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第八十九話

「なんか……すごいことになったな」


 マスターランクチームであるイリーガル・ドラゴンの三十人でも、校庭はかなりぎりぎりだった。

 沖野宮高校の生徒達も強くなってきて、スペースが足りなくなってきている。

 もちろん、何も学校内しか使え無いというわけではないのだが、イリーガル・ドラゴンのメンバーのそばにいたいと言うのが実際のところだろう。

 秀星も気持ちが分からないわけではない。


「校庭が明らかにキャパオーバーですね」

「まだ学校内にいるから派手にやってもばれないのだが、このペースだと時間の問題だからな……だからと言ってやめろとも言えないからな。合同訓練は明日までの予定になっているが、もうすでにスペース的な問題が出始めているぞ」


 宗一郎と英里が頭を悩ませ始めた。

 それだけまずいことになっている。


 場所が足りない。

 いや、別の場所に行けばいいのだが、それをやりたくない。というのが本音だ。


「……要するに、場所を確保する必要があるということか」

「秀星、頼むぞ」

「来夏、そこで俺に丸投げしないでほしかった……」

「だってどうにかできるだろ」


 ……できないわけでないと思っていることは確かだが、何か納得いかないこともまた事実である。


「まあ、ちょっと考えてみるか」


 と言うわけで、教室の一つにこもってレシピブックをめくる秀星。

 ぶっちゃけ、スペースを確保するだけならいくらでも手段があるのだが、今回の場合は、秀星以外にも利用できるものを提供する必要がある。

 話しあいの途中でそんな感じになっただけだが。


 魔法でもいいのだが、魔法具と言うことで作ってしまった方がいい。ということにした。


「えーと……これがいいかな。素材もそこまでひどくないし」


 レシピブックの中から一つを選出。

 保存箱に入れていた素材を使って、レシピブックでそれを加工し、組み立てた。


 ★


「……あれほど悩んでいたのに、今ではもう解決してしまったな」

「中に空間が広がっている扉を生み出す魔法具ですか。すごいですね」


 ニコニコしながらルーカスが持っているのは、秀星が作った魔法具『コリドー・コネクター』である。


 コリドー・コネクター

 本来は、人数が多くなってきた組織に対して空間を提供するためのアイテムだ。

 このアイテムは、文庫本程度の大きさの板のようなものであり、壁に貼り付けることでその効果が起動する。

 付けると扉が出現するのだ。

 扉を開けた先に待っているのは、初期設定では長い廊下で、ドアが多数存在し、それぞれが部屋になっているのだ。

 コネクターのランクに寄って広さは変わるが、逆に言えば変わるのは『ドアの中の空間全体の広さ』だけであり、レイアウトは自由。倉庫としても使えるし、会議室を設けることもできる。インテリアは外部からの持ち込みだが。

 部屋のドアにはもちろん鍵も存在する。セキュリティはプライバシーもしっかり守る。


 さらに言えば、壁に貼り付けるというが、その壁の概念もかなり大雑把なので、ぶっちゃけると、どこでもいいのでレンガブロックを積み上げるだけで壁になる。

 拠点としては十分なものであり、扉を守るものを配置して置けばいいし、不安なら魔法具を使って簡易的な小屋を立てて、その中でコリドー・コネクターを設置すればいい。

 汎用性が高く、路地裏にアジトを作ることもできる。

 コネクター内部のレイアウト情報と、存在するアイテムは全て配置情報が保存されており、初期化設定を使うまではすべて残るのだ。

 ちなみに初期化するときに内部に残っていたアイテムに関しては、コネクターの付属アイテムの『絨毯』を使うととりだせる。まあ、言い方を変えれば『落し物置き場』であり、衆目に晒されることになる。よほどプライバシーに影響がなければ。


 ちなみに隠蔽魔法を使ったりすると犯罪レベルで発見できないのだ。

 仮に組織として使うとしても報告義務が必ず発生するレベルである。


 しかし、便利なのはいいが重要な欠点がある。




 信じられないほど燃費が悪い!




 秀星クラスの魔力供給がなければ大量のコネクターの維持は不可能とされるほどだ。

 魔力を貯蔵する媒体も開発しているのでそれを持っておけばいいだけの話だと思っていたが、実のところ全然足りないし、必要な媒体が多すぎて、コネクター内部に倉庫を設けてもすごく嵩張る。

 使うタイミングを間違えると本当にひどいことになるのだ。


 逆に言えば、その燃費の悪さがある意味でセキュリティにつながっている。


 要するに、レシピブックをかいたやつはこう思っているのだ。

 『使い続けることができるものならやってみろ』と。



「スペースの問題が解決しました。どうしたものかと思っていたのですが、これで明日まで、思いっきり訓練が出来ますね」

「ちなみに、質量がしっかりある立体映像を出す機械も作っておいた」


 それなりに作って配置している。

 本物のモンスターを相手にしている臨場感を味わうことが出来るのだ。

 ただし、攻撃が当たる瞬間に本来の映像に戻るので怪我はしません。


「ま、これくらい作ってやれば十分だろ」


 あとは……。

 ローガン(あのバカ)が何をしてくるか。である。

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