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第六百五十九話

 連携を重視して挑戦しよう。そう考えた両校の生徒たち。

 それそのものは悪いことではない。

 強大な敵がいるとして、そしてそれを倒すことにメリットがあるとすれば、協力して戦うことは何も悪いことではない。ゲームなら何度もやっていることだ。


 お互いに持っているアイテムを確認し、必要そうなものがあれば購入する。


 ……ちなみに、『売られているアイテム』と『まだ残っているアイテム』を比較すると、聡子やアトムたち『バトルロイヤル運営部』が用意したものがほとんど残らなかった。

 彼らが用意したものよりもスペック面では劣っているアイテムももちろんあるのだが、性能・バランス面で優れているアイテムが数多く揃っているため、こうした結果になっている。

 ただそれに関してはそれ以上ツッコまないようにしよう。運営部の沽券にかかわる。


 ただ、いろいろ気を付けるべきところがあるし、気が付かなければならない部分がある。

 しかし、一人では気が付けないことであっても、二人以上いれば気が付くことだってある。

 ボスキャラである四人を倒した場合、その時の参加メンバー全員が加点されるルールになっている。

 まあそもそも、一人しかポイントが入らないシステムだったら轢き殺されて終わりなので仕方のないことだ。


 とある作戦会議。


「なあ、お前のその剣、『シャドウ・スレイヤー』っていうアイテムだっけ?」

「ああ。一見普通の紫色の直剣だけど、『死角を突いて攻撃でき、クリティカルが出やすい』って説明文がある」

「じゃあ、『クリティカルヒットダメージアップ』の性能を持ってるやつが別にいるし、組み合わせればかなりのダメージを与えらえるんじゃないか?」

「可能性はあるな。よし、早速フォーメーションの作成を……」

「あの、ちょっといいかな」

「なんだ?」

「死角を突いて攻撃できるっていうけど、それって、どういう感覚なの?」

「うーん。なんかこう。相手の死角になってて、相手がすぐには反応できないエリアが薄く発光して見えるんだよ。そこをついて動こうとしたとき、剣のサポートが入って速く動けるんだ」

「すげえな。地味だけど確実だ。で、それがどうかしたのか?」

「それって……『死角がない場合』はどうなるの?」

「……」

「……」

「……ボツだな」

「そうだね。ただ、純粋に剣のスペックが高いし、この剣を持ってるだけで意識してくれる部分はあると思うよ。よく通る声が出せる人に叫んでもらうっていう手もあると思う」

「人間は意図的に全体を見ようとすると、かえって全部雑になるもんな。それに集団行動が前提だし、ボスのところにつくまでに他の生徒に遭遇した時、その剣を持ってると有利になる。売るなよそれ」

「わかってるって」


 ……とまぁ、このような感じだ。

 一人しかいないと、自分の限界を自分一人の力で決めてしまう。

 だが、人間の視野の広さなどたかが知れているので、他の生徒に何か意見を求めるだけで何かしら意見が帰ってくる場合もある。

 特にこの手のゲームになれているものがいればもっといいのだが、そこまで望むのは酷というものだ。


 ただ、こうした発見と指摘、そしてサブプランへの移行など、様々な議論を重ねて教会を出て、そして集合した彼らにとある問題が発生した。


『来夏がどこにいるのかわからない』


 来夏はフィールドボスだ。

 そのため、その場にいる生徒たちを倒した後は、別の場所をウロウロする。

 何かあればバールで直来してくるのだが、特に面白そうなことが何もない状態でそんな乱入をする性格ではない。

 というわけで……。


「で、俺のところに来たわけか」


 天窓学園のメンバーが向かったのは秀星のところだった。


「まあ多分、基樹は同じ学校の生徒だから挑もうと思えばいつでも挑めるし、こっちの生徒会長か俺ってなった時、俺の情報の方が検索結果が多くて参考になるものがあったってところか」


 秀星は基本的に情報を発信するタイプではないが、全くではない。

 そして、宗一郎は秀星を超えるほど情報の秘匿性が高い。

 神器使いではあるが、その性能が知られてしまうと、他の神器使いから出し抜かれることも多いからだ。

 秀星はそのあたりの危機感が緩いので情報を発信する。


「それだけじゃない。あのマスコットにポイントチケットを払って、俺たちはお前の情報を手に入れた」


 『セフィアが独断で話していいレベル』のことなら、おそらくポイントチケットをそれ相応に積む必要があるが買えなくもない。

 これは秀星が『できる限り要望に応えるように』といったからである。

 ただし、教会とか部屋とかダンジョンを直接弄ると聡子やアトムからいろいろ言われそうなので、そのあたりの部分は秀星としても制限させているが、セフィアにとって他人である基樹や宗一郎はともかく、『主人である秀星の情報』であれば、ある程度セフィアに裁量権がある。


 セフィアから何も連絡がなかったが、別にそこを攻める気はない。


「なら、見せてもらおうか」


 秀星としても初っ端から神器を使うつもりはない。

 指パチンで鉄の剣を作って、それを構える。

 その瞬間、紫色の直剣を構える生徒の表情が驚愕に包まれたが、秀星はその生徒が持っている剣を見て納得する。

 軽く『視る』ことで大体わかるのだ。

 さすがに鑑定スキルまで使って知りまくるのは大人げないのでやらないが、その程度の『視覚資報』にとどめておけば、セフィアが作ったフィルターの関係上面白いのだ。


「さて、かかって来い」


 秀星が歩きながら彼らに近づいていく。

 まずは遠距離攻撃の生徒たちが、銃や弓を構えて秀星を狙う。

 秀星はそれらをすべて剣ではじいた。

 しかし、即座に煙幕が発生。

 視界が煙に覆われる。


(煙幕は発生するが、殺意も闘気も俺に向いていない?)


