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第六十九話

「せっかく……人がやる気になってたのに……」


 秀星はスマホの液晶を見てプルプルし始める。

 そこには、こんな内容のメールが来ていた。


『秀星君。沖野宮高校の魔戦士事情に、アストログラフが喧嘩を売ってきたよ!生徒会長さんは買ったみたいだから、すぐに出ることになると思うよ!』


 これが雫から送られてきたメールだ。

 セフィアが近くで笑いをこらえているのが分かるのだが、それでも秀星は叫ばずにいられなかった。


「なんでこんなジャストタイミングで喧嘩を吹っかけてくるんだ!せっかくの人のやる気を暴落させるようなことしやがって!なめとんのかゴルア!」

「ブフッ」


 セフィアが珍しく吹きだした。

 あまりないシーンだったりする。


「くっそー……せっかく敵陣本部にいきなり乗りこんで大暴れしようと思ってたのに、学校がそういう雰囲気になっちまうからなぁ……下手に暴れると俺がいろいろ言われるし……はぁ」

「秀星様、日時はどうなっているのですか?」

「明日が土曜日だから、どこかの地下施設を使ってやるらしいな。流石に魔法社会のことだし、表には出せん」


 という感じだ。


「試合形式だが、お互いに十人ずつ出しあって乱戦だとさ……」

「お互いに十人ずつ……一人ずつ出しあうわけではないのですね」

「まあ、一々紹介だの宣言だのって面倒だしな。それに、アメリカの連中は魔装具の研究によって兵器みたいなのを作ってきた連中だ。一人ずつよりも、横に並んで弾丸をばらまく方がいいんだろ」

「知っていました」

「ですよね!俺もしゃべってる途中からそんな感じだと思ってたよ!」


 なんか……最近セフィアが辛辣。


「さて、十人を決める必要があるし、今日の放課後は居残りだな」

「……ほとんどメンバーはこの時点で決まっていますね」

「俺もそう思うんだよね」


 ★


「想定通りって言うか、たぶんこうなるんだろうなって言う感じはしてたけどな」

「別に悪いわけではないのだからいいだろう」

「十人……多いのか少ないのかよくわからないけどね」

「アメリカの魔戦士は魔装具が強力ですよ」

「フッフッフ。私はどうなったとしてもウェルカムだよ!叩き潰せばいいんだもんね!」

「「「物騒にもほどがあるわ!」」」


 秀星は呆れ、羽計は諦めたように溜息を吐いて、風香は思案顔をして、エイミーは重要事項を言っているような雰囲気で、雫は作戦と言う言葉を放棄するかのような発言をして、ツッコミ三人組がやけくそになった。

