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第七百四十八話

 神祖の残念な現実……というより事実を知ったわけだが、今の『強硬派』の神祖たちが止まってくれるわけではないので、秀星としては準備するしかない。

 ただ気になるのは、椿が容赦なくズバズバ言いに行くスタイルなのに、未来で椿と会っているはずの神祖たちが、未来で椿に何の処置も施していないという点だ。

 なんだかこのまま適当にやっていてもいいんじゃないかと思わなくもないが、こういう場面で気を抜くと痛い目にあってしまうのが神祖というものである。

 神もまた人。

 であれば、当然のように神祖の中でも過激派と思われる人間は存在する。


 良いとか悪いとかそういう話ではなく、これは人として仕方のないことだ。


「しかし、ダンジョンに籠るやつが多いっていうのは普通の神と変わらんな」

「そうだな。とはいえ、隠れるにはもってこいの場所であるのも確かだ」


 秀星はアトムと話していた。


 神祖がもしも暴れた時にどうすればいいのか。という点に関していうとできることはそう多いものではない。

 ただ、彼らの目的が何となく見えたので、アトムには話しておかなければならないということで、アトムの執務室で話している。


「しかし、最高神の神器を持っているものを倒して、神器を収集するとは……口で言えば簡単だが、あまり凄いことには見えないな。そもそも秀星にもできる話だろう」

「そうなんだよなぁ……」


 下位神の神器しか持っていない秀星であっても、最高神の神器の持ち主を倒すことは朝飯前である。

 そう考えると、神祖の目的が大したことではないように思えるのだ。

 現在被害にあったという確認はされていないので、まだ動こうとしているだけで実際に動いているわけではない。


「神祖同士で戦えばいいのではないかという意見もあるが、おそらく神祖たちが最初に考えたことでもあるはずだ。何故それをしない?」

「神祖同士で戦って一位を決める理由がないからっていうこともあるだろうな」

「一位を決める理由がない?」

「ああ。というより……一位というものが決まってしまったら、『最強という名の椅子』が埋まってしまうから、それをめぐって何が起こるのかが神祖自身にも予測できないって話だったかな。俺が調べた文献では、それが原因で何度も次元が滅んでる」

「……何度も?」

「ああ、何度もだ」


 アトムが気になって口にした単語に対して頷く秀星。


「神もまた人。というわけか。不死の存在が歴史を他人事と考えるとはね」

「あまり期待するなよ。神が持っているのは思想であって答えじゃないからな」

「そうしておこう。それで最高神の神器が狙われるということは、私もその対象になるということか……」

「最高神の神器を持ってたな」

「ああ、私は三つ持っている。普段は剣しか使っていないが」

「まあ、アトムならそうだよな」


 秀星は頷く。

 アトムという人間を簡単に表すとすれば、それは『天才』だ。

 脳の処理能力も、運動神経も、いずれも高水準。

 加えて、判断材料がほぼなかったとしても正解を選び取る『感覚』

 どれをとっても天才と言っていいレベルだ。

 周りにいるやつがギャグ補正などというわけのわからないスキルを持っているせいで霞んでいる部分があるが、現代日本における魔戦士社会を維持する上で欠かせない人間なのである。


「実際、私が神祖と戦えばどうなる?」

「アトムの本気は知らないけど……勝つかどうかは知らんけど負けることはないだろうな。多分」

「勝つかどうかがわからない?」

「神祖は存在そのものが普通の人間ほど単純じゃないからな。そもそも神祖を倒すっていうのがどういう状態を指すのかわからん」


 実際、パライドに寄生されていたライズはギチギチに固められた状態で封印されていたが、要するに単なる封印でしかないのである。

 神祖……というより神は『神力』という独自の物質でできているのだが、次元最高の優先権を持っているこの物質を消滅させる法則はこの世に存在しない。

 どれくらい凄まじいのかというと、人間が死ぬとその魂は天界に運ばれる。言い換えれば『死後の世界すら現実に置く』ほどの力である。

 流石にその領域に立ってしまうと、秀星としても判断が困るのだ。

 最終的には封印という選択をするかもしれないが。


「……私の方でも警戒はしておこう。寝首をかこうという選択を取ってくるとは思えないが、神祖と呼ばれる者たちのハンティングゲームといえど、獲物は歯ごたえがある方がいいに決まっているからね」

「……アトム。ひょっとして暇なの?」

「天才だからね。最近は魔法を使ってほぼ一瞬で膨大な量の資料を作れてしまうから時間が余る」

「……官僚のなかで付き合いとかないの?」

「ゴルフをやればホールインワン。ボウリングをやればすべてストライク。ポーカーをやればロイヤルストレートフラッシュ。麻雀をやれば初手役満。いてほしいかい?こんなやつ」

「場の気温が二十度は下がるな」


 運もチート過ぎた。

 まさか周りが接待プレイをするまでもなく無双とは……。

 ……ゴルフとボウリングに関しては秀星も似たようなものだが。


「とはいえ、攻めてくるのならもてなすとしよう。我ながら、敵が少ない身でね」

「あっそ」


 実力はともかく、人間としての器という点に関して言えば、秀星よりもアトムのほうが大きそうである。

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