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第九百十四話

 アルエストが指揮権を持っているということは、言い換えればアルエストが『行くぞ』と決めたら行くことができるということである。


「……アルエスト。なんでこのメンツなんだ?」


 簡易拠点を作った。

 大きさは完全に城なので『簡易』という言葉に対して疑問を抱かれる可能性があるが、秀星が簡易的に作ったので簡易拠点である。


 その周りには、秀星、風香、椿、アルエスト。

 そして、アルエストの秘書を務めるサレイアの五人だ。


「ウェストリア家は私以外の戦闘力はあまり高くないからだ」

「……まあ、戦闘力が求められるのは分かったが……」


 あれからの調査で分かったことが一つある。

 それは、まず前提としては『ノアスフィアのダンジョンは放置すると中からモンスターが出てくる』ということ、これを踏まえたうえで、『すでに地上には大量にモンスターがいる可能性がある』ということだ。

 そのため、戦闘力が求められるのである。


「とりあえず、まずはこのレーダーキャッスルを転送する必要があるか」

「この城を目印にしてあの宇宙船を転送させるんですよね」

「ええ。しっかりした『座標』があれば距離は関係ありませんからね」


 椿の確認に対してサレイアが応える。

 ……距離は関係ないといっても、六百万光年でも感知できるというのは一体どういうことなのだろう。魔法って不思議だね。


「そろそろ転移するか」

「そうだね。あまりグズグズしてる時間はなさそうだし」


 結構短期的に成果を求める連中が多いようで、とりあえず何かを持ってくる必要がある。

 ただ、短期的な成果を求められると、腰を据えて何かに取り組むことができないので研究者としては悪い手なのだが……まあ、そこは秀星たちが考えることではない。

 とはいえ、秀星と八大貴族ではスケールが違いすぎて短期もクソもないのだが。


「転移装置を起動するぞ」


 アルエストが転移室に入って、部屋の中央にある巨大な水晶にコードを入力する。

 そして、膨大な魔力を込める。


 大規模な転移魔法ではあるが、単なる技術であるゆえに、幻想的であっても見慣れたもの。

 レーダーキャッスルは、一瞬で地球から姿を消した。


 ★


「おおっ!ここがノアスフィアですね!……あれ、なんだか外が暗くないですか?」


 到着!

 ……したのは良いのだが、外は真っ暗だった。


「ちょっと待て」


 秀星はマシニクルを引き抜いて、そのまま空中に向けて発砲。

 マシニクルの銃身が光って、秀星のスマホに短い着信音が流れた。


「……この場所の時間だが、午前十一時ってところだな」

「地球でもそのくらいの時間に転移したよね。でも、なんでこんなに暗いんだろう」


 調べたのは良いが、さらに疑問を呼ぶ結果に。


「モンスターの支配率が高くなると、その分、この世界の空は暗くなる」

「……なるほどねぇ」


 アルエストの説明に頷くしかない秀星。


 どうやら、既に面倒なことになっているようだ。


 そして、空を見上げていた椿が下を見下ろす、


「う、うわっ、も、モンスターの数がすごいですよ!」


 全員が下を見る。

 そこには、ゴブリンが何百体と行列を作って移動していた。


「なんだあれは……」

「ダンジョンではゴブリンを安く作ることができるそうだ。ゴブリンたちの後ろを見ろ。大量の荷車を引っ張っているだろう。彼らの簡易拠点を作る工作部隊か、大規模な戦闘のための補給部隊だ」

「いずれにせよ『本命』っぽくないなぁ……ん?」


 秀星がとある場所を見る。

 それは一つの荷車であり、中には布に巻かれた長いものが並んでいる。

 秀星は、そこに『熱源』を感じた。


「……秀星君。どうしたの?」

「こいつらが運んでる物資。どうやら人間が混じってるな」

「え!?」

「男性を労働力とするか。女性なら犯されるか。そのどちらかだろう」

「む!それなら助けますよ!」


 そういって、椿が一人で飛び出していった。

 風魔法を自分にまとわせて、空中に浮かぶレーダーキャッスルからゴブリン軍団に向かってツッコんでいく。


「あ、椿ちゃん!」


 風香は飛び出した椿を追う。


「……」

「……どうした?秀星」

「いや、どの荷車に積み込まれているのか言ってないのに、よくもまあ突撃したもんだと思ってな」

「二手先三手先を見ても一手先を考えないのは父親譲りか」

「祖父譲りってことにしてくれ。しかし……」


 ふよふよと浮遊しているレーダーキャッスル。

 その下にはちゃんと地面はあるのだが、嫌なほど凸凹していて着地はできない。


「……このままじゃおろせないな。セフィア。整地は任せる」

「畏まりました」

「んじゃ。俺も行って来るよ。アルエストは何かあればセフィアに言ってくれ。拠点の位置は重要だからな」

「ああ。そうさせてもらおう」


 というわけで、秀星も城から飛び降りた。


「ふああ……こんなめんどくさいことになってるとは……こりゃ図書館に入るのはすぐってわけにはいかないな」


 そういってマシニクルのトリガーを引く。

 弾丸がゴブリン行列のど真ん中に着弾して、そのまま爆発を引き起こした。

 それだけで、少なくとも五十を超えるゴブリンが吹き飛んでいく。


 吹き飛ばされたゴブリンたちは体を塵に変えていき、後には魔石だけが残った。


「倒したら魔石だけになるのはダンジョン産ゆえか。まあ、何であっても遠慮するつもりは最初からないけど」


 とりあえず殲滅を開始した秀星。

 といってもゴブリンなので、そのうち終わるだろう。

 椿と風香が盛大に突撃しているので、それだけ注意すれば問題ない。


(一体、どれくらいの人間が生き残ってるんだ?)


 ここまでボロボロにされているとは思っていなかった。

 先は長い。

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