第九百二十一話
セフィアの端末たちに細かい部分を任せて、中央にある宮殿に向かってまっすぐ進む秀星。
このダンジョンに来た理由は、物資の強奪と人間の救出が目的である。
その細かい部分に関してはセフィアに任せておいて問題はない。
……いや、厳密には今秀星がやっていることをセフィアに任せても問題はないため、別に秀星本人が来る必要すらない。秀星が欲しい情報をセフィアが逃すことはほぼあり得ないということもある。
まあ、そうなると秀星が面白くないので来ちゃったわけだが、次々と連携しながら襲ってくるゴブリンたちは、秀星を止めることができない。
魔法を使うものは一体も存在していない。
魔法を覚えられないというよりは、魔法の力が備わった装備の力で殲滅することが最も効率がいいという判断なのだろう。
最も合理的で効率的だが、ただ、秀星には通用しない。
「さてと、これが宮殿か」
宮殿の近くまで来てしまったので見上げる秀星。
秀星は、『城』は防衛的、『宮殿』は文化的な作りをしていると聞いたことがある。
宮殿を立てているという以上、防衛よりも文化的に暮らすことようにできているのだろう。
とはいえ、ダンジョンの中心に存在することを考えれば、防衛的なものは多数存在するはずだ。
門番にもゴブリンがいるのだが……普通のゴブリンよりも背が高く、そして綺麗な赤色の金属でできた装備を身にまとっている。
「とまれ!貴様のような殺戮者は、この俺が剣の錆にしてやる!」
門番のゴブリンが剣と盾を構えなおして、秀星に向かって突撃してくる。
隙がないとは言わない。しかし、かなり気を付けているのがわかる。
秀星は振り下ろしてきた剣をプレシャスで受け止める。
プレシャスの刃と接触したゴブリンの剣が火花を散らした。
そのまま押し込んで鍔迫り合いを仕掛けてくる。
「思ったより頑丈な金属だな。見たことがないんだが?」
「フン!この装備は、マスターが研究の末に完成したオリジナルの金属『レッドメタル』だ。簡単には斬れんぞ!」
「……」
自慢しているゴブリンの言葉を聞いて『少なくとも中二病的なネーミングセンスは備わっていないな』と思いながらも、そのレッドメタルの剣を見る。
(プレシャスとまともに斬り合って無事……か)
驚いているわけではない。
プレシャスには様々な機能が備わっているが、ほぼそれらを使わずにここまで戦っている。
ただ、それでも剣の神器だ。切れ味はすさまじく、普通に斬り合ってしまうと振り下ろした剣の方が切断されるだろう。
しかし……まあ、意味のない議論だ。
「まっ、及第点にもならんな」
「何を……」
鍔迫り合いを仕掛けてくるゴブリンに対して、逆に力で押し返すと、そのままプレシャスを真横に一閃。
剣も盾も……いや、鎧すらも一刀で切断し、ゴブリンは魔石に変わっていく。
「ば、馬鹿な……」
宮殿の門番をする他のゴブリンが驚愕している。
どうやらそれほど自慢の金属だったようだ。
(まあ、レッドメタルがどのような性能だろうと、どうでもいいことだ。プレシャスの力の本質は『切断』ではなく『破壊』だ。ちょっと力を使えば、『破壊可能なものなら何でも破壊する』)
多少強い程度では切断可能なのである。
「く、クソがああああ!」
残る門番が剣で斬りかかってくる。
それすらも、秀星は一刀のもとで切り捨てる。
そのまま、秀星は門の前に立った。
頑丈な柵のようなもので防いでおり、門には鍵が付いている。
かなり頑丈で……周りから何かを差し込めそうな穴がない。
「グフッ……ざ、残念だったな。その柵はこれまでの物質とは圧倒的に頑丈さが異なる。斬った瞬間に『高速で再生』するものだ。開けるためにはその鍵を開けるしかない。だが、特殊な魔力を入力しなければ、その魔法具はありとあらゆる承認を受け付けないぞ!」
ガチャッ。
「……う、うそだ……どうして、あけられ……」
ゴブリンが塵になって、魔石だけが残った。
「アイテムなら、使用中、使用後のデメリットはともかく、使用前のセキュリティは通用しないさ。残念」
そのまま門をあけ放つ秀星。
門の内側にも大量のゴブリンが待機しており、秀星に向かって剣を向ける。
「まだまだたくさんいるってことか。そろそろ怠くなってきたな。ちゃんと強いやつは連れてるのかね?」
椿や風香よりは強いと判断できる個体は今までに何体かいた。
しかし、それでもアルエストにはかなわず、セフィアの末端の端末にすら及ばないだろう。
「舐めるなよ人間!」
ゴブリンたちが連携しながら突撃してくる。
だが、秀星はもちろん慌てることはない。
プレシャスを真横に一閃して、そのまま全員を切り捨てて魔石に変えた。
「……無双ゲームも最終的には作業ゲーだからなぁ。そろそろ敵さんにも強キャラが欲しいよ」
どうせ遠慮などするつもりは毛頭ないのだ。
難易度は高い方がいいのだが……不謹慎かね?




