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第七百六十六話

 相変わらず言っていることは何も間違えていない上にわかりやすい授業をするリオ先生である。

 これで考えていることと整合性が取れていればいいのだが、残念ながらリオ先生の場合はそうはならない。


「……?」


 基本的に椿はノートを取りながら授業を真面目に聞いている。

 ……たまにノートが暗号文のようになっていて、同じ授業を受けている風香のノートと比較するとまるで同じ授業を受けているようには見えないが、授業最初で使ったページを開けてもらったうえで授業内容のクイズを出すと両者正解なのでおそらく椿語でなんだかよくわからないが成立しているのだろう。


 ちなみに秀星はそもそも教科書を作る側であり、全部わかっているのでノートなど取っていない。

 そもそも目にすること、耳にすることを全て覚えているので何かに記録する必要がないのだ。正直反則だが、秀星だからね。仕方ないね。


 椿は真面目に授業を聞いているので、基本的に他のことに注意を向けることはない。

 だが椿は珍しく、教科書を使って授業を進めているリオ先生ではなく、窓の外を見ていた。


「……椿さん。何かあるのですか?」

「む?」


 リオ先生に声をかけられて反応する椿。

 だが、すぐにまた窓の外を見て、一点を指さす。


「あのあたり、なんだか空間に若干……その……歪みができてるような気がして……」


 椿がそういった。

 その声を聞いてから、秀星は椿の指先をたどるように窓の外を見る。

 かなり上空と言っていい位置であり、本来ならば普通に『空』が映っていることだろう。

 しかし……確かに空間のゆがみがあった。


 ヒビが入っているわけではない。ただ、なんだか『ブレている』ように感じるのだ。


「……あ、これは面倒なことになりそうだな」

「……はぁ」


 秀星はそんなことを呟いて、リオ先生は頭を抱えた。

 世界一位の称号を所持し続ける秀星の言葉と、教師陣の中で最も強い(当たり前だ。第一世代型の最高神なのだから)リオ先生が頭を抱えているのを見て、教室の中で緊張感が漂ってきた。


「……秀星君」

「なんですか?リオ先生」

「アレ。停止できます?」

「……五分かかる」

「あ、それは遅いですね。数秒後になだれ込んできますし」


 リオ先生は真剣な目つきで歪みを見ると、指を一度鳴らす。

 すると、校舎全体を覆うほどの『膜』のようなものが出現した。


(……疑似的な天界か)


 具体的に言えば違うかもしれないが、天界神ギラードルが即座に構築するとなれば、それはもちろん『天界』である。

 そう考えている間に、空間のブレはヒビに変わり、そして広がっていく。


「さて、風香、とりあえず生徒を体育館に避難させてくれ。校舎よりも安全だ」

「……わかった」


 一瞬、『私も戦う』と言おうとした風香。

 しかし、秀星の顔を見て、『避難させる』ということであっても、風香くらいの実力がなければ不可能なのだということを感じ取った。


「秀星。一体、何が起こるんだ?」


 額に汗を流しながら羽計が聞いてくる。

 それに対して、秀星は少し考えて……、


「……格上と鬼ごっこやってる神がこっちに逃げてくる。といったところか。もっと砕いた言い方ができるかもしれないけど、事前知識がない状態で説明するならそんな感じだな」


 とりあえずそう返しておく。


(よりによってこの学校に来るとはなぁ)


 秀星は椅子から立ち上がって窓を開けると、そのまま飛行魔法を使って校舎から出た。

 そして、クラスメイトの方を見る。


「いいか?まっすぐ体育館にいってそこで待ってろ。校舎内に残っていて守り切れるかどうかは状況次第だからな」


 守れない。とは言わない秀星。

 しかし、クラスメイト達も初めて見る『真剣な表情の秀星』を見て、わがままを言い出せるものはいなかった。


「よしっ!そうと決まれば移動するよ!慌てずに、でも迅速に!行くよ!」


 手をパンっと叩いて自分に注意を向けて、風香がそういった。


「むむっ!生徒会長さんに話して放送室から指示を出しましょう!まあ私はこの学校での避難訓練をやったことないですけどね!」


 胸を大きく張って『むっふーん!』と主張する椿。

 少し……いや、大幅に無駄な緊張感は収まったようだ。

 立ち上がって移動を始めるクラスメイトを尻目に、秀星は空間のゆがみを見る。

 すでにヒビは大きくなっており……そして、崩壊した。


 中から、大量と言っていい『最高神』たちがあふれるように出てくる。


「……本当に、予想通り過ぎて面白みがないな」


 ただ、デカい顔をされるのも嫌なので秀星は飛行魔法を使って近づいていく。


「さて、最初は『交渉』か、『威圧』か……神器を取られた程度で追われてくるような連中に、器用なことができるとは思えないしなぁ」


 神祖の観察力は正直に言えば『自重してくれない?』と秀星でも思うほどだ。

 だが、神の中でも第一世代型以外はそういうものではない。

 きっと、愚かなことを言ってくると思われるが……。


「俺の名は『外交神ユウギリ』だ。人間共、ここからは俺がルールだ。俺の命令にはすべて従ってもらうぞ」


 器用ではないようだ。

 というか……上から目線で威圧するだけなら、外交官って不要じゃね?

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― 新着の感想 ―
[一言] 棍棒外交という言葉があってじゃな
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