第七百四十一話
ものすごくタイムリーな感じでなったインターホン。
「あ!誰か来たみたいですね!」
そして椿が満面の笑みを浮かべてリビングから出ていく。
なんだかとてもホイホイ出て行っている気がしなくもないが、そもそもセフィアがいるので問題はない。
十数秒で帰ってきた。
「ピザの出前が届きましたよ~!」
「いつ頼んだの?」
てっきり神祖が来たと思ったじゃないか。
ピザの箱を手に笑顔の椿を見ながら内心でツッコむ秀星だが……。
「あと、家の周りをウロウロしていた人も連れてきました!」
「秀星。お久しぶり」
「……師匠」
群青色の髪を伸ばして、赤いブレザーの制服を身にまとう感情のこもっていない顔をする美少女を連れてきたようだ。剣術神祖ミーシェだけど。
……神祖いたのかよ。
「こ、この人が、秀星君の師匠なの?」
「ああ、剣術神祖ミーシェ。俺が異世界で剣を習った人だよ」
「神祖って……」
風香が驚いている。
まあ、急に現れたのとほぼ変わらないのでそりゃそうなる。
「とにかく!まずはピザを食べましょう!」
「ごめん、最初の質問に戻るわ。いつ頼んだの?」
「三十分前くらいに頼みましたよ?何となく出前でピザを食べたくなりました!」
「そうか」
ピザを食べたいというだけならセフィアに頼めば二秒で作ってくれる(事実)。
だが、『出前で』となると話は別だ。
しっかり電話で注文する必要がある。
「というわけで、食べましょう!」
はしゃぐ椿。
……ちなみに、中身は普通のチーズと肉がモリモリのっているボリューミーな奴だった。
★
「で、ミーシェさんはお父さんの師匠なんですね!」
「そう、異世界で秀星に剣を教えた」
「おー!未来で神祖に剣を習ったといっていましたが、本当だったんですね!」
「別に嘘をつくようなことでもないと思うけどなぁ……」
ピザを食べ終わって、ごみをセフィアが片付けて、早速椿がミーシェに聞いている。
何か感激しているようだ。
「秀星。この子。本当に秀星の娘?」
「ああ。俺は見ただけでDNA鑑定できるからな。歴とした俺の娘だ」
「……とてもそうには見えない。母親は風香?」
「むむ!私は歴としたお父さんとお母さんの娘ですよ!胸を揉んだ時に私とお母さんはそんなに感触が変わりませんからね!イダダダダダダダ!」
掌でガッチリと頭を掴まれた状態で全開の握力に悲鳴を上げる椿。
「……なるほど」
椿と風香の胸部を見比べて頷くミーシェ。
そして自分の胸を見て沈黙する。
決して小さいというわけではないのだが、椿や風香と比べるとそうでもないという印象が……。
「まあ、そんなことはいい。秀星。神祖が動き始めているのは知ってる?」
「実際に動き始めているのかどうかはまだ認識していなかったが……」
「なるほど、実は私もそう。パライドに言われるまで全然わからなかった」
無表情だが若干どや顔になるミーシェ。
正直、そんな顔ができるような状態ではないのだが、そのようなことはミーシェには関係ない。
何となく出来そうだったからやった。ただそれだけである。
「そういえば、私がこの家に入ってきてもライズが何も言わないとは……」
「今は寝てるぞ。調べ物が多いみたいだからな。自分の身に危機が生じない場合は起きないだろ」
「なるほど、ライズらしい」
ミーシェの様子を見る限りいつもそのような感じらしい。
まあ、家に置いている秀星から見てもそう思うことが多々あるので、昔からの付き合いであるミーシェからすれば当然なのだろう。
「あと……神兵大学のエリートが一体何の用?」
リビアの方を見るミーシェ。
「神祖の力が地球で振るわれたら、さすがに面倒なことが多々起こりますからね。その対応です」
「なるほど。私が力を開放しても問題がなくなるよう、頑張るといい」
「師匠が本気出したら地球が輪切りになるからやめてほしいんだけど」
「むぅ、自重する」
つまらん。と言いたそうなミーシェだが、こればかりは守ってもらわないと秀星としても寝られない。
「ただ、神兵大学から生徒が来ているとなると、全知神レルクスが見た未来はかなり厄介なものになっているはず」
「俺もそれは考えてたんだよなぁ」
全知神レルクスが命令や援助をする場合、それは予測という範疇を完全に超える。
これからどうなるのかは不明だが、きっと、面倒なことになるのだろう。
戦う人材の筆頭が秀星自身というのがまた嫌な話である。




