第八百九十一話
椿は秀星と風香なら風香のほうが好きである。
というか、一番好きなのはお母さんである。
未来の秀星は多忙なので、いろいろなところに連れて行ってくれたり、作ってくれたりするのは風香なのだ。
……連れて行ってもらうのは基本的にダンジョンで、作ってくれるものの中に必ず『きゅうりと生ハムを細切りにして卵黄醤油を混ぜたやつ』が出てくるのだが、このあたりは二十年後の風香も今と対して変わらないということだろう。多分。
そんなお母さんが好きな椿であり、ほしい愛情は未来の風香からたくさんもらっている。
しかし、二十年前の風香に対して同じレベルで接するのはどこか違う気がすると思っているようだ。
秀星はそもそも実年齢が今の時点で五歳上。しかも、脳の処理速度が許す限りに思考実験を繰り返したことで、精神的な部分が二十年後もあまり変わらないのである。
そのため、秀星に対しては未来のときとほぼ同じように。
風香に対しては若干ブレーキがかかっているのだ。
そして、聡子は雰囲気やスキル。所有する神器の影響で、母親としての属性が強い。
「むふふ〜〜〜。聡子お母さーん♪」
とある控室。
椿は、ソファに座る聡子の胸に顔を埋めながら抱きついていた。
「フフッ。よーしよーし……んっ」
椿が聡子の胸を着物の上からギュッと揉んだ。
「お。おおおおっ!聡子お母さんの胸!未来のお母さんよりもデカイです!」
確か未来の風香の胸の大きさはバスト95のGカップだったかな。クリスマスイベントで暴露してた気がする。
……それよりも大きいのか。
「もう、椿ちゃんはわるいこですね。えいっ!」
「んっ!んんんんっ!」
聡子は椿の顔を自分の胸に埋めるように抱きしめた。
自分がでかいといったばかりの胸に顔が埋められて、椿が声を漏らしている。
「んんっ!ぷはっ!むうううっ!」
解放された椿は怒っているようだが……いや、本当に怒っているのだろうか。ちょっと自信がないが、頬をふくらませる椿。
それに対して聡子はふふっと微笑むだけ。
……風香という母親から愛情をいっぱいもらった椿を、聡子が完全に攻略するのは難しいかもしれない。
ただし、お母さん大好きっ子の椿が、聡子に勝つというのも無理な話なのである。
……で。
「zzz……むにゅぅ……」
むちむちで大きな太ももに頭をのせてスヤスヤと眠る椿。
そんな椿の頭を、聡子は優しい手付きで撫でるのだった。
母性という優しさに溢れた表情である。
(あああああああっ!かわいいいいいいいいいいっ!)
……内心では興奮と発狂に加えて禁断症状が出ているようだ。どうせもう治らないから放置しておこう。




