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第七百五十七話

 とりあえず外に出た。

 重蔵は『ちょっと待っとれ』と言って、何かを取りに行って、帰ってきたら長めの木の棒を持ってきていた。

 直径は五センチくらいで、長さが普通の槍を超えるくらいある。

 使いこなせれば様々な用途に使用できる武器。というカテゴリならスコップも該当するが、どうやら重蔵は棒を主軸にしたスタイルのようだ。


「むっふっふー!」


 この声だけで誰のものなのかが一発でわかるような気がするが、それはそれとして木刀を構える椿。


「素直な嬢ちゃんじゃな」


 そうですね。


「てか、こうして二人が並んでるとなんだかすごく体格差を感じるよな」

「外格差すごいもんね……椿ちゃんって体重何キロだっけ?」

「む?四十二キロですよ!」

「身長百五十センチで体重四十二キロって……だいたい中学一年生じゃね?」

「むうう!私はれっきとした中学三年生です!」


 頬を膨らませて主張する椿。

 事実ではあるがあまりそうは見えない。


「……ワシ、体重が百七十キロあるんじゃが」

「体重差四倍……」

「まあでも、重さが普通に一トンを超えるドラゴンとか椿ちゃん倒せるから問題ないだろ……多分」


 というわけで、椿が木刀を構えて、重蔵が棒を構える。


「行きます!」


 そう言って突撃する椿。

 木刀を横から薙ぎ払うように振るが、重蔵は棒でそれをがっしり受け止める。


「むっ!全然押し込めないです!」


 体重差四倍の話をガンスルーしてない?


「正直な太刀筋じゃな。ほら、もっとくるんじゃ!」

「むっ、遠慮しませんよ!」


 すばやく木刀を引き戻して、次々と連撃を叩き込んでいく椿。

 だが、棒で止められて全然当たらない。

 そして……重蔵は椿の木刀をほとんど見ていない。


「……あれ?重蔵さん。一体何を見てるんだろう」

「俺もわからん。ただ、ギャグ補正適用中は、痛みは感じても傷が残ることはない。ギャグ補正が盛大に発動されていたら、そもそも攻撃が当たらないってところまで行くんじゃないか?」

「うー!」

「沙耶は納得したみたいだな」


 ほんまか?


「しかし……爺さんの棒術は衰えてねえなぁ」

「ん?昔からあんな感じなのか?オレが見る限り、めっちゃ肩で息してるけど」

「え?」


 来夏がそう言うので重蔵を見る。


「ぜー、ぜー、ちょ、椿ちゃん。一体いつまで切り続けられるんじゃ?」


 確かに肩で息をしている。


「むふふっ!」


 椿は答える気はないようだ。

 微笑むだけで特に何かを言う様子はない。攻撃は最大の防御。当たるまで振れば勝てる。と言わんばかりの連撃数で木刀を叩き込む。


「なるほど、じゃが椿ちゃん。攻撃は最大の防御と思っておるじゃろう。だがそれは違う」

「?」

「疑問符を浮かべながら攻撃スピードが変わらんのはどういうことなんじゃろうな……まあそれはともかく……最大の防御とはなにかわかるか?」

「全自動反射ですかね?」

「そうではない……いや大体はそれでいいと思うが、最大の防御とは、己の体を限界まで鍛えることじゃ!」


 そういって、棒を放り捨てて、ムキムキの体でどっしり構える重蔵。


 ビシビシビシビシビシビシビシッ!


「いだだだっ!ちょ、ちょっとタンマ!いでででっ!」


 椿ちゃん容赦なかった。


「爺さん。馬鹿なのは昔から変わんねえな」

「ん?昔からあんな感じなのか?」

「よく死にませんでしたね」

「うー……」


 だんだん場が白けてくる。

 ……が、よく見ると、重蔵の体には傷が残っていない。


「むむっ!残ってないです!」

「くっくっく。そうじゃろう」


 連撃をやめて距離をとって観察し、驚く椿。

 ボッコボコに滅多打ちされた重蔵だが、傷一つ残っていない。


「どうじゃ、すごいじゃろう」

「うーん。お父さんは神器の影響で傷がすぐに治るので下位互換ですね」

「それと比べるのは反則じゃろ!」


 すごい、すごいのだが……秀星のほうがもっとすごい。

 単純にそれだけのことであった。

 が、それでは重蔵の面目が丸つぶれなので、どうにかしなければならない。

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