 秀星は一瞬疑問に思う。

 だが、その疑問は一度捨てて、剣を真横に一閃。

 そのまま煙が晴れた。

 視界の端に、アタッシュケースを抱えた『特殊なブーツ』をはいた生徒がすごいスピードで走り抜ける。


(アタッシュケースにポイントチケットが入っているという情報をセフィアから買ったのか)


 秀星、そして彼自身がセフィアを介して教えた宗一郎と基樹しか『確実な情報』を知らない。

 だが、秀星が知っているということの内、大体はセフィアも知っている。


「まずは必要経費分の回収か」

「アンタを倒せば、この部屋にあるケースは総取りだろうけど、正直勝てねえからな。もちろん勝ったら膨大な加点ポイントが入るけど、それで狙うならお前は狙わない」

「なるほど、要点をしっかり押さえて考えられる奴がいると楽しいだろうなぁ」


 秀星は左右から二人ずつ、盾持ちと剣を持った生徒が向かってきていることを認識して、持っている剣を地面に突き立てる。

 そして、両手で拳を作って、そのまま裏拳のように両方に振った。

 当然、秀星の腕の長さは特別長いわけではないため当たっていない。

 だが、圧倒的な勢いで叩かれた空気と魔力が、盾持ちを吹き飛ばし、剣持ちを巻き込んで横に吹っ飛んでいく。


「小細工をしてるつもりはないだろうけど、四人で抑えられるほど俺は甘くないぞ」

「だよな……」


 天窓学園の二年生のようだが、どうやらこの集団のリーダーらしい。

 よく見れば、この場にいる二十人は全て二年生か一年生だ。

 三年生がいないが、まあそんなこともあるかと判断する。


「なら、できる限りの総攻撃だ!とりあえずどれくらい通用するのか試すぞ!」


 リーダーの生徒がそういうと、それぞれが武器を構えなおした。


(ふーむ……まあ、『試す』って時に俺を基準にするのはどうかと思うが……)


 ただし、指示そのものはよく通る声だ。

 そしてそれに対して、全員が不満を持っているように思えない。

 人望があるようだ。


(あと気になるのは……明確に『成果』につながらないが、過程を重視する場合必要な行動をする生徒がちゃんといるな)


 要するに『主力とは言えない種類のアイテム』を持っているものが、主力のアイテムを持つ生徒たちのバックアップやサポートをしっかりこなしているということだ。

 ただし、『活躍したい』『認められたい』と思うのが人間だ。

 こういう戦いになると、『一位になれなくてもいい。ただビリにはなりたくない』と焦って他人の足を引っ張ることが多いはず。

 だが、しっかりと役目をはたしている生徒が多い。


(後でもめるんじゃないか?これ)


 実は、秀星たちボスは圧倒的な強さであり、加減もかなりするが、それでも一般生徒たちに勝てるような実力ではないので、『そこそこ戦う』だけで加点ポイントが『かなり』入るようになっている。もちろん『膨大』とは言えないが。

 そしてその加点だが、戦った生徒たちで話し合って分配することになる。

 そのシステムを決めたのは運営部だが、この『加点』に関しては戦った生徒たちで決めることになるのだ。上から『お前はこれくらい活躍したからこれくらいな』と指示されるようなものではない。

 そもそも『活躍』だけで判断してしまうとどうしても納得できない人間が出て当然だ。


 ただ、この『話し合って分配する』となった時、明確に成果がある生徒とそうでない生徒の印象は差が出るもの。


(いったいどうやってその意見をまとめてるんだ?確かに他人のために行動することは必要なことだが、言葉だけで説得できるようなものじゃないだろ)


 秀星にはわからない。

 自分がただ強い秀星には、その『視点』がない。


 もちろんこれにも理由はある。


 彼らは今回、セフィアからとあるものを買っている。

 それは『契約書』だ。

 要点をまとめると、


『契約書に著名した二十人の生徒をチームとして成文化すること』

『このチームは、ボス生徒に挑んで手に入る加点の分配を、セフィアからチームに配布される『過程評価値』に基づいて分配することに同意すること』

『セフィアは『過程評価値』を厳正・公正に算出すること』


 この三点である。

 ちなみに、『過程評価値』の算出とあるが、これは手数料としてポイントを払えば可能である。


 今回、秀星は『ポイントチケット』と導入したが、これは大雑把に言えば『セフィアが行うサービスの購入権』である。

 秀星が作ったポイントチケットは、秀星が

『これを適正数払えばセフィアのサービスを受けるに値する』

『生徒たちから何かを買い取る場合、秀星が決めた判断基準にそってチケットを渡す』

 の二点を保証し、そして流通するチケットはセフィアに支払われることでサービスを受けられる。

 ちなみに、二つ目の保証が必要な理由は、チートアイテムを買い取ってもセフィアにとってはガラクタ同然だからである。それ以上のものを普通に作れるとなればゴミの回収だ。むしろ手数料が欲しいレベルである。


 ただ、このサービスの幅はかなり広く、契約書の発行と、その契約書の履行に関して、手数料を払えばほとんど可能だ。


 ある意味、天窓学園の生徒たちは、このポイントチケットの本質を秀星以上に理解している。

 自分で全部できる秀星は、セフィアシステムというサービスのレベルを正しく理解していない。


 この契約には全員が同意した。

 当然だが、過程がなければ成果も結論も出ない。

 そして、過程を適切に評価するのが難しいので、成果や活躍で評価する。

 ただし、その元になる過程を適切に評価できるのなら、それに従う。

 それだけのことだ。


 秀星には見えない視点である。

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