第九十九話
「……新しいダンジョンがほしいって?」
「ああ。そうだ」
生徒会室になんだか最近はいるようになったと思い始める秀星。
そこでは宗一郎が待っていて、相談を受けた。
イリーガル・ドラゴンがきたことで、実力的に言えばかなり高くなった。
しかも、沖野宮高校の生徒のうち、魔戦士のほぼ全員である。
こうなると何が悪いのか。
当然だが、今までは小遣い稼ぎレベルの実力しかもっていなかったし、装備に関してもそれに見合ったものだった。
しかし、これからの沖野宮高校は違う。
イリーガル・ドラゴンからもらった生産技術と戦闘技術。
それらは、あまりにも大きかったのだ。
さらに言えば、目標という意味でも彼らはよく示していった。
その影響で、沖野宮高校の中でも、もっと難易度の高く、リターンの大きいダンジョンに行きたい。と言い出したのである。
気持ちはわかるし、あのダンジョンの難易度が低すぎることも認めるが……。
「君としてはどう思う?」
「ダンジョンっていうのは基本的に放っておかれることがないからな……」
ダンジョンがあまり残っていない。というのが正直なところだ。
以前、船に乗って大量に魔石を集めに行ったが、あのダンジョンも、新しいダンジョンの出現と同時に攻略することになったが、あれは偶然にしてはできすぎたものであり、本来は近い場所にダンジョンができることはほとんどない。
「極論、君に頼んでダンジョンを作ってもらうことも私は考えている」
「そういう段階なのか?」
「それほど生徒たちの声が大きい。それに、周辺の市にいろいろと金を使える場所があることも含めて、今以上に金が要るといっている生徒もいる」
「……」
かなり欲張っているようだが、新しいダンジョンの発見というのは利権が発生するのだ。
そもそも、八代家がダンジョンを管理しているが、名家とはいえ、その家だけでダンジョンを管理しているという状況そのものが希少。
もっとかかわる人数が大きくなるはずである。
まあ、あのダンジョンの場合は大きくなれないというのが正直なところだが。
「だが、新しいダンジョンを発見するって言うことがどういうことなのか、分かっていないように俺は思うんだが……」
「それはそうだろう。まだそういったことが分かる年齢ではないからな」
どんなものであろうと、『発見する』というのは、それまでの何かが途絶えるということだ。
無論、すぐになくなるわけではない。
しかし、無影響ではいられない何かが必ず存在する。
「一定以上の規模があるダンジョンの管理って面倒なんだがな……」
「ちなみに、これは周辺の市の学校とも話しあった結果だが、九重市だけ何もないからな。今以上の規模のダンジョンがあってもいいのではないか。という意見が出ているのは確かだ」
「賛成派が多い。と言うことは理解した。だが、ダンジョンを作ればいいのか。それとも今あるダンジョンを強化すればいいのか、どうするつもりだ?」
「作る方だな。というより作ることなどできるのか?」
「ダンジョンは生き物だからな。土台さえこっちでしっかりやれば後は自動でどうにかなる」
「もっとも半永久的で効率の良いシステムが生物と言っているようなものだが……まあとにかく、新しいものを作ってほしい」
「わかった。細かい調整が必要ならまた連絡してくれ」
「頼むぞ」
秀星は生徒会室を出た。
「……ダンジョンの増加……か」
異世界で発生した。とある『事故』を思いだす。
「……まあ、俺が言ったからと言って全員が真面目に聞くわけでもないか」
予防策は作っておこう。
そう考える秀星だった。