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第八百九十三話

 というわけで、コロシアムに入ってイベントをこなすことになった。


 なお、人数で言えば七対四で沖野宮高校側が有利だが、聡子や基樹、ミーシェといったちょっと自重が足りないメンバーが集まっているため、反則とは言われないくらいである。


「さて、基樹。良い勝負にしようか」

「……生徒会長同士、確かにそれに対してはうなずきたいんだが、きっとカオスなことになると思うぞ」

「それでも良いじゃないか」


 フフッと微笑むフォルノス。

 一応敵陣営にミーシェがいるものの、そこまで緊張している様子はない。

 策があるというよりは、純粋にフォルノスが強いのだろう。


「さてと、そろそろ始めようか。報道陣が集まってるし、会話だけで長引くのもアレだからね」

「そうだな」


 お互いにスマホを取り出して、イベント開始のアプリを起動する。

 これを使うことで10カウントが流れるのだ。


「むふふっ。ぶっ倒してやるですよ!」


 とても元気な様子の椿。

 刀を構えて『そういえば誰を狙えば良いんですかね?』と迷っている様子だが……まあ君は勝手にしていると良い。


 2……1……START!


 開始の音声が聞こえてきたとほぼ同時に、両陣営がいる場所のほぼ中央で、ガキンッ!と金属音が鳴り響いた。

 そこでは魔力を固めて作ったであろう槍を構えているフォルノスと、同じく魔力で作った剣を握るミーシェが衝突していた。


「チッ。君が剣を構える前に貫く予定だったんだが、そううまくは行かないか」

「私の剣を作る速度は前よりも上がっている。この程度で私を抑えることは不可能」

「だよねぇ」

「あともう一つ」

「?」

「あなたが得意な武器は剣のはず。槍でいいの?」

「ははは。こちらも鍛えているから問題ないさ。それに……剣術神祖である君を前にして、剣を構えるなんて自殺行為だろう」

「確かに。ただ、あまりつかっていない武器で私と戦えると思わないほうが良い」


 つばぜり合いになっていた二人だが、次の瞬間、とんでもない速度の斬撃音がひびき始める。

 剣と槍が何本にも増殖しているように見えるほどの速度だ。


「うわー……全然本気じゃなさそうなのに、アレだけの速度で振れるとか。頭おかしいんじゃね?」


 牧人は嫌そうな顔をしている。


「まあ、神祖だし、純粋な人間と同じ脳の構造はしていないのは間違いないけどね」


 国枝は剣を構えて、基樹を見据える。


「で、牧人先輩には、向こうの副会長を任せていいですかね?」

「そうしようか」


 その向こうからだが、美奈が鉄の剣のようなものをいくつも空中に作って、それをこちらに飛ばしてきた。

 かなり早い上に正確性も高い。

 牧人は小さな防御障壁の魔法をいくつも作り出して空中に展開し、全ての剣を防いだ。

 どうやら発射後の操作は設定していなかったようで、そのまま地面に落ちる。


「それじゃあ、ちょっと言ってくるよ……で、君らはどうするの?」


 牧人が三人組を見る。


「俺たちは遊撃だ。まあ、邪魔はしないから安心してくれ」

「……わかった」

「むっ!私は聡子お母さんのところに行ってきます!」


 椿は刀を構えて突撃した。

 正直、他のメンバーは『相性最悪じゃね?』と一応思ったのだが、だからといって聡子と戦いたいメンバーはいなかったので、とりあえず椿には聡子と遊んでもらうことにしたようだ。


「さてと、そろそろ行くか」


 牧人たちも移動した。

 国枝は基樹のところにまっすぐ向かう。

 牧人は美奈のところに風属性魔法を使って飛んでいった。


 国枝は剣を引き抜いて、基樹に斬りかかる。

 基樹もまた剣を引き抜いて、国枝とつばぜり合いになった。


「さて、俺の相手はお前か。まあ、他のメンバーが来るとは思っていなかったがな」

「ちょっとお付き合い願いますよ。正直、こういう場面で戦いたくはないんですけどね」

「仕方のない話だ」

「ですよね。あー嫌な話だ」


 くっちゃべっている二人だが、とりあえず踊ることにしたようだ。

 国枝は剣を振って、魔法を連発し、魔法を剣に乗せて振るう。

 しかし、基樹は剣に関しては弾くか躱すかのどちらかだが、魔法に関しては、基樹に当たりそうになる手前で霧散して消えていく。

 剣にまとわせた魔法も、基樹に近づくと消えていった。


「いやあの。ちょっと反則過ぎません?」

「何がだ?」

「魔法が消えちゃうんですけど」

「消えないように魔法を作ればいいだけのことだろう」

「なるほど……で、消えないようにする魔法を消す魔法を追加するってことですね」

「そういうことだ」

「いたちごっこは嫌なんですけどね」

「それだと神を相手にするときに苦労するぞ」

「それは知ってるんですけどね」


 神と戦う気はない。とは言わない国枝。

 もしかしたら、という部分では戦うかもしれないと考えているようだ。

 もちろん。嫌であることにはなんの異論もないわけだが。


 基樹はちらっと美奈の方を見る。

 そこでは、美奈の鉄の剣と、牧人の魔法が激突し続けて、弾幕を張り合っているような状態になっていた。


「思ったよりそちらの会計は強いな」

「あれ。美奈さんが情報よりも強い……」

「どこの情報か知らんが、基本的に『剣の精鋭』のメンバーは本気なんて出してないぞ」

「聞きたくなかった。いやしってますけどね」


 本人の口から断言されたくないことはいろいろあるのだ。


「……」


 基樹は次に聡子の方を見る。


「むっ、むううう!全然当たらないですうううう!」

「素直な剣筋ですねぇ。ほらほら、こっちですよ♪」


 扇子を構えて椿の刀に対処していた。

 あらあらうふふと微笑んでいるので、余裕しかないのは確定である。


「……放置でいいかな」

「良いと思うぞ」


 聡子を相手に『普段よりも行動の質が落ちない』というだけで未来の風香の椿に対する接し方がわかるというものだ。羨ましい姿である。


 ただし、そういうことを言っている場所ではないことも事実だ。


 全員が底など見せる気はない戦いの始まりである。

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