第六百八十六話
「あ、おかえり!」
天窓学園の敷地に戻ってきた秀星。
バスがすでに校門に見えるので、どうやら……秀星は時間転移の設定をミスったらしい。
「俺、転移した元の時間に戻ってくるはずだったんだけどな……」
「過去を変えたからいろいろあったんじゃね?」
「その範囲も計算したはずなんだが……」
「まあ、そんなこともあるって」
ハッハッハ!と笑う来夏。
空間での転移は散々やっている秀星だが、時間の転移はまだ慣れが足りないらしい。
と自分を強引に納得させる。
「そういや、聡子が『いったいどこに行ったのかしら』って驚いてたぞ」
「あ、同じ時間に戻ってくると思って完璧に連絡忘れてた……まあいっか」
「聡子も大して心配してなかったし、問題ねえだろうな」
それでいいのか。と思われるかもしれないが、神器使いは大体そんなものだ。深く追及しても仕方がない。
「あ、それと、アレシアと羽計と千春とエイミーと雫の脱退の申請が済んだぞ」
「俺がいない間に何やってんの?」
「だって秀星がいてもいなくても結果変わらねえじゃん」
「……」
秀星は来夏をジッと見た。
……来夏が目をそらした。
これは……『来夏の方が我慢できなくなった』といったところだろう。
「なあ来夏。いろいろサプライズとか考えてたんだろ」
「そうなんだよ。だけど、五人ともなんだか遠慮してるっていうか、どういいだせば全然わからないからって、そわそわしながらオレの方をチラチラ見てくるんだ。こっちはいろいろ考えてるのに、ありゃ生殺しだろ」
「ゴリラが何言ってんだ……」
まあ、変にソワソワしている美少女五人と、ムラムラしているゴリラがいるとなればすさまじい絵面になるので、そんなものでいいのかもしれない。
「思ったより簡単に済んだのか」
「ああ。オレが五人全員を集めて『言いたいことは分かるな』って言ったら全員が頷いたから脱退書類にサインしてもらった。で、オレは『みんな頑張れよ』って言った。以上」
「簡単すぎる……」
その時の五人の心境はどうなっていたのだろうか。
少し気になるが聞いても教えてはくれないだろう。
「で、その五人は」
「今は普通にいつものメンバーで話してる。これまでと変わらないぞ」
「抜ける意味、本当にあるんだろうか」
「二重所属は法律的に無理になってるからな。まあいいんじゃね?オレが一番気にしてないからな」
「……」
思えば、別のチームであるユニハーズのリーダーの高志と散々駄弁っているので、確かに突っ込んでも仕方のないことだ。
所属から抜けるということに対して、剣の精鋭のメンバーが特別な感情を持ちたいと思っただけなのだろう。
それに対して、来夏がどこ吹く風といったように空気をかき回して、『ほい!脱退決定!』となってしまったので、その五人もやけくそになったのだろう。
「これでいいのかね?」
「いいんだよ。『剣の精鋭』はオレのチームだからな!」
腰に手を当てて笑う来夏。
こういうのを見ていると、秀星としてもなんだか突っ込む気が失せてくるので不思議だ。
「つーわけで、オレたちも帰ろうぜ」
そういってバスに向かって歩いていく来夏。
その背中を見ながら、『これが……諸星来夏かぁ……』と、何となく思う秀星だった。
大きな意味はおそらくない。




