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第八百十三話

 スタジアム内部はかなりの改造が施されており、都市、町、森をはじめとして、川や池などの水場、高低差の演出のために丘と崖まで用意されている。

 魔法という技術により、魔力量に余裕があれば地下の開発がかなり楽になっていることもあって、常人の百億倍の魔力を持っている秀星から提供された膨大な魔力で工事が行われている。

 どうやら戦闘にばかり金をかけていて地下開発の魔道具に金がかかっていないようで燃費が悪かったが、燃費が悪い程度では何の障害にもならない。

 実際、次々と提供されて行く魔力を見て、魔法省お抱えの魔法使いたちはゲロ吐いてぶっ倒れそうになったわけだが、それはそれとしよう。


 当然、様々なスポットが用意されている。

 そのすべてに『罠』が存在しない親切設計であり、参加者にとって有利になったり息抜きになったりするものが多い。とパンフレットに書かれている。

 ……まあアステルはホオジロザメ釣ってたけど。


 腹が減ってきたらそのような『スポット』を利用する者もいるということだ。まあその段階になればアステルも移動するだろう。缶詰だけで満足するような男ではないので。


 ただ……。


「おお、すげえ!ビールが冷蔵庫の中に詰め込まれてるぞ!」

「こっちの冷蔵庫にはつまみにできそうなのがたくさん入ってるな!レンジもあるし、すぐに食べられるタイプのやつだぞ!」


 酒盛り一直線なセリフを吐くギャグ担当の二人が歓喜するために用意されたものではない。


 というわけで、高志と来夏はスポットの一つ、『宴会場』に到着していた。

 彼らにも抜けないビルがあったので、『このビルの中には何かがあるぞ!』とウキウキしながら探検していたら、宴会場を発見したのだ。

 まあ最大人数が限られているのであまり広くはないのだが、どうやら冷蔵庫はそれ相応にたくさん置いてあるようだ。


 ※余ったらスタッフがおいしくいただきます。


「こりゃすげえな……あ、こっちはお子様用か。こっちはいらねえや」


 冷蔵庫をそっと閉じる来夏。


「んぐっ、んぐっ……プハアアアアア!このビールめちゃくちゃうまいぞ!」

「こっちはレンジでチンしただけなのに唐揚げがものすごく上手いな。どうなってんだ?」


 ビールをがぶ飲みしてテンションが上がっている高志と、冷凍唐揚げを三分ほどレンチンして食べたら肉汁あふれるジューシーなから揚げになっていて疑問を抱く来夏。


「いいんだよ来夏。そのあたりはまあ……秀星がなんかやったんだろ!」

「それもそうだな!」


 それでいいのか、その人物の父親とリーダーでしょ君たち。


「むむっ?」


 そして、ひょこっと顔を出す椿。

 どうやら伏魔殿に入ってしまったようだ。


「お、椿じゃねえか。どうしたんだこんなところで」

「周りのビルが全て粉砕されていて、このビルだけ無事なので気になって入ってきました!」


 なるほど。


「おー、なるほどな。ここは宴会場みたいでな、向こうにジュースがいっぱいあったぞ~」


 まだ酔いが回っているわけではないのか……それとも常に酔っぱらっているようなものなのか、意外と冷静にジュースをすすめる高志、


「!」


 パアアアアア!と顔を輝かせて、冷蔵庫に向かって突撃する椿。


「えーと……あっ!これですね!」


 多種多様なジュースが盛りだくさんである。

 椿は冷蔵庫の中から大量のコーラを抱えて高志たちのところに直行。


「お、コーラを持ってきたのか」

「はい!」


 ペットポトルのふたを開ける椿。

 ……だが、プシュッという音がならない。炭酸を開ければ出るはずなのだが、その音が出ない。

 椿はそれに気が付かず、口に含んで……。


「ブブフッ!」


 思いっきり吹き出した。


「これ醤油ですううううううう!」


 嫌な罠である。

 ちなみに罠はこれ一本だけであり、他はすべて普通のコーラだ。どんまい椿ちゃん。


「あっはっはっはっは!残念だったな椿!」


 来夏はスキルでペットポトルの中で唯一醤油が入っているものを椿が持っていることを認識している。

 そのため、『運が悪かったな!』と笑っているのだ。

 ちなみに高志もだいたいこういうのは見ればわかるので大笑いしている。


「むううう!こういういじめはいけないと思います!」


 ぷんぷんっ!と怒り出す椿だが、まあ正直、椿が怒ったところで何も怖くないのが事実というものだ。

 徹底的に怒るということに対して適性がないように思える。


「まあいいじゃねえか。それ以外は全部普通のコーラだからな」


 ビールを飲みながら笑う来夏。


「むうう……あ、このコーラおいしいです!」


 怒りが完全に上書きされてしまった椿ちゃん。

 ストレスがすぐにどこかに行く体質をしているのだろうか。

 かなり不思議だが、だからこそ椿は椿なのだろう。


「あ、お菓子もおいしいですね!」


 そしてポテチやビスケットを頬張る椿。

 確かにおいしそうにモリモリ食べている。


 というわけで、宴会場では高志と来夏と椿が宴会を開始した。


 一番これをみてイライラしているのは、モニター越しに宴会を見ている観客席にいる人やテレビの前で視聴している者たちだろう。

 まあ、仕方のないことだ。うん。

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