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第八百九十九話

 魔戦士学校は基本的に授業が午前中にしか存在しない。

 そのため、どの生徒であっても、午後はどこにいようと問題はないのだ。

 平日の午後一時で制服を着ていても、別に警察が来るわけではない。


「……で、師匠。会計の仕事って、何かあるんじゃないの?」


 そのため、別にミーシェが秀星の家でごろごろしていたとしても何も問題はないのだ。

 多分ね。


「私が役に立つわけがない」

「自分で言うんだ」

「無駄な見栄を張るフォルノスよりはマシ」

「まずその話をする前に、生徒会役員になったんだから業務と責任とかあるだろ」

「大丈夫」

「?」

「基樹は優秀。私が出る幕はない」

「あっそ」


 基樹がそれでいいといっているのなら構わない。

 だって秀星もミーシェが会計で役に立つとは思っていないのだ。

 金庫番としては最強ではあるが、最も会計に必要とされる計算ができない。

 ……いや、厳密には電卓の使い方くらいは分かるのだが、巧妙に散りばめられた数字の因果関係がわからないのだ。

 言ってしまえば『物理的に脅せないだけでやりようはいくらでもある』ということである。

 人の社会はただ強いだけでやっていけないのだ。秀星はただ強いわけではなく、幅広い意味で反則なのでそのあたりの問題はない。


「そういえば、天窓学園の生徒会ってどんな雰囲気なんだ?」

「元魔王として率いた経験。運営において重要な項目を見落とさない観察力、そして実力を兼ね備えた生徒会長に、そんな生徒会長が気が付かないわずかな点をしっかり拾うことができてお金の管理もばっちりな副会長。息の合った連携で実務をこなす書記と広報と庶務の三つ子を揃えている」

「そして金庫番には剣術神祖か」

「うむ」


 そう聞くとかなり理想的ではある。


「で、秀星はこれからどうするの?」

「どうするとは?」

「そちらの生徒会長であるフォルノスには、まだまだいろいろな秘密がある。それに対して、秀星がどう考えているのか。それを知りたい」

「ふーむ……」


 フォルノスの行動……いや、その中でフォルノス自身も意識していなかったであろう『視線』を思い出す。


「何かを探しているんだろうなってことは分かってるけどな……あと、なんだろうな。フォルノスを見ていて思うのは、俺と比べて『薄い』って感じかな」

「ふむ」


 秀星の言葉にミーシェは頷く。


「秀星が言っていることは事実。そして、フォルノスの探し物は、数年程度で分かるようなものでもないこともまた事実。とはいえ、フォルノスが私たちに迷惑をかけることもない」

「なら放置でいいか。人の事情に首を突っ込みすぎてもアレだし」

「私もそれを言うために今日はさっさと帰ってきた」


 ミーシェはそういうと立ち上がった。


「どこに行くんだ?」

「これからダンジョンに潜ってモンスターを倒して素材を手に入れる必要がある。沖野宮高校でフォルノスが資金獲得のために動いていたように、天窓学園にもいろいろな制度が導入されるから、お金が必要」

「まあ、師匠は闘気や殺気を隠す技術が俺やフォルノスより断然上だもんな。資金的には沖野宮高校の生徒会よりも上になりそう」

「秀星。殺気や殺意程度なら、自由にいじれないと話にならない。私なら、日常生活のようなテンションで人を斬れるし、逆に、虐殺をするような気配のままで日常生活を送ることもできる」

「恐ろしいな」

「舐められなくなるから意外と便利」

「汎用性は低そうだけどな」


 どういう雰囲気になるんだろう。特に、虐殺するような気配のままで日常生活。


「というわけで、私は稼いでくる」

「ああ。わかった」


 ミーシェはそれ以上は何も言わずに歩いていった。


「さてと、フォルノスにもいろいろ考えていることはありそうだし、師匠もそれは同じか。生徒会そのものは安定してきたし……何か起こりそうなんだよなぁ」

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