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第八百十六話

「むっふふーん♪レストランはどこですかね~」


 大量のお菓子、そして大量のリンゴを食べた後で、レストランを目指す椿。


「揚げ物もおいしいですし、カレーも捨てがたいですよね。ラーメンも……ううむ、甘いものもいっぱい食べたいですし……迷いますね!」


 迷うのは結構だが、なぜそんなに高カロリーの物を摂取したがるのだろうか。

 まあ魔戦士は基本的に動きまくる職業なのでカロリーは必要になるのだが、それにしても食べ過ぎである。


「タピオカミルクティーもいいですよね~」


 ……タピオカは芋からできてるからすごくカロリー高いよ?椿ちゃん。


「……む!」


 椿は真剣な顔つきになって刀を抜くと、そのまま自分の後ろから後頭部を狙った弾丸を切り落とす。


「誰かがいるみたいですね。この辺りは静かだと思っていましたが、優秀なスナイパーがワンショットキルをしていたのでしょうか?」


 このイベントにおける魔力の装甲は、基本的に『致命的なダメージが本来なら発生している』と判断された場合は転移システムが起動していなくなってしまう。

 そのため、後頭部などを狙われるとワンショットキルが適用されて転移システムが働くのだ。

 転移によって誰かの邪魔をすることを防ぐため、光も音もほとんどなく静かに消えていくため、椿が気が付かなかったのかもしれない。


「あまりスナイパーの方には知り合いがいないんですよね……」


 銃を使うものが数名いる程度で、遠距離射撃を基本とする『スナイパー』となると数が大幅に減る。

 まあそもそも、ダンジョンの攻略が魔戦士の戦場の主流になっている今、スナイパーも近接戦闘が要求されることが多くなったため、今回のような遭遇戦を得意とする生粋のスナイパーはあまり見かけないのだ。


「候補としてはエイミーさんですが……」


 剣の精鋭メンバーだったが、現在は抜けて上月神威という沖野宮高校の三年生の生徒に付いているアメリカ人だ。

 遠距離となると一応思い浮かべる人ではあるが……。


「エイミーさんの場合は狙撃というより爆撃ですから今回は違いますね」


 剣の精鋭メンバーって結構遠慮がないね。


「ほいっ!」


 心臓に飛んできた弾丸を切り落とす。


「そこですね!弾道で丸わかりですよ!」


 どこの達人だ君は。

 というツッコみを敵さんのスナイパーがやっている間に、椿は刀を引き絞るように構える。


「神風刃・紫電一閃(しでんいっせん)!」


 そして放たれた刀の突き。

 風を纏ったそれは、まっすぐ弾丸が来た方角に向かって飛んでいく。

 ビルの壁を粉砕しながら五階部分を爆撃したような感じになっている。

 やはり遠慮のない攻撃だが……。


「……あまり手ごたえがないですね。うわっ!」


 少し上の角度から飛んできた弾丸に驚く椿。


「むうう……私が弾丸を弾いた瞬間に跳躍ブーストがあるブーツでビルの中を飛び回ってますね!むうううう!鬼ごっこなら負けませんよ!」


 そういって、椿は風を纏って飛びあがり、弾丸が飛んできた六階部分に突撃する。

 そのまま刀に風を巻き付けて壁にたたきつけると、壁を容赦なく粉砕。

 ビルの廊下に飛び込んで、きょろきょろと見渡す。


「……おっかない嬢ちゃんじゃなぁ。椿ちゃん」


 椿の視界に現れたのは、生島標(いくしましるべ)だった。

 高志が率いるユニハーズのメンバーにして、自称九十二歳のロリババアであり、ゴミ魔法使いである。

 ちなみに重蔵の妻であるが……改めて標を見ると体格差がマジでゴリラと小動物だ。子作りするときなんだかすごく問題が発生しそうである。

 いつも見るのと同じ白いワンピースを着ており、小さな体で溜息を吐いていた。


「お!(しるべ)さん!さっきの弾丸は標さんだったんですね!」

「そうじゃ。ワシは『捨てられた弾丸』に魔力を込めれば、その弾丸に使われていた銃の性能通りの弾速で飛ばすことができるからのう」


 そういいながらジャラジャラと弾丸が入ったレジ袋を取り出す標。

 さすがゴミ使いである。

 ……レジ袋には『イベントマート三号店』というロゴが入っているのだが、このイベント、もしかしてコンビニまであるのだろうか。


「なるほど。ですがこうして対面したからには、標さんの弾丸は通用しませんよ!」

「そうじゃろうな」


 レジ袋を放り投げて小さな右手を前に出す標。

 すると、そこに膨大な魔力が集まってきて砲弾のようになっていく。


「にょにょっ!?」


 その反応は一体何なんだ?


「拾った弾丸は使えんが……ワシはゴミであれば全部魔力にして糧にできるのじゃ。行くぞ椿ちゃん!」


 そういって砲弾を飛ばす標。

 椿は横に飛んで回避する。

 すると、後方で壁に着弾して大爆発を発生させた。

 濃縮された魔力が一気に拡散したことで爆弾のような状態になっていたのだろう。


「うわ、すごい威力ですね」

「そうじゃろうそうじゃろう。あと、近接戦闘でもほぼ負けはせんぞ!」


 そういって、全身に魔力を纏わせて、魔力を固めて短剣を作って突撃する標。

 あまりにも速いスピードに一瞬椿は遅れたが、刀を振ってそれに応戦する。


「むううううう!」

「ほう、かなりやるのう。まだまだこっちはギアを上げられる。覚悟せい!」


 もう一本短剣を作って二刀流になった標が速度を上げて切りかかる。


「うわわわわわ!」


 予想を上回る速度だったのか、かなり驚く椿。

 だが、対応できていないわけではないので、どうやら驚いているだけでスペック的にはまだ耐えられるようだ。


「……さすが、あの二人の娘といったところか……」


 標は右手の短剣を放り捨てると、右手に魔力を纏わせる。

 そしてそれで拳を作って、椿に叩き込む。

 椿は刀でそれを受け止めるが、耐えきれずに後ろに下がった。


「フフフ。どうじゃ。すごいじゃろう」

「むうう、体は小さいですがハイパワーですね!」

「そうじゃろうそうじゃろう……酒を買うときに面倒なことになるのじゃがな」


 見た目は十歳くらいだもんね……。


「む……」


 椿のお腹から『ぐ~……』と腹の虫が鳴った。

 標のお腹からも『く~……』と腹の虫がある。

 ……標の方がちょっとかわいい音域だ。


「お腹すきました」

「ワシも酒が切れてきたのう。近くに居酒屋があるから一緒に行くか?」

「居酒屋ですか!行きましょう行きましょう!」


 テンションが高くなる椿。


 というわけで、戦闘は一時中断。

 椿は標と共に居酒屋に行くことになった。

 標さん。椿ちゃんにお酒を飲ませたらだめですよ。

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