第七百三十八話
基本的に神兵と呼ばれる存在がいる。
神々が地球から良い素質を持っていると判断したものに自分の力をちょっと分け与えることで、神の力を少し宿す人間となる。
そういったもの達は基本的に天界に行って、同じく神に選ばれたもの達があつまる教育機関で新兵としての教育を受けて、修了すると様々な神のもとで任務をこなす。
この時、自分に力を与えた神のもとにつく必要はなく、比較的自由に行くことができる。
まあ神としても、最低限のノルマのために人間に力を与えているケースが多く、真面目に吟味して選んでいるようには見えないのだが、それはそれとしよう。
「椿さんは二十年後の未来からやってきたんですね」
「はい!」
コミュニケーションに困ったら椿に任せると大体どうにかなる。
聞きたいことを聞いていくし、聞きたいことがなくても自分に話題がたくさんあるからどんどんしゃべるタイプだ。
常に無表情で感情がこもっていないように見えるリビアだが、椿とはしっかり喋っている。
「で、大体どんなことが起こるって想定してるんだ?」
秀星が聞いてみる。
リビアは眼鏡のブリッジを右手の中指で上げたあと説明する。
「まだ確定ではない。ただ一つだけ言えるのは、普通の神が相手ならば、私がそもそも派遣されることすらない。第一世代型の最高神、または神祖が相手になるのはほぼ確定」
「まあ、それは何となくわかってたけど……」
きいてみるとまあ嫌な話である。
「……リビアって、最高神とか神祖とか、相手にできるの?」
「第一世代型の最高神はギリギリ戦える。でも神祖は無理」
「……」
要するに戦うのは秀星ということだ。
いつものことだが。
(敵がインフレしすぎてて戦うのが大体俺になってるんだよなぁ。もうちょっと周りのレベルを引き上げることも必要か……)
今更である。
「私は基本的に、知識面からあなたの手伝いをするようにと言われている」
「ほう……」
正直、次元矯正学部という名前なら戦闘力よりも暗躍する才能の方が求められると思ったのだが、どうやらそういうわけではないらしい。
「戦うのはあなたになるけど、これは任務の前からわかっていたこと、どうか了承してほしい」
「まあ、はい。戦いますけどね」
面倒だとは思うのだが、今までさんざん準備は進めているのだ。
別にそれらが無駄になったところで、『地球は平和です』で終わるからいいのだが、ここまでお膳立てをされてしまうとほぼ来るのが確定である。
超絶面倒だが、それで何かが変わるわけではないので秀星は黙って戦うしかない。
「というわけで、これからよろしく。私は出来る限りの協力はする」
リビアが無表情のままそういった。
正直……何をどこまで本気で考えているのか、さっぱりわからん。




