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第九十二話

 秀星は空港で、飛んでいく飛行機を見ていた。


 いつまでもルーカスたちが日本にいられるわけではない。


 そもそも、マスターランクチームであるイリーガル・ドラゴンと合同訓練をしたいと考えるものは多いのだ。

 いつまでも沖野宮高校で縛りつけるわけにはいかない。

 イリーガル・ドラゴンとしても、合同訓練中は収入はゼロと言っても過言ではないし、そもそも続くものではないということは分かっていたことだ。

 もちろん、『剣の精鋭』と『イリーガル・ドラゴン』で特訓もした。

 とはいっても、それはそれなりに強くなって行くメンバーを上からたたいて伸びた鼻を折るのが秀星の役割ではあったが。

 唯一。特訓だとかそう言ったものが必要ない実力を備えているのだ。ある意味で当然である。


 ちなみに、今回の特訓でだれが一番成長したのか。


 実は、それも秀星である。

 秀星が持つアルテマセンスは、確かに『努力せずともできる才能』を持つが、それと同時に『努力することに長けた才能』を持つ。

 はっきり言って現時点で金ぴかゲーマーを超えたような強さを持っているのだが、それでもまだまだ成長するのだ。

 周りからすれば『一体どうすりゃ勝てるんだコイツ』と言いたいくらいだが、まあもとより、秀星はそのあたりの意見を聞くような性格ではない。


「なんていうか、あっという間だったね」

「特に大きなこともなく終わってよかったぜ」


 雫と来夏が頷く。

 なんだかんだ言って、ルーカスを抱きしめまくっていた二人だ。

 人として生きるうえでのデメリットを多く抱え込んでいて、身長が低く、どこか純粋できれいな瞳をするルーカス。

 実際に子供を持つ来夏としても、普段はセクハラしかしないが二周目のため精神年齢が若干高い雫も、どこか放っておけないのだ。


 不思議なものだが。


「ただ、ローガンに関してはもう何とも言えないものだったがな」

「アメリカのマスターランクチーム。そのトップに立つ実力はなかったように思いますしね」


 羽計とアレシアはローガンの話になっているようだ。

 あれはあれでインパクトが強かったので当然といえば当然。


「どさくさに紛れてお父さんも見に来てたね……」

「そりゃそうよ。マスターランクチームが来ることなんてほとんどないんだし。それも外国のチームよ。野次馬対策が出来てなかったらそもそも特訓どころじゃないって」

「でも、風香さんの成長を噛みしめているような、そんな目をしていたです」

「ふにゃあ~」


 風香が自分の父親に対して呆れたような表情をして、優奈が当然とばかりに言って、美咲がおそらく知られたくなかったであろう風香の父親の事情を暴露した。ポチは知らんが多分いつも通りだ。

 というか、風香のお父さんも来てたのか。そう言えば見たことが無いのだが……まあいいか。


「まあでも、お互いに収入がなかったけど、有意義なものだったかな。アメリカの魔装具を見ることが出来たし」

「銃型魔装具が多いですけど、剣や魔法を補助することを目的とした部分も多いですからね」


 千春とエイミーは魔装具の話だろう。

 マシニクルを持っている秀星はそこまで気にしていなかった部分はあるが、確かに、日本で銃型魔装具と聞くとテロリストの印象が強い。

 どこからどう見ても偏見なのだが、実際にそうだったのだから仕方がない。


「よしっ!オレたちも明日から頑張ろうぜ」


 飛んでいく飛行機を見送って、そして見えなくなると、来夏のその言葉で解散となった。


 ★


「で、ローガン。お前何やってんの?」

「懸垂だ。見れば分かるだろう」


 悪性消去手術。

 言ってしまえば、『悪人の役割』となる上で必要なものが存在する場合、それらを取り除くことだ。

 ただし、『悪い人間』から『良い人間』になるというわけではない。

 必要悪と言う言葉もある。

 この手術をすると、簡単に言ってしまえば人を引っ張れる感じになるのだ。

 人としての汚い部分を考えず、勝利し続け、世界に君臨してきたラスボスを一度倒すだけでハッピーエンドになるような『勇者』なんぞ世界にいらん。

 必要なのは、屍の山の上で自らを着飾ることが出来る『英雄』である。


「……なぜ筋トレに懸垂を選ぶんだ?」

「晶、決まってるだろ。懸垂はすごいからな!」

「昇平、何もわかってないお前が何かを言っても説得力ないぞ」


 小野晶(おのあきら)黛昇平(まゆずみしょうへい)

 本来の歴史においてFTRに所属する彼らだが、改変する際にいろいろな意味で『キーワード』に引っかかるので、秀星が抱えることにしたのだ。

 そういった感じで、本来、評議会のプラチナエリアに所属できる実力を持つ二人を引き抜いて、秀星の駒として育てている。

 ちなみに、既に来夏やルーカスと比べても、普通に、とはいかないがいい勝負をするだろう。


(アトム?あれは格が違う。核だけに……ごめんななんか)


「それにしても、『秀星兵(しゅうせいへい)』が増えるとは思っていなかったぜ」


 昇平が呟く。

 秀星兵。

 簡単に言えば、秀星が直々に、独自の訓練を積ませている者たちだ。

 今までは昇平と晶だけだったのだが、ローガンが追加されました。

 ちなみに、この壊滅的なネーミングセンスの悪さは昇平が発揮したものだ。

 いつの間にか決められていて、もう何か変えるのが面倒な感じになっていたのである。


「ふう、今日のノルマは終わった」


 ちなみに今いるのは、セフィアが用意したフィットネスルームだ。

 秀星の自宅に存在し、厳密にはコリドー・コネクターの亜種のようなものを使っている。

 セフィアがいろいろと考えて作ったものであり、フィットネスルーム以外にもいろいろある。

 遊戯室だったりPCルームだったり図書館だったり(ラノベや漫画もある)、ミニシアターもあるし室内プールもある。

 それ以外にも、各種スポーツができる空間が存在するのだ。

 野球もできる。あと、セフィアは単一個体ではなくシステムなので、別の形をした端末を連れて来てもらえば足りない人数を補ってチーム戦のスポーツもできる……のだが、自分以外の全員が自分に対して接待プレイをするというのはなかなか精神力を削って来るものだった。あれはもうやらん。


「まあとにかく、ローガンが来たし、『トライデント・アライアンス』が使っている専用端末も手に入れたからな」


 既にその端末はハッキング済みである。

 セフィアに渡したら二秒だった。恐ろしい。


「ちょっとこっちからアメリカに出向いてみるのも面白いかもしれないな」

「え、こんなムサい四人で現地に行くのか?」

「誰がムサい男だ。お前が特別暑苦しいだけだろう」

「フフフ。新生ローガンの実力を見せつけてやろうではないか」


 ……全然、話が進まない。

 まあ、いつものことだがな。うん。

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