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第七百五十八話

 その後も木刀と棒を振りあった椿と重蔵だが、特に何か大きなことがわかったわけではない。


「椿ちゃん。ギャグ補正の力はわかったかの?」

「うーん……いまいちよくわかりませんね!」

「まあ、椿ちゃんが多分ギャグ補正の力を使っているからかもしれんのう……」


 結論から言えば……。


「椿ちゃんに限って言えば、今のままで強いと思うのう」

「むうう!それでは神祖の皆さんと戦えないですよ!」


 プンプンと怒っている椿だが、重蔵としてもこれ以上詳しいことを言えるわけではない。

 ……重蔵だって普段から何も考えてないし。


「まあ、爺さんも昔から適当だったからな」

「お前に言われたくないわ!」


 ごもっとも。とはいえ五十歩百歩と言わざるを得ないだろう。

 高志だって何を考えているのかよくわからないし、そもそも褒められたことをしている人種ではない。


「そういえば、昔チームを作っていたという話ですが、チーム名は何だったんですか?」

「……なんじゃったかの?」

「『月光兵団(げっこうへいだん)』だな」

「ちょっとまともすぎません?」

「別にいいじゃろ。風香ちゃんたちもリーダーの頭がネジで止まっていないのに『剣の精鋭』というまともな名前なんじゃからな」


 風香は『言われてみれば』と納得した。


「使いこなしている爺さんと戦っても進歩がないとは思わなかったな……」

「高志はよくワシと戦っていたからのう」

「へえ……」

「ただまあ。爺さんの場合は外見のインパクトにリソースを全部持っていかれてるんじゃないかって言われるときあるけどな」


 ムッキムキである重蔵の見た目のインパクトは確かに大きい。

 何を食べたらそうなるのかというより、何を食べてもこうはならないと思われる。

 とはいえ、重蔵としてはギャグ補正というスキルとの付き合いは長いのだ。


「馬鹿なことを言うな」

「いやでも、爺さんがおならしたら火山が噴火する程度じゃねえか」


 それは立派なギャグ補正の効果である。


「世の中には不思議なことがたくさんありますからね!」


 確かに未来から娘がやってくるのも不思議なことではある。


「さて、どうするかのう。正直な話、ワシと戦って何もわからんと思ってなかった。椿ちゃんは今のままでも問題がないとワシは思う」

「むむ。ですが、それでは神祖と戦えませんよ」

「まあ、こういうのは案外何とかなったりするもんじゃよ。もしかしたら今戦ってみたら何とかなるかもしれんぞ?」


 正直、高志と来夏がなぜ戦えたのかという正確な理由がまだつかめていない状態である。

 確かに正確なことはまだわかっていない。


「まあそうかもしれねえけど、それは何の解決にもなってねえぞ」

「そもそもギャグという概念に解決もクソもないわい」


 それを言われてしまうとどうしようもないというのが高志の本音ではあるが、確かに重蔵の言うとおりである。


「ギャグというのは自分なりの文化でもある。まあ、それさえ忘れなければ何とかなるじゃろ。ワシもかなりテキトーじゃしな」

「むう……いろいろわからないことがわからないままですが、これからも自分なりに見つけてみることにします」

「それでいいじゃろ」


 結論から言えば何もわかっていない。

 いつものことだ。


 だが、それでも神祖は出現するのだろう。

 最高神の神器を狙う神祖たちだが、人間でもある彼らの事情が変わらない保証はない。

 だからこそ戦うための手段が必要になるわけだが、高志と来夏が戦えているという情報に縋りすぎな気もするし、そもそもギャグならば、今あるものがすべてともいえる。

 そう考えるならば、わざわざ難しいことではない。


 ギャグにあるのは流行であって答えではない。


「いつでも相談に乗るから大丈夫じゃ。何ならワシが現れた神祖を殴り飛ばしてもよかろう」


 そういってムキムキの腕で力こぶを見せる重蔵。

 ……確かにすさまじいのだが、根本的な部分がだいぶアレなので、素直に喜べないというのが風香の心境だ。


(……うまくいかないね)


 最終的に何かを手に入れたわけではない。

 ゴリラが増えただけであった。

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