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第九十六話

 目に見えて過激になった。

 晶、昇平、ローガンの三人が思ったのはそういうものだった。


 『敵を倒す』という点において、実際に命まで壊すのか、足などを狙うことで機動力を削ぐのか、気絶させる程度の攻撃を行うのか、いろいろあるのだが、このアジトの中では圧倒的な実力を持つ秀星にとっては、どれを選ぶのも『自由』という状況だ。

 自分と同じ領域にいる人間が敵に回っているのなら考えるが、少なくとも今回はそうではない。


 最初は機動力を奪うだけだった。

 気絶させることはない。

 そんな手段で、秀星という『恐怖』から逃したりはしない。


 だが、あの部屋に入ったあと。

 そこからは、問答無用で命を奪うようになった。

 しかも、命乞いをわざわざ聞いてから奪うという、傍から見ていても『えぇ……』と言いたくなる状況である。


「さて、慌ててるみたいだな」

「ん?どういうことなんだ?秀星」

「おそらく、避難が完了したということだろう。僕たちがこのアジトを襲撃していることは向こうも当然わかっているが、誘拐した被害者たちがいなくなると、人質にすることすらできないからな」

「でもよ。アジトだぜ?それも本拠地だ。向こうだって脱出できる秘密の通路みたいなものがあるはずだろ。こっちはゆっくり進んでいるのに、なんで慌てるんだ?」


 昇平の言い分に、秀星、晶、ローガンの三人は驚いたような表情になった。


「……なんだその顔」


 バカにされていることを察したのか、昇平が訝しげな視線を秀星たちに向ける昇平。

 実際、昇平がそういったことを考える脳みそを持っていたことが不思議だったのだ。

 昇平はアジトへの襲撃経験などほとんどない。

 さらに言えば、アジトの奥にはボスがいて、そいつと戦うのが『普通』だと思っている。

 だが、現実的に考えればそうならないことだって多いだろう。

 秀星たちは、そこまで考えることができた昇平が信じられなかったのだ。


「いや、案外考えてるんだなって思ったからな」


 確かに、昇平の言うとおりだ。

 何かあったときのための脱出経路は重要だし、たとえバレないだろうと思えるほど巧妙に隠されたアジトであっても、秘密の通路を作らない理由はない。


「まあ、そっちならすでにセフィアにまかせてぶっ壊してもらっているよ」

「ならなんで慌ててるんだ?」

「人質もいなければ脱出経路もない。機能性重視で作ったからほぼ一方通行みたいなものだ。いろんなところにある隠しカメラはあえて壊してないから、向こうはこっちがゆっくり向かっていることがわかるんだよ」


 厳密には、本当に一方通行というものではないのだが、そのあたりは秀星である。

 実際のところ、ワールドレコード・スタッフのおかげで通路など最初からわかってる。

 ボスがいる場所も判明している。

 転移手段を使えば一瞬だ。

 だが、その手段を使わない理由は一つ。


 秀星はそういうやり方が好きなのである。

 セフィア曰く、『攻城戦で攻めるときの秀星様は罪人よりヒドイですね』とのこと。

 秀星にとっては褒め言葉なのだから手遅れなものだ。


「さて、エレベーターがあるな。一番下まで行ってみるか」

「敵のアジトでエレベーターに乗るって……」


 呆れる晶だが、もうここまで来るとどうしようもないことはわかりきっている。

 諦めも肝心なのだ。

 そして、メンバーカードを入力しないと動かないエレベーターをわざわざマシニクルでハッキングして下に向かう。


「なんだろうなぁ。この強引な感じ」


 エレベーターで降りているとき、晶がため息を吐いた。


「まあ、秀星の場合は小細工がいらないからな……」

「その時その時ですべて解決できるっていうのは悪いことじゃねえけど、無双ゲームだってもうちょっと危機感やら臨場感は出てくるはずなんだけどな……」


 常にスター状態といっても過言ではない秀星。

 確かに、無双ゲームといっても過言ではない。

 落ちない限り死なないからな。秀星の場合は落ちても問題ないが。


「さて、ついたな」


 秀星は開いていくドアからでて、その奥にまっすぐ向かう。


「ん?普通、ボスの部屋って特別なカードがないと入れないとかそんな感じになってないか?」

「だからそこまでハッキングしたんだよ」


 常識も通用しないやつである。


「さて、ボスの顔を見に行こうか。用心棒を雇っているみたいだね。あ、俺よりは弱いけど、晶たちよりは強いからな?」

「それ、神器でも持ってんじゃねえのか?」

「さあ?まあ行ってみればわかるよ」


 そう言って秀星は歩き出す。

 獰猛とも、嗜虐とも取れる表情で。

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