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第八百十八話

「お腹いっぱいになりました!私も本格的に戦いますよ!……む?どひゃあああああああ!」


 椿の傍にあったビルが倒壊した。


「な、なかなかハードなことになっていますね。いきなりビルが倒壊するとは……もしかしておじいちゃんがいるのでしょうか?」


 高志はビル破壊候補筆頭なのだろうか。朝森家なのでぶっちゃけ何が起こっても不思議ではないのだが、真っ先に思い浮かぶ当たり、未来でも相当やんちゃしている可能性がある。まあ二十年後でも五十路くらいなので、高志なら体力が余りまくっている可能性も否定はできないが。


「むうう……あ、お母さん!……パンツが真っ白です!痛い!」


 風を纏って飛んでいる風香を発見。

 ただ、沖野宮高校の制服姿であり、下半身はミニスカートである。

 それにスパッツも着用しないので、パンツが下から丸見えなのだ。

 ……別にそこまではまあアレだが、椿は視界に映ったらそのまま言葉に出てしまうのが面倒なところだろう。

 風で出来たげんこつが頭に落とされて『う~……』と悶絶している。


「いたたた……あれ、お母さんはもう見えなくなってますね」


 風香は現在、簡単に表現すれば『ガチ勢』である。

 高い懸賞スコアを持ち、ものすごく強いと判断できるもの達に喧嘩を売っているのだ。

 おちおち休んでいられない。

 ちなみに、風香の懸賞スコアは『350000』

 ほぼ椿の六倍である。

 ちなみに、神器使いをはじめとするメンバーは五十万を超える場合もあり、正直最初っからブレーキがかなり壊れている数値設定である。

 ちなみに、一度でも倒されると懸賞スコアが激減するため、『一番最初に倒す』のが重要だ。

 そのため、風香はあちこちに移動している。


「むうう……む?」


 気配を感じて振り向く。

 すると、ビルの陰から誰かが大通りに出てきた。


「あっ!基樹さん!」


 姿を現したのは基樹である。

 なお、手には彼が持つ神器、『魔宝剣ダーク・オリハルコン』が握られており、どうやら『本気』で戦っているのがわかる。


「椿か……さっきまで見かけなかったが……」

「むふふ~♪お腹いっぱい食べてました!」


 幸せそうな顔でそういう椿。

 基樹は納得した。

 ……何に『納得した』のか自分でもいまいちよくわからないのだが。納得したということにしておこう。


「基樹さんは何をしていたんですか?」

「風香をまいてた……」

「あれ、お母さんに追われてたんですか?」

「まだ一度も倒されていないからな。スコアが減っていないんだ。だからなのかはわからんがかなり追ってくる。正直……懸賞スコアで言うと俺の方がかなり高いんだが、気分的にはかなり風香は乗り気だな」

「むうう……お母さんが何を狙っているのかはわかりませんが……ここは口ではなく刀で語りますよ!」


 そういって、椿は刀を抜いた。


「……いいだろう」


 基樹も持っている剣を構えなおす。

 神器の剣と、神器ではない刀という『差』はあるが、椿が使っている刀は、手入れをするための道具に至るまで未来の秀星が作成したものだ。

 基樹の方がやりすぎなければ、十分戦えるレベルだろう。


「神風刃・紫電一閃!」


 引き絞るように構えた刀から、風の突きが放たれる。

 一直線に基樹の急所を狙ってくる一撃。

 それに対して、基樹は剣を振り下ろすだけで霧散させた。


「むう……まだまだ行きますよ!」


 刀を構えなおして突撃する椿。

 椿の表情に浮かんでいるのは、圧倒的な好奇心だ。


(ダラダラやってるやつも多いってのに、よくやるもんだな……)


 一位になっても報酬がしょぼいのでそこまで乗り気ではない基樹。

 彼もダラダラやっている方だ。


 連撃を仕掛ける椿だが、基樹は剣でそのすべてを捌いていく。

 秀星と風香が仕込む剣術は確かにレベルが高いのだが、まあ、素直な剣筋だ。

 正直、敵の隙をとにかく狙って行うのが攻撃というものなのだが、椿にとってはそういうものではないらしい。


「……すなおだなぁ」

「むむ!皆によく言われますよ」

「だよね。知ってる」


 基樹としてはそういうしかないのだった。

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