろうと思って!」
「センバヅル?」
「そう!折り鶴を千個作ってお母様のお身体が早く良くなりますようにってお願いするの!」
「……私には分かりかねますが……。それにしてもお嬢様はとても器用でいらっしゃるのですね!本当に鳥のようです!」
「千羽鶴を知らないの?あ、そうか、日本の文化だもんね。日本人なら幼稚園児でも作れるんだけど」
「ニホン?ニホンジン?ヨウチエン……?」
「!ううん、何でもない!直ぐ行くね!」
「あ、はい。ではお支度を」
「はーい」
危なかった~!!
どうやらここは英国ではなかったらしい。
だって日本を知らないもの。
…その前に前世の知識があるなんて頭がおかしいと思われちゃうよね。
でも…生まれ変わったら少なくとも時間軸的には未来に行くんだと思ったけれど、どうやら時代的には逆行しているみたい。
だって電車も飛行機も自動車もないんだよ!?移動は馬車なんだもの!
少なくとも産業革命より前ってことだよね!?
道理で格好がクラシカルな訳だよ……。
ま、元気に生まれ変わっただけでももうけもんだよね!
お父様のお出迎えのために髪の毛を結わいてもらって玄関に行く。
もうすぐ5歳なんだから着替え位自分で出来るんだけどなぁ。…多分。
前世だと幼稚園児だもんね。あ、お母さんに手伝ってもらってたかも。ボタンを自分で止められなかったんだよね。
5歳になるとお茶会にお呼ばれしたりもするらしい。
早くお友達が出来たら良いな!
同年代は乳母だったノラの息子のダン位だし、最近は一緒に鬼ごっことか木登りとかして遊んでると叱られるんだよなぁ。
馬車が止まった音が聞こえる。
お父様が戻られたんだ!
「お帰りなさいませ、旦那様」
「ああ、今戻った。変わり無かったか?」
「はい」
「お父様!お帰りなさい!」
「ただいま、エリー」
お父様は笑顔で軽々と抱き上げてくれる。
「お父様が居ない間、エリーはちゃんと良い子にしてたかな?」
「うん!」
今世のお父様はハリウッドスターのようなイケメン!トラップ大佐みたい!ギターで弾き語りとかしてくれないかな!
「お帰りなさいませ、旦那様」
「ビクトリア、起きてて大丈夫なのか?」
「ええ、今日は気分が良いのよ」
お母様も王様に見初められて王妃になった映画女優さんみたいにとっても綺麗な人。早世しちゃうところは似ないでね……。
その後久しぶりに家族揃って夕食を頂きました。
それからノアやダン、他の侍女さん達にも手伝ってもらって折り鶴を作って、みんな5歳児の私よりもヘタクソだけれど300個位で紐を通してお母様にプレゼントした。