第九十三話
トライデント・アライアンス。
アメリカの犯罪組織であり、それはそれなりの規模を持つところだ。
別名『ラボ』と呼ばれるほど実験に関しては多数行われており、人体実験なども他と比べて多い。
世界中にモルモットを集めるための支部が存在する。
九重市でもいろいろと誘拐事件を巻き起こしていたが、それらは彼らが普段から行う実験のためである。
性質が悪い。というと、彼らは身代金のためではなく、人質確保でもなく、実験をするために集めているということだろう。
表の法律の影響が薄く、それぞれのモラルや倫理観が大きく左右される魔法社会。
一応、『魔法社会としての常識』を広めるための組織があるにはあるが、それでも、影響力には限度がある。
そう言ったことを気にしない連中もいるし、トライデント・アライアンスはその一つだ。
犯罪組織に襲撃した時、とらわれていたもの達が無事であるかどうかは分からない。
男たちは過酷な労働環境に強制的に放り込まれている場合もあるし、女性に関しては女の尊厳を奪われている可能性が高い。
だがそれでも、命を助けることはできるのだ。
まず生きていないと選択すらできない。だからこそ、その先は辛くなろうとも助ける。
だが、トライデント・アライアンスの研究所に送りこまれたもの達の九割は、そもそも『人の形をしていない』場合もある。
ローガンが悪魔化しており、秀星は普通に戻したが、全ての人間が同じように処置を施すことができるわけではない。
助けたとしても、殺されることを望むか、自害するものが多いのだ。
助かったのはいい。
だが、その先に待っている人生の過酷さに、被害者は耐えられない。
地獄から出てきたとき、その先が天国とは限らないのだ。
トライデント・アライアンスの研究所は、山の中にある。
それも、登山家がそれなりに挑戦しようと思えるほどの山だ。
本来ならばあり得ないだろう。
いろいろと総合的に判断して言葉を使うなら、『面倒』というものだ。
日本で言うと、メイガスラボの本部はただの事務所のような場所だったことと比べると、その差は歴然。
普通に考えて、山の中に本部を作るなど聞いたことが無いし、そもそも考えたとしても実際にそれをするかどうか。と言う話だ。
オマケに活火山である。
これは彼らが、山すらも『実験』したからに他ならない。
彼らは、普通の人間が行え無いような実験を多数行っている。
そのため、保有する技術も、とらわれる常識も、本来のものとはまったく別ものになる。
とはいえ彼らも、人の心などわかるはずもないのだが、それでも、考える機会を設けるべきだった。
絶対に敵にまわしてはならない男の逆鱗に触れた。といえば、分かりやすいだろう。
それだけの話である。