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第九百三話

「私たちが頷くわけがないだろう」

「だよね」


 とりあえずアトムがいる魔法次官の執務室に来て、その時に話したことの文字起こしをして書類にしてアトムに見せたのだが、まあアトムから当然の反応が返ってきた。


「優れた魔法技術を持っているのは確かだ。君が見たありとあらゆる技術が魔法によるものだとすれば、相当な力を持つ文明だ」

「ただ、文字起こしをした資料を見てわかったと思うけど……」

「ああ。リスクに対する考え方がまるで違う。もちろん、私たちもすべてに対して予防という手段が取れるほどの技術があるわけではないし、だからといって何かが起こった時、そのすべてに対処できるわけではない。そういう意味では中途半端といえるが……」

「だからと言って、『最初の一回は何が起こってもいい』っていう主義は許容できないよな」

「ああ」


 アトムは資料をデスクにおいて、目を閉じて考えている。


「いくつか気になるところはあるが……」

「こういう状況でのアトムの『いくつか』ってどれくらいなんだ?」

「七桁くらいだ。で、強く気になるのは、『なぜそのような文明が今まで姿を現さなかったのか』ということと、『姿を隠すことになった事情は一体何なのか』ということだ」

「あー……過去に何があったのかってことだよな」


 彼らの今までの行動は、『身を隠していた』ということにほかならない。

 過去に何かと衝突した結果問題が起こったのか、それとも自分たちが何らかの事故を起こしたのか。

 わからないが、隠していたというように見えるということは、解決できない外敵がいたのだろう。

 ただその場合、『その外敵を対処できるから出てきた』のか、『外敵が絶滅するまで待っていた』のかで大きく異なる。


「そうだ。当然、昔は今ほどの文明を持っているわけではない可能性は十分にある。というより、君が彼らのことについて語る雰囲気を見る限り、合理的な部分は見え隠れする」

「それに対して反論はないな」

「『古代貴族』とは名乗っているが、その称号に胡坐をかいているとは思わない方がいい。当然、『進歩してきた結果今の彼らがある』と考えて間違いない」

「となると、その『ずっと沈んでいた理由』がきになるな……」

「ああ。ただ、ここでそのリスク管理の話を持ち出せば少しは見えてくる」

「……要するに、『当時の力では対処できないことがあったから』だよな」

「ああ」


 言い換えれば、当時対処できなかったそれを克服したからこそ、こうして表に出てきたということでもある。


「それが一体どういうものなのかはわからない。ただ、だいたい何があっても、秀星がいれば対抗できると思うがな」

「そもそも俺が対抗できなかったら地球は終わるだろ」

「ああ。お互いに全力を出し合えば、私があった人間の中に、君を超えるものはいない」


 そういって、アトムはカフェオレを口に含んだ。

 ……そのカフェオレだが、ここに美人秘書が持ってきたときはコーヒーだった。

 今は牛乳と砂糖がモリモリのマシマシであり、結果的にカフェオレになっている。

 なお、この魔法次官の執務室には冷蔵庫があるのだが、アトムはそこから牛乳を取り出していた。

 冷蔵庫の上にある棚だが、扉を開けば砂糖が大量に存在する。


 アトム。特濃の甘党だ。


「……何かな?」

「いや、そんな牛乳と砂糖を詰め込んで、よく飲めるよなって思っただけだ」

「……こう見えて、苦いものは飲めなくてね」


 余談だが、アトムが関わる会議では基本的に全員に配られるのはお茶である。

 古い価値観といえばそれで議論が終わってしまうのだが、普通に配られる程度の苦さのコーヒーをアトムが飲めないからだ。

 それを知るのは軽食などを作るおばちゃんくらいだと思うが、そのおばちゃんは最初からコーヒーではなくお茶を持ってきたらしい。


 というか、お茶だって苦味というものがある。というか苦味を楽しむものだ。


 アトムは『苦いものは飲めない』と言っているが、単純に舌が子供なだけである。


「……ブラックも微糖もダメか?」

「ああ。カフェオレが限界だ」


 そう言って特甘カフェオレを口に含むアトム。

 ちなみに秀星も飲みたくないレベルである。


「さて、大雑把な彼らの事情は見えてきたが、結果的には反対だな」

「ああ。だが、真正面から叩き潰すようなものでもないな。理性的な話し合いができるのは間違いないし、話し合いとお互いの技術の視察で決着が付けばいいってところか」

「そうだな。科学資源や魔法資源を使わなければならないような戦争になってしまえば、それはお互いにとって損にしかならない。世界征服を企んでいるのにコストを最小限に抑えられるとは向こうも考えていないだろう」

「まあ、向こうが戦争に正義があると思っているのなら話は別だけどな」

「確かに」


 アトムはうなずいた。


「ただ、『古代貴族』に対して技術的な関わりを持ちたいというものはいるだろう。それに関してはルールを設ける必要はあるが、反対するようなことではないか」

「ああ。ただ……あんまり向こうが作った技術って使いたくないけどな……」


 問題が起こらないようにするのではなく、起こってから解決する。というスタイル。


「なんだかこう……何度も何度も同じミスをしていてアホっぽく見えると思うんだよ」

「そこは否定しない」


 人間なら痛いのは嫌なので、ある程度は予防に関しても考えているだろう。

 問題は、その加減である。

 やっと。総文字数二百万文字と、PV数三千万か。九百話を超えてやっとと考えると地獄のような数字である。

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