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第六百八十二話

 風香が最初に到着する。


 そしてもちろん、ゴールが決まっている以上、生徒たちは着々と山頂にたどり着いている。

 ちなみに、ルート上の問題で、山頂に着く段階でラターグたちを発見した生徒たちもいるのだが、その場合は、秀星が作った立て札を読んで外れて行く人もいる。


 ……ラターグとシカラチに下手に近づいていいことは多分ないと思われるので、秀星は『この人たちは日向ぼっこをしに来た人たちです。起こさないようにしよう!』という立て札を作ったのだ。


 ちなみに近づこうとする場合はマスコット・セフィアがその生徒を連れ戻すことになっているので、ラターグたちに接触する生徒はいない。

 ……まだまだ、生徒たちではマスコット・セフィアにかなわないということだ。どういう力関係なのだろうか。一応マスコット・セフィアは神器によって作られたが神器ではない。

 とはいえ、そこは秀星クオリティということで、なんとか食い止めているのだ。


 扱いの困るラターグとシカラチはそっとしておいた方がいい。

 それは絶対そうに決まっている。

 ……と、秀星は判断する。


 ラターグとシカラチに関することはもうそれで放置するとして、風香が真っ先に他の生徒の補助に動いたことで、その後で山頂についた生徒は、自分たちの方法で他の生徒を助ける方針にしたようだ。


 もちろん、助けに行く必要が『絶対にある』というわけではない。

 剣の精鋭メンバーは聡子に挑発されたものの、それは剣の精鋭メンバーは全員が自力で山頂にたどり着けるとデータでほぼわかっているから言われただけで、中には山頂にたどり着くだけで精いっぱいという生徒もいる。

 モンスターが出る山というものは緊張感が普通の山とは違いすぎるので、山頂についた時点でぐったりしているものなのだ。

 むしろ余力がある方がおかしいのである。

 そのため、山頂付近の木の上でティータイムなどしている秀星は頭がおかしい。


 余力があるメンバーが他の生徒を助けに行くということになるので、他の生徒を補助するのは、生徒たちの中でもかなり優秀と言われるもの達だ。

 もちろん、剣の精鋭メンバーは全員が含まれる。


 単なる試験ではあるものの、協力するということが挑発されてまで求められるのもなかなかアレなケースだが、そういうことをここでツッコんでも仕方がないので話を進めよう。


 ちなみにこの山。山頂だからと言ってモンスターが出てこないというわけではない。


 とはいえ、生態系を崩さない範囲で『本当に強いモンスター』はフルボッコにして追い出しているので山にはおらず、生徒たちでしっかり役割を分担すれば楽々と守れる。


 というわけで、山頂で陣形を組むメンバーと、他の生徒たちの補助に行くメンバーに分けられる。

 一見、山頂で陣形を組む方が楽そうだが、そうはいかないのがこの山だ。

 道中は猿がいっぱいいたが、山頂付近になると彼らのリーダー格が姿を現す。

 そして、彼らを倒そうと他の猿を引き入れて集団で進行してくるのである。しかもかなりの頻度で。


 というわけで、山頂で陣形を組むメンバーもそこそこ必死になるわけだ。

 とはいえ、他の生徒を無理に助けに行こうとすることは、それこそ意味がない。


 結果的に、山頂についてもある程度の緊張感は必要である。

 もちろん、本当に生徒たちがヤバくなった時はマスコット・セフィアや秀星たちがそれをどうにかするのだが、何となくわからないように助けているので、生徒たちは助かったのが偶然だと思っている。

 宗一郎が暴露した英里たちの『派閥』はそうではないし、剣の精鋭メンバーの中にはその存在に気が付いているものもいるのだが、そういったもの達はちゃんと自力で山頂まで行けるような生徒なのでこの話ではノーカン。


 しかし、山登りはそろそろ終わる。そういう段階である。

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