 八人で生徒会室に向かっている。

 そしてなんと……全員が秀星のクラスメイトなのだ。インフレしすぎである。


「それにしても、顔面偏差値がおかしくねえか?」

「羨ましい。羨ましいけど……」

「無理だな。中身が」


 ツッコミ三人組も、キャラが濃い女性陣はもういろいろな意味でお腹一杯なのである。


「ていうか、なんで俺らって呼ばれたんだ?」

「知らん。生徒会長から説明が来るだろうからそれを待ちなさい」


 予想はできるけど。

 そんなことを話していると、生徒会室に到着した。

 秀星がノックをした。

 すると、生徒会副会長の古道英里が『血がべっとりついた棘付き棍棒』を右手で引きずりながら左手でドアを開けた。


「いらっしゃいませ」

「「「いやいやいやいや!本当にマジでどうなってんの!?」」」


 秀星としても想定以上……というより特殊な意味で想定外だ。


「あ、これですか?会長の血でぬれているだけなので気にしないでください」

「これから会う人の血で濡れてるの!?」

「尚更怖いわ!」

「明らかに状況を受け入れるのに無理があるんだけど!」


 だが、入り口でしゃべっていても仕方がないので、入ることにする。

 するとそこには……。

 頭から血を流してデスクにうつ伏せになって倒れている会長がいた。


「「「「会長---------!」」」」


 叫び声に秀星も混じった。


「え。あれってどうなってんの?」

「仕事に忙殺された会長が、何を血迷ったのか私のパンツの色を聞いてきたので、腹が立った私が制裁を加えただけです」


 怖い。

 と思っていたら、会長が起きた。


「うむ……来たのか。で、この大量の血糊(ちのり)はどういうことだ?」

「「「血糊かよ!ドッキリにもほどがあるわ!」」」


 ツッコミ三人組が大活躍だ。

 秀星はぶっちゃけ、楽なのでうれしいです。


「あ!英里!制服のシャツ買い換えたばっかりなんだぞ!なんてことをしてくれる!」

「会長がアストログラフと交渉している間。たまっている仕事を私に押し付けたじゃないですか」

「だからってシャツを汚すことないだろ!」

「シャツを汚す程度で済んでよかったじゃないですか」

「五月蝿いわ!はあ……ちょっと着替えてくるからお茶でも出していろ」

「分かりました」


 生徒会長が部屋を出ていった。

 その数秒後。


「きゃあああああああああああああああああ!!!!!」


 女子生徒の悲鳴が教室を貫いた。

 気持ちはよくわかる。

 どこに向かっているのか秀星は良く知らないのだが、いずれにせよ、誰にも見つからずにたどり着ける場所ではないだろう。

 いろいろと災難である。


「お茶をいれたのでどうぞ」


 既に八人分のお茶を入れている英里。

 ……思った以上にスペックは高いのかもしれない。と秀星は感じた。

 ソファも増えていたのでしっかり全員座れる。

 試しに飲んでみるとおいしい。


「……美味いな」

「サターナでバイトをしていたことがありまして、その時に店長に教わりました」


 師匠は道也か。

 料理はすごかった記憶がある。

 お茶一つにしてもすごいのか。かなり差を感じる。


「おいしいね」

「うむ」

「ほっこりしますね」

「すごいなぁ、私がお茶を入れたら、お兄ちゃんに『取れたてのゴーヤを丸ごとかじっているみたいですね』って言われたんだけど」


 それはもう苦いお茶とかそう言うレベルではなくただのゴーヤである。

 しっかりと茶菓子も出てきた。


「え、このお菓子も手作りなの?」

「いえ、サターナに電話してテイクアウトしました」

「え、お持ち帰りのご注文って可能なの!?」


 なんと店長の妹である雫が知らなかった。


「こちらがどんな茶葉を使ってお茶を入れているのかを教えると、揃えて用意してくれましたよ。アバウトな注文でもしっかり受けてくれるので助かっています」

「え、常連?」

「生徒会長の軌道修正が忙しいのでテイクアウトだけですが、良く利用しています」


 ……こんなつながりがあったのか。

 というか、軌道修正って一体……。

 そして一段落付いたころ、会長が戻ってきた。


「ふう、ひどい目にあった。あっ!それサターナの菓子だろ!」

「なんで分かるんですか?会長」

「食べたことあるからな」

「あ。なるほど」


 まあ、副会長である英里が買っているのなら、会長である宗一郎も買っている可能性もある。


「私も食べていいか?」

「ダメです」

「え、ダメなの?」

「クオリティは高いですがお手頃価格なので自費で購入してください。会長に恵んでやるものは何一つありません」

「「「辛辣……」」」


 ツッコミ三人組も、英里のことがだんだん怖くなってきたのか、声量を抑えている。


「そうか」

「「「納得するんかい!」」」


 でも会長は怖くない。


「まあいい。そろそろ話を戻そう……いや、そもそも最初から入っていなかったから戻すも何もないが、一応ここは戻すということにして、早いところ話を済ませようか」


 ソファに座る会長。


「メールを読んで分かっていると思うが、アメリカの魔戦士チーム、アストログラフから挑戦状が来た。向こうが勝てばいろいろと権利やら素材を持って行くとかそんな感じのよくある内容だ」

「え、よくあるの?」

「ある。で、こちらも十人を用意することになったが、学生に限定してきたからな。『ぶっちゃけもうこいつに任せておけばいいか』という枠が一つと、数合わせの七人というわけで君たちを呼ばせてもらった」


 いろいろとぶっちゃける感じだな。


「実のところ……」


 会長はツッコミ三人組を見る。


「実力だけを見るならば、君たち三人よりも強い魔戦士はこの学校にもいる。だが、そいつらがめんどくさがったり、病気だったり、トラックにはねられていたり、アフリカゾウを探しに行っていたりしていて私も説得するのが面倒だったから君たちを呼ばせてもらった」

「「「この学校どうなってんの!?」」」

「何を言っている。九重市は日本の中でも十番以内くらいの速さで魔法社会の発見と研究を積み重ねた場所だぞ。変人が多いに決まっているだろう」

「「「そりゃどうせみんなギャグ要員だもんな!」」」


 ……もうやだ。


「で、なんで俺たちを呼んだんだ?ぶっちゃけ、一年って言っても俺ら以外にいるだろ」

「……どうせ暇だろ」

「舐めてんのか!?」


 話が進まない。


「会長、そろそろボケるのは終わりにして話を進めてください」

「……そうだな」


 頷く会長。


「でも正直作戦だって考える必要もないのに何の意味が……あ、ごめん、ちゃんとやるから棍棒を下ろしてくれ」


 脅迫されたみたいなのでしっかり話し始めた会長。

 そこからはまあ、それなりにまじめであった。うん。

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