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第七百六十四話

 学校で教員を務めているギラードルは手際は良いのだが、秀星を抱えるクラスの担任なので何かとすることが多い方である。

 部活動の顧問をやっていないし、深夜まで残るということはないのだが、それでも、まだ遅い方だ。

 未来から来た椿までクラスにいるので、魔法省に提出する書類を作る必要があるため、その作業量は多い。


「……ふう、終わった」


 職員室で多くの先生が書類を作っている中、ギラードルは立ち上がってそのまま職員室を出ていった。

 そしてそのまま、とある気配を感じたので階段を上がっていく。

 ドアを開けて屋上に出ると、ガーデニングが施された空間が広がっていた。

 きょろきょろと見渡す限りではだれもいないが、近くのベンチを見てギラードルは言った。


「……最近顔を見せていなかったが、何の用だ?ラターグ」

「まあ、さすがにギラードルが相手だと分かっちゃうよね~」


 神力を使って隠蔽魔法でベンチに隠れていたのはラターグだ。

 何を考えているのかはまだ不明だが、ギラードル以外にラターグとまともに話せる人間はいない。

 目的はギラードルのはずだ。


「何の用かってことだけど、天界の方は今どうなってる?」

「……私がそこにいなくてもわかるから聞きに来たというだけのことか」

「シカラチと一緒にいろんなところで寝てるんだけど、天界の方がざわついてるからね。さすがにこれは情報を集めておいた方がいいと考えてきたのさ。天界っていうのは神々の中でも重要なものだからね」

「なるほど」


 天界という概念を司るに至ったギラードルは、天界というものを別の場所にいても認識可能である。

 確かに、コソコソと話を聞くのであれば、ギラードルのところに来るのは何も間違いではない。

 そしてそれを最初にしてきたのがラターグというのも予測通りといえる。


「何の話を聞きたい?」

「被害とか、いろいろどうなってるの?」

「強硬派が狙っているのはあくまでも神器だ。しかも最高神が作った物のみ。人間に関しては死ぬ可能性があるため本気を出さないが、不老不死である神を相手にする場合は奴らも加減はないらしい」

「まあそうだろうね」

「とはいえ、神器というものに依存しているものは、第一世代型にはほぼいないからな。コネで最高神になったやつは、大体自分用に神器を作って、それに依存するような形で自らの影響力を維持しているようなものだ。そういうパターンでは悲惨なことになっているが、天界という社会の根幹部分はあまり刺激されていないように思える」

「メインディッシュだから最後まで取っておくとか?」

「一応考えられなくはない。天界から失われた神器の分布を考えると、どうやら影響力が少ないところから順々に戦利品として奪われている」

「……やってられないだろうね」

「そうだろうな」


 殺されることも封印されることもない。

 ただ、依存していたものを奪われる。

 口に表すと簡単だが、明確にこれが行われるとなると人間はそれまでの栄光の維持は困難だろう。


「図らずも君が懸念していた通りになったかな?神よりも上である『神祖』がやってきて、神器を奪っていくことで崩壊していく」

「……いや、現段階では、天界の規模……まあ経済的な意味でだが、それが縮小することはあっても、天界そのものが崩壊することはない。というよりさせてはくれないだろう。死後の魂すらも現実という世界において管理するような場所だ。もしも崩壊するとなればその影響力は絶大だからな」


 様々な次元に様々な世界があって、そこには何億人もの人間が住んでいる。

 当然のことだがそれらの人間は死んでいき、そして集まった魂が天界で構築され、まだ天界で生きていけるほど『薄まって』いなければ、転生を行うのだ。

 そんなシステムが構築されている天界というものを崩壊させるほどのことは、神祖も考えていないだろう。思ったよりもやってしまう可能性はあるので確実とは言わないが。


「だよねー。さすがに神祖もそこまで考えてないか。シカラチに聞いてみたけど、あくまで狙うとしても本当に神器だけだって行ってたし。多分そこは本当なんだろうね」

「とはいえ、戦利品として奪われた方はたまったものではないがな」

「無理でしょ。神祖を止めるルールはこの世に存在しない。全知神レルクスがいるから『制限』はあっても、神祖を止める『抑止力』はこの世に存在しない。ただそれだけのことだよ」

「……そういうものか」

「それと同時に、神祖はどこか、創造神ゼツヤに対して一定の評価をしているのかな?確か神祖の中にも技術関係の者はいたはずだけど、その神祖の存在をガンスルーして神器を集めてるし」

「そこは私にもわからん。下位神の一人でありながら、数多くの神器のコアを作っているが……最終的な目的は不明だ」


 本当に狙いはわからない。

 自らの力を超える要因を自ら作っているようなものだ。


「まあ、それでいいんじゃない?ただ一つ気になるのは、神器を集めた後はどうするのかって話だね」

「そうだな。条件があまりにも辛すぎる。おそらく、神祖であっても『使う』のは不可能だろう。神器が持つスペックは大きいが、そのリソースのほとんどは『制限』というものに忠実であることだ」

「神祖ですら突破できないからね……ただ、可能性として、『解放神祖』が何を考えているのかわからないんだよね。アイツは本当にわからん」

「そうだな。確かに、そこも考えておかなければならない。もしも神器の制限を突破できるとなれば……」

「世の中の人間すべてが秀星君状態か。怖いねぇ」


 へらへら笑うラターグ。

 だが、その瞳の奥には、真剣さが見えている。

 懸念事項はまだまだおおいようだ。


「あとは、誰が一番真理に近いか。そこだけか。なんともまぁ……試されてるって感じがするよ。嫌なほどね」

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