第七百六十三話
「さて、椿からもたらされる未来でのアイツらの役職を教えるだけで何となく萎えるのがわかった。これは使えるな」
「私が保育園の園長になっているそうですが、それと比べると雲泥の差ですね」
「ライズ。それを言ってしまうと大豆関係の人に怒られるからやめておいた方がいい。日本の食卓において大豆は重要」
「……そうですね。訂正しましょう」
秀星の家で、秀星、ライズ、ミーシェの三人で集まって会議中である。
「……そういえば、私は未来では何をしているのだろう」
「椿も知らなかったし、多分椿がかかわれる範囲の中では行動していなかった可能性が高い」
「ふむ……残念。まあ知らない方がいい時もあるから問題はないとする」
「これからどうするかですね……最高神の神器を集めているということは分かりましたが、それだけのことでリビアさんが送られてくるとは思えません。神格兵士大学による人材の派遣はめったに行われないことですからね」
「……単位取得に演習がほぼないのか?」
「ありません」
それでいいのだろうか。
そういう状況だと、様々な文化に触れているラターグの方がよほど『矯正方法』を知っているような気がする。
「ふむ、私もそこは気になる。リビアの様子を見る限り、あまり派閥とか利権とか考えているようには見えないし、純粋に任務として必要になったから来たように思える」
「その任務としてくるほどの要因が一体何なのか。そこがまだわからないっていうのがな……」
判断材料が少ない。
神祖が来るという判断が下されたとき、秀星たちは直接戦闘になることを想定していたのだ。
だが、実際に強硬派が考えているのは神器を戦利品として奪うということであり、社会構造が神器に依存しない場合は問題がないようにできている。
「……考えられる可能性は、このパターンでは少ない。私が知る限りでは、『天界で暴れまわった神祖の影響で、あまり大した力のない最高神が天界を追われて地球にやってきて、その影響で地球で何かが起こる』というもの。ライズはどう思う?」
「私も似たような予想ですね。天界から地球に来るためにはかなり特殊なエネルギーが大量に必要になります。一部の神はそれを容易に行いますが、事態が収束した後で天界で暮らすためには、社会というものを構築しているゆえに周りとの関係を壊すことはできません。おそらく、その一部の神の力を使って、様々な神々が地球に流れてくるでしょう。影響がゼロとは思えません」
神祖対策と最高神対策。
もちろん面倒なのは神祖対策だが、神祖対策をちょっと弄るだけで最高神対策は可能である。
しかし、弄るともう神祖対策には使えないので、まだ正面からおしりペンペンできる最高神に対する対策に切り替えたくはない。
だが、地球に流れ込んでくる最高神の数によってはその状況も変わってくるだろう。
面倒な判断が必要だが、鑑定神祖であるライズがいるのでなんとかなると思いたい。
……欲を言えば、『警報』関係の概念を司るやつが仲間にいるほうがいいのだが、もちろん人気なのでどこかに隠れているだろう。
そして、警報神祖……がいるのかどうかは不明だが、仮にいたとすれば、秀星も発見はできても接触はできないと思われる。
「リビアが何をやってるのか知らないけど、最高神の対策をやってるのかね……」
「おそらくそうなる。神祖に対して明確な対策ができるのは、基本的に同格である神祖のみ。リビアはたしかに優秀……いや、天才というレベルだと思うけど、それでも神祖が相手だと勝ち目はない」
「偏差値七十くらいですし」
「天才だな」
ただ残念なことにギャグ補正は取得できない。身を守るのは苦労するだろう。
「天才か……」
秀星の身の回りでも天才型の人間は一定数いるが、最もすごいのはアトムだろう。
それ以外の天才型の人間に目を向けたとしても、天才という格がアトムとは違う。
「最強の神兵は……全知神レルクスの神兵のユキちゃんかな?」
「確かに。神祖に弟子はいても神兵がつくことはないし、ラターグに躾けられて、全知神レルクスのもとで戦うユキは間違いなく最強……まあ最もやばいのは全知神レルクスであることに変わりはない」
結局そこにたどり着いてしまうあたり、神という存在は毒されているものだ。
もちろん、全知神レルクス本人とあっている秀星としても、甘く見るつもりは毛頭ない。
神祖、最高神、神兵、そして神器持ちの人間たち。
地球での神祖の活動が薄いということは、天界では今頃すごいことになるはずだ。
強硬派の人数は不明。
だが、大きく動くとなればここからだろう。




