第九百四話
古代貴族と名乗る者が乗り込んでいた宇宙船の存在は、既に各国の上層部は知っている。
ユニハーズが活動していた島はそれだけ多くの大陸との連携を取っていたということであり、その島を破壊するように下から湧き出てきたというのはなかなか衝撃的な話だ。
古代貴族が持つ主義と思想、そして見え隠れする戦闘力をアトムが資料にまとめて、各国の外務省と話し合っているが、当然のことながら、理性的な場ではあったが、支配という言葉に対する忌避感や『対処主義』という考えたこともないそれに対する理解が及ばないということもあって、『未知数』という判定は出た。
理想的な結果になれば共存は可能。という程度にとどまる。
というより、一時間に満たない接触しかしていないのに敵の全てがわかるなどということはあり得ないし、そのような状態では勝手に決めつけたところで何も意味はない。
あまり時間を無駄にはできないが、食い違うのは避けたいと考えているものは多い。
魔法の技術力はかなり高いことがすでに見えているということもあり、おそらく小国は接触しに行く可能性があるからだ。
そのころの秀星だが……。
「ほう、そっちの宇宙船の中って何層にも分かれてるのか」
「ああ。最下層に魔法の実験施設。その上に食料の生産地帯、その上には工業地帯、その上に居住空間がある。と言っても、上四つの階層にいる貴族以外の住居のランクはほぼ変わらないけどね」
アルエストから受け取った端末を使って、アルエストとめっちゃ世間話をしていた。
「なーるほど……あれ。商業施設は?」
「商業施設は居住施設の中央に存在する。言い換えれば、ドーナツの本体部分に居住部分、穴の部分に商業施設が並んでいる」
「ほー……」
「なお、転送魔法が発達しているからね。基本的には端末を入力して商品を買うのが一般的だ」
「てことは、農業とかも完全に魔法で管理してるのか」
「その通り。かなり楽だぞ」
「だろうな。ん?倉庫ってどこにあるんだ?」
「あー……それは防衛上の都合で言えないんだ。すまない」
「いや、いいっていいって」
宇宙船という限られた空間が古代貴族の領域である。
そんな中で、多くの物資を貯蔵する『倉庫』というものは簡単に言えるものではないだろう。
「今の地球は科学技術を発展させているそうだが、どのようなことができるようになっている?」
「情報処理面では圧倒的だな。現実と区別がつかないような……とまあ言えなくもないイラストのゲームとかも開発されているぞ」
「それはすごいな。完全に魔法技術だけを使ってビデオゲームを作ろうという試みはあったが、そのほとんどは失敗に終わったよ」
「そりゃそうだ。魔法は処理能力のほとんどが人間の脳みそにあって、それを外部に用意するアイテムを作るのは困難だからな」
「ああ。ビデオゲームに関してはあきらめて科学技術に頼ることにしているよ。さすがに電子技術に関してはどうしようもない」
「『ゲーム開発魔法』みたいものを研究したことはあるんだけどな……」
「結果は?」
「アルエストの予想を聞こう」
「ふむ、途中で面倒になって辞めた。といったところか」
「その通りだ。いや正直、プログラムの組み方はわかってるんだが、結局は全部作る必要があるからな」
「そうだね。魔法というのは炎を出すとか、風を発生させるとか、そのような現象にとどめておくべきだ。ビデオゲーム一本に必要な情報量と、魔法を運用するうえで求められる情報量には差がありすぎる。というより……クソゲーしかできなかっただろう」
「ああ。簡単なものはちょっと作ってみたんだが……プレイ出来たもんじゃなかったよ。基本プレイ無料のゲームをインストールしたほうがはるかにマシだ」
「フフッ。ゲームに限らず、魔法は汎用性が高い反面、『芸術』や『文化』には影響しにくい部分があるからね」
もともとライフラインに影響しそうなレベルのことしかできないようなものが魔法だ。
使いどころは考える必要がある。
とまあ、そんな感じで、秀星とアルエストは普通にしゃべっていた。
双方ともいえることだが、『上』の方針が決まらなくて暇なのである。




