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第六百五十話

 まず沖野宮高校の生徒たちが全員集合し、その後基樹が帰ってきて、そして天窓学園の生徒たちが全員集まった。

 美奈が特別くるのが早かっただけのようである。

 ちなみに、天窓学園の生徒たちも、来ているのは聡子を入れて五十人だ。

 初等部から来ているのは美咲だけで、中等部からきているのは優奈だけだが、剣の精鋭がリーダーを除いて全員集合している。

 さて、それはそれとして。


「さて、これから合同演習を始めましょう」


 聡子が扇子を片手に笑顔でそういった。

 ちなみに着物姿のままである。


「で、その第一プログラムの名前は?」

「それはですね……『常識粉砕』です!」


 聡子の宣言に、『何言ってんのこの人』という空気になった。

 当然である。


「天窓学園の生徒の皆さんは、確かに素質が優れた子たちが多いです。しかし、異なるものを見て生きて来た皆さんが、天窓学園の理念を受け入れて、上を目指すのは不可能です。というわけで、まずはその常識を取り除く必要があります」


 言いたいことはわかるがそれでいいのかと思ってしまうのだが、そこのところどうなのだろう。


「さて、沖野宮高校からは朝森秀星さんに出てきていただきましょう。天窓学園からも、一人、秀星さんと戦いたい人は立候補してください」


 と聡子が言った瞬間に、天窓学園に所属する剣の精鋭メンバーが全員目をそらしてきた。

 俺と戦うのがそんなに嫌か。と思う秀星。心の中で涙がポロリ。


「はいはい。俺がやるよ」


 立候補してきたのは、茶髪でヘラヘラした態度の男子生徒だ。

 一年生のようだ。

 ただし、ある程度体が引き締まっているが、それに反して体の軸がブレッブレなので、『才能はあるが努力はしてこなかった系』であることがよく分かる。


空閑光輝(くがこうき)君ですね。あ、沖野宮高校からは彼一人しか出ませんが、皆さんからは何人出てきても構いませんよ?」


 その言葉にざわつく天窓学園のルーキーたち。

 ただ、もともと魔法社会に関わっている生徒たちは『私はまだ死にたくない』とばかりに目をそらす。


(そんなに怖がられるようなことを普段からしてたか?俺)


 身に覚えはあるものの、今更主張しても変わらないだろう。


「なら、俺も」

「俺も行くぜ」


 更に二人出てきた。


(あ、空閑君のすぐ隣に並んだな。意外と距離が近い。取り巻きか)


 別にそういったものがそばにいることが悪いと言っているわけではない。

 むしろいてもいいