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第七百七十話

「ねえ千秋。どう思う?」

「正直、余裕だな。黒馬もだろ」

「ああ。そうだね」


 沖野宮高校の三年生の中でも上位である千秋と黒馬。

 重力を操りながら刀を構えている千秋と、汎用性が高い闇の玉のようなものを使って様々な攻撃をする黒馬では、連携というものは薄い。

 この二人で組むようなことがあまりないということもあるが、それでも戦ったことがあるので、『お互いの邪魔をしないように動く』ということしか決まっていない。


 もちろん。それでもなんとかなってしまうのが『勘』というものの恐ろしいところだ。

 こればかりは秀星が書いている実用書を読んだところで身につかないだろう。セフィアがいるが、基本的に戦闘に関しては、少なくとも視界の中にいる敵は全部自分で倒せるほどのレベルだ。正直連携に関しては経験がない。


「神々か……なんだかすごく人間くさいよねぇ」

「神を自分で名乗って、そして今まで奪われることがなかったからその椅子に座ってただけなんだろ。あるいは、神になったのはいいけど、規模に関して発想が足りてなくて、力の使い方がわからないか……まあ、見ている限りでは、『力をセーブして戦わなければならない理由がある』ってところかな」

「確かに見ていて思うよ。なんだか全力っぽい人もいるけど、なんだか抑えてる人もいるからね。あれは何なんだろうなぁ……」


 たとえ離れていたとしても、『表情』という情報がある。

 それを見ただけでわかることはたくさんある。

 ただ、『今どういう状態なのか』はわかっても、流石に事情まではわからない。


「まあいいか。敵に事情があって本気を出してこないのは悪いことじゃないし」

「だな」


 黒馬は闇玉から槍を何本も出して、神々に向けて飛ばす。

 千秋は刀を上段に構えて、振り下ろすと同時に重力操作の力を開放。

 槍は神々が着ている服程度なら簡単に切り裂き、千秋の斬撃は彼らの遠距離攻撃を根こそぎ押しつぶす。


「しかし、神々と言ってもこの程度かぁ……強い人は本当に強いってところかな。さすがにこれが神々の実力の平均とか言われたら泣くよ僕」

「気持ちはわかるが、今はそれは置いておけ、とにかく片付けるぞ。人質を取ろうと躍起になってるうちに済ませる。まあ、こいつらに変化があったとして、秀星がそれを見逃すとは思えないがな」


 刀を闇玉をそれぞれ構える二人。

 いずれにせよ、自分たちと比べて弱い神々が相手とは言え、戦わなければ話にならない。

 ユウギリ。というらしいうえで秀星と戦っている神が何を考えているのかは千秋にも黒馬にもわからないが、少なくともこちらを見下しているのは間違いない。

 最終的に勝てると考えているのか、それともまだ彼の後ろには誰かがいるのか。

 わからないが、少なくとも神々を手っ取り早く戦闘不能にしておくことは必要だろう。


「……そういえば、宗一郎はどこで何をやってるんだ?」


 生徒会長であり神器使いでもある宗一郎。

 すでに生徒の避難は終了しているはずなのだが、出てくる様子がない。


「……まさか、すでに裏で何かが出現していて、戦っているとか?」

「可能性はあるな。というより、それ以外に出てこない理由がない。いくら秀星がいるといっても、宗一郎も一緒にいたほうが生徒は安心するはずだ」


 加えて、避難している生徒たちは、当然ながら全員が神々など相手にできない。

 突出して実力があるメンバーが神々と戦っているだけで、すべての生徒がそこまで強いわけではないのだ。というかそこまで強かったらそれはそれで地獄絵図である。

 で、避難している生徒をだれが守っているのか。ということだ。

 現在体育館で待っている生徒たちだが、神々を相手に自衛はほぼ不可能。

 よって、誰かが守らなければならない。

 しかし、敵が思ったより多く、そして秀星が試そうとしてあえて下に行く神々を逃がしている以上、体育館が狙われる可能性はゼロではない。むしろ、人質を取ろうとするのであれば体育館を狙ったほうが早い。


「……浅知恵が回るやつがいたら、ちょっとまずいかもね」

「だな。まあ……その時は仕方がない。臨機応変にやるしかないか」


 少し、懸念事項が増えてきた千秋と黒馬。


 ……ただ、これは彼らをけなしているわけではないのだが、心配は無用である。

 体育館には、天界神ギラードルという、第一世代型の最高神にして、一度派閥の頂点に立つほどの実力者がいるのだ。

 体育館を軸にして疑似的な天界を構築すれば、第二世代の最高神のコバンザメなど、赤子の手をひねる程度の気分で殲滅できる。

 不老不死である神々だが、痛覚がないわけではなく、封印されてはおしまいである。


 神器を天界にある倉庫で厳重に保管されているので使うことはできないのだが、そもそも秀星がギラードルにスペックで勝てなかったように、第一世代型というのはそれだけでやばいものなのだ。


 いつの時代も、『格』ではなく『世代』がものをいうのだ。

 一度進化が止まれば劣化していくのが人の限界であり、それは神々であっても免れることはない。

 最高の世代というものがどこかにあって、それを体現するものだけが世界に君臨する。


 それだけのことなのだ。


 たとえユウギリがどれほどの策を用いたとしても、結果は変わらない。

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