表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

911/1408

第九百十一話

 座標の正確な特定があってこその転送魔法である。


 あーでもないこーでもないと秀星とアルエストは議論していた。


「zzz……」


 そしてその横で椿は夢の中。

 風香の太ももを枕にしてすやすやと眠っている姿はとても可愛らしく、風香が静かに頭を撫でていて、セフィコットがここぞとばかりにビデオカメラを向けていた。


「……むにゅ?セフィアさんのにおいがしますね」

「未来で私によく抱き着いているということでしょうか。というより、純粋に鼻がいいですね」


 話している立方体の箱の中にセフィアが現れた。

 即座に起床する椿。確かに鼻がいい。


「……どうやって入ってきた?」


 アルエストが警戒している。

 立方体のこの乗り物だが、八大貴族の次期当主の所有物ということでかなりのセキュリティが存在するようだ。

 そんな空間にいきなり現れたことで、その原因を探ろうとしているのだろう。


「難しい話ではありません。優れた泥棒というものは錠前をこじ開けるのではなく、合いかぎを使って開けるということを覚えておくことですよ」


 そういって一枚のカードを取り出すセフィア。

 銀色でキャッシュカードくらいの大きさ(まあ『カード』や『〇〇証』のような物体は大体そのような大きさだが)のもので、特に何も記載されていない無地の物体である。


「一体いつ……」

「何度も開け閉めしているのです。遠くから見ていればすぐにわかりましたよ」

「……」


 苦虫を嚙み潰したような表情になるアルエスト。


「秀星。彼女は?」

「俺のメイドだ」

「……そうか」


 セフィアについてどうこういうわけではなく、単純に秀星との付き合い方がわかってきた様子のアルエスト。

 きっと彼は苦労人だ!


「で、どうしたんだ?セフィア」

「いえ、一つ言いたいこと……というより、突っ込みどころがありまして」

「突っ込みどころ?」

「はい。どうやら座標を探るために議論を交わしている様子」

「まあ、そうだな」

「秀星様が持つ『世界地図』の神器、『ワールドレコード・スタッフ』を使って範囲を宇宙に広げれば特定できるのでは?」

「……!」


 秀星は『なんてこった!』という表情になった。


「あはははははははは!」


 椿、爆笑。

 意外と他人の失敗で笑う子である。


「秀星。本当なのか?」

「……」

「……」

「……テヘペロ♪っうおああああ!」


 結構ヤバそうな威力の斬撃が振るわれた。

 大げさに体をのけぞらせて回避する秀星。

 ちなみに、よけなくても頭髪に大きなダメージが入るだけで命に別状はない。そういう感じになるように振っている。


「お前のその反応は単純にキモウザイな」

「だからって剣を振るなよ。危ないじゃないか」

「安心しろ。当たったとしても頭髪に大きなダメージが入るだけだ」

「安心はできんな」


 というわけで、秀星は右手を前に出すと、そこに小さな杖が出現した。

 先端に球体が付いている。

 それを振ると空中に投影された。


「ええと……スタッフ。どのあたりにあるのか教えてくれ」


 秀星の指示に杖部分がピカピカ光ると、投影する情報を変えていく。


 ……そして、銀河系がいくつか映し出された。


「……まあ、六百万光年も離れてるんだし、そうなるよね」

「地球とノアスフィアはどのあたりにあるんですか?」


 椿の質問にもちゃんと答えるスタッフ君。

 地球があるであろう場所に『←地球はこのあたり』と表示されて、ノアスフィアがある場所には『←ノアスフィアはこのあたり』と表示された。


 結論、そうですか。


「……人間にわかりやすいかどうかはともかく、ノアスフィアの場所がわかっているということは理解した」

「ポジティブですね」

「……はぁ」


 椿に悪気はないものの、若干気分が沈んでいるような気がしなくもないアルエスト。


「とりあえず、座標がわかるということは理解した。あとはこれを軸に書類を作成するか」

「上が信じるのかね?」

「信じないのであれば別の方法を自分で見つけるしかない。まあ、我々にも足の引っ張り合いはあるわけだがな」


 書類に信憑性があると判断した場合、ウェストリア家の地位を落としたいもの達からすればあの手この手で突っぱねるだろう。信憑性がないと判断した場合も突っぱねるが、あえてウェストリア家の力だけでやらせてみて、失敗したら『ほらな』と追及し、成功した場合は手のひらを返して乗ればいい。

 その時に自分の功績を完璧に確保しようとすると、ほとんどの場合はろくなことにならない。


「……足の引っ張り合いねぇ。まあでも、全部が全部そうってわけじゃないんだろ?」

「ああ」


 というより、足の引っ張り合いばかりが権力者として並んでいると、古代貴族の宇宙船が浮上してくることすらなかっただろう。

 二手先三手先を見据えて、それでもきちんと堅実な一手先を考えなければ、浮上してくる決断はできないだろう。

 足の引っ張り合いはあるといったが、『何処にでもその手の馬鹿は一定数いる』というだけの話である。


「とりあえず、書類を作成するか。秀星。これ以上馬鹿なことをするなよ」

「いやー……正直、俺ってできることがものすごく多いんだよね。だから多分また馬鹿なことをすると思うよ」

「……宝の持ち腐れだな」

「人間なんてそんなもんですよ!」


 椿がそういってしまったことで、アルエストはいろいろあきらめてしまったようだ。

 頑張れアルエスト。君にだって光あふれる未来が待っているさ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