第七百十八話
「お、椿ちゃんお帰り」
あれからまだボスモンスターを討伐していない『派閥』
マスターキーと髪飾りを手に入れたことで、ダンジョン内部での大量のポイントチケット獲得と、ダンジョン外部との連携を達成して、着々と進めていた。
一応、モンスターが出るので交代で見張りをすることにして、一応『集合場所』と定義した場所がある。
そこには、国枝と亮真が待っていた。
「むふふ~!ものすごく集まりましたよ!」
大きなジュラルミンケースを開く椿。
そこには大量のポイントチケットが入っている。
もちろん、一万ポイント券を百枚ずつ束にしたしっかりしたものである。
「おお、すげえな椿ちゃん」
「やはり、髪飾りを真っ先に手に入れたのは正解だったね」
亮真と国枝が頷く。
「しかし、国枝もよく考えるよなぁ」
亮真が唸るようにそう言った。
「まあ、効率よくチケットを手に入れる方法もまた用意されているからね。真っ先に狙うのは常識だろ」
そう主張する国枝。
実際のところ、国枝は英里にとある計画を提案したのだ。
その計画は雑に言えば、『預金通帳を持っている英里がセフィコットから低金利で大量にチケットを買い集めて、とにかく髪飾りを落とすモンスターの情報を仕入れて、討伐し入手すること』である。
椿を見ていればわかるように、髪飾りは生徒たちに圧倒的な恩恵をもたらす。
そのため、『一刻も早く手に入れる』か『誰かが入手した場合の対策を立てる』かのどちらかで、国枝は明確に『一刻も早く手に入れる』ことを優先した。
そのために高額なボスドロップ情報を買い集める。
その資金は借金をして手に入れて、ボスの情報を買う。
そして手に入れた髪飾りを落とすボスモンスターを速攻でボコボコにして、髪飾りを手に入れたのだ。
髪飾りを手に入れたあとでスポーツセットをセフィアが椿に献上したのは想定外だったが、チケットが増えることは間違いない。
加えて、国枝はいろいろ考えることがあったので、『とりあえず椿ちゃんは走ってきな』といって、なんの疑いもなく走り始めた椿を見送っていろいろ考えていたのだ。
結果的には『でかく使ってでかく稼ごう作戦』が成功した結果だろう。
まあ、仮に椿が倒されて髪飾りを取られたとしても、国枝が直々に回収に行くつもりだったが。
……椿は知らないけど発信機つけてるし。
「あっ!そういえば、ここに戻ってくる途中で黒馬先輩に会いましたよ!」
「黒馬先輩!?」
国枝は驚いた。
思ったより近くにいるということでもある。
まあ、元気一杯の椿は文字通り走り続けることができるわけで他の生徒は違うだろうが、黒馬は闇を使って体を浮かせてそのまま高速水平移動ができるのだ。かなりシュールだが。
「で、なにか持ってた?」
「む〜……ネックレスをつけてました!」
「うわっ、最悪」
表計算ソフトを頭に搭載している人間が、正確な情報を知る手段を手に入れているとか反則だ!
と思う国枝だが、ルール的にはなんの問題もないので自分のツッコミはスルー。
「あと、黒馬先輩にアドバイスをもらって、かなり多めのチケットをインゴットに換えました!これで税金としてチケットを抜かれることはありませんよ!」
そういって別の袋を取り出して、金……にはみえないとてもきれいな色の金属のインゴットを取り出す椿。
「思ったよりインゴットは少なめだね」
「最初は手持ちのチケットをほとんどインゴットにしようと思ったんですけど、ものすごく重かったのでやめました」
それもそうだ。
「というわけで、いっぱい集めてきたのですよ!」
むっふーーっ!と胸を張る椿。
「おーよしよし。頑張ったね〜」
国枝はとりあえず頭をなでておくことにした。
「えへへ♪ん〜♪」
気持ち良さそうにしている椿。
「で、国枝。英里先輩の借金は返せるのか?」
「むしろ十分すぎるほどだよ。他のボスの情報も買えるくらいにね」
「買ったほうがいいのか?」
「良いか良くないかで比べるなら買ったほうがいいさ。特に『免税保証書』は欲しいね。課税保証書が力を発揮していない段階で手に入れておきたい」
「わかった。ポイントは大量に集まってることと、国枝が免税保証書を入手すべきだって考えてること、英里先輩に伝えてくる」
そういって、亮真は走っていった。
「さて、椿ちゃん。いろいろ覚悟決めようか。ボスモンスターが出現して三時間。そろそろひっくり返る頃だよ」
「おおっ!楽しみです!」
どんなに面倒な状況になるとわかっていたとしても、椿は笑顔で、元気一杯だ。
それをみて、国枝は思う。
(何がどうなるとこんなふうに育つんだろうなぁ)
慣れてください。




