第七百七十五話
ダンジョンならともかく、学校で争った場合は後片付けが必要になる。
神々は平気で物を壊してくるし、生徒たちの方も多少なら秀星がどうにかすると判断して容赦しないので、短時間しか戦っていない上に終始神々を圧倒していたはずだが校舎の破損度はなかなか高いものになっていた。
「……いやまあ別に、マシニクルがあれば学校の校舎程度なら普通に直せるけどさ。だからってここまで派手にぶっ壊すのは逆にどうなの?」
マシニクルの修復弾丸をブッパしながら秀星がそんなことを呟く。
正直、面倒だと思い始めているのだ。
これって一気に丸ごと修復したらダメ?と宗一郎に聞いてみたが、なんと『ダメ』と言われたのだ。
秀星一人が持っている技術力があまりにも隔絶してしまうと面倒なことになるから、とのことだが、正直今更感がありすぎて苦笑するしかない。
そんな秀星の内心は放置するとして、とりあえず修復中である。
「確かに、正直今更ですからね。一気に直したとしても変わらないと思いますが、私が聞いた限りでは、『秀星一人がやったことを、何となく大勢の人間がかかわってやっているように見せている』情報操作がありました」
セフィアからの解説を聞いてはいるが、納得できるかと言われるとそれは別である。
「まだ俺個人に対する勧誘は続いてるからな。対応はセフィアに全部押し付けてるけど」
「秀星様は実用書も書いていますからね。それ関係で様々なメールアドレスを持っていますから、処理するのも大変です」
「だよな。今更そんな情報操作をしても意味なんてないと思うんだが……これに関しては判断するのはアトムたちだからな」
あくまでも秀星が日本の魔法社会の制度に従う気がある以上、それ相応の身の振り方というものがある。
とはいえ、世界一位の座に座る秀星に挑んでくるものはほぼいない。
戦闘映像はかなり見えるようになっているはずなので、実力差は分かると思うのでそれが原因だろう。
「正直、校舎そのものを丸ごと作り替えることができたら楽だったんだけどな」
「さすがに通らないでしょう」
「だよね」
正直そっちの方がはるかに楽である。
秀星だって景観をぶち壊しまくろうとかそういうことを考えているわけではないのだ。
むしろ、見た目は同じでもハイスペックにすることだってできるのだから、そうした方が得なのである。
とはいえ、実際に神々が攻めてきて敷地の周囲にはマスコミが多数集まっているので、あくまでもそれなりに隠す方針であるならば、秀星がちょっとずつ直していく方がいいということなのだろう。
そもそも『痛いの痛いの飛んでいけ!』と言いながら弾丸を一発ブッパすればいい……ごめん嘘。別にそんな言葉を口にする必要もない。
……黄金の拳銃から弾丸をブッパしたら着弾点が修復されているという状況をどう説明すればいいのだろう。説明を求められても無視するだけだが。
「正直、校舎を丸ごと改造した方が防衛拠点として使いやすいんだけどなぁ……はぁ、神々が攻めてきたけど、多分このままじゃ終わらないだろうな。他の神々もこっちに来る可能性は十分にある」
「そうですね。沖野宮高校に攻めるかのような位置に彼らは転移してきました。それが神々の計画であろうとなかろうと、警戒する必要はあります。一度あることは二度ありますから」
「だよね」
二度あることは三度ある。とはいうものの、それ以前に二度あることを少なくとも考慮しているのだ。
なら、一度あることは二度あるのである。多分。
「もしも、これからも沖野宮高校に攻めてくるとなったら、この学校の立ち位置は大幅に変わるからな……」
自分が通っている学校が神々との戦いの最前線とか笑えない。
「まあでも、最終的には……座標そのものをどうにかするか。面倒だけど」
「神々が入ってきたときにズレるようにするのですか?」
「ああ。強制的にそうなるようにする。多分地球ならどこに行っても自分たちが有利になれるっていう闇雲な確信で動いてるだろうから、転移先そのものは何の設定もしていないはずだ」
「それもそうですね。でなければ、わざわざ転移した先に秀星様がいるなどという、彼らにとって最悪なことにはならないはずですし」
来ることが避けられない場合でも、その位置を指定したりといろいろやりようはある。
「異世界でもやったなぁ。相手の転移魔法を弄ってマグマの底に送り込むってやつ」
「さすがにマグマに耐えられる生物は少ないですからね」
「ていうか。異世界でマグマの中を泳いでるやつたまにいるけどさ。あれどういう膂力してるんだろうな。そもそもマグマって馬鹿みたいに粘性と密度がすごいから、潜ることすらほぼ不可能だと思うんだけど」
簡単に言うと、マグマに向かって落ちた場合、マグマに沈むのではなく表面にたたきつけられて、そのまま焼き尽くされるのだ。
正直泳ぐのは秀星もしんどい。
……エリクサーブラッドがあるからね。泳ぐことは不可能ではないのさ。
「まあさすがに怒られたな」
「それはそうですよ。ギャグ補正を持っていない相手でしたから、パンツすら残りませんからね」
漫画のようにうまくはいかないのだ。
マグマの底に沈んだらパンツは残らない。これは常識である。
……秀星の場合は繊維を改造しまくっているので残るけど。
「とにかく修復を早く終わらせるか。マスコミの対応をしてる宗一郎がどういう説明をすればいいのかわからないような表情で時々こっち見てるけど、まあガンスルーしよう」
「あとでネチネチ言われますよ?」
「いいんだよ。戦うのは俺でいいけど、政治的な部分なんて知らんし」
「もし言われ続けたらどうするのですか?」
「さあ?外国に行けばいいんじゃない?別に日本人であることに執着はないし」
秀星は別に日本人であることにこだわりはないので、行こうと思えば他国の国籍を手に入れるために動き出すつもりである。
それをしない理由が日本に残っているだけなのである。
「よーし終わった。さっさと授業に戻ろう」
「神々が攻めてきて校舎が一度破損しても授業続行ですか。最近の日本人は強いですね」
「いや……慣れだろ」
「そういうことにしておきましょう」
「でもよくよく考えると教科書作ったの俺だから授業出る意味ないんだよなぁ……これも今更か。愚痴を言われる前にさっさと帰ろう」
というわけで、正門でマスコミの対応をしている宗一郎を放置して校舎の中に帰っていく秀星。
遠慮はない。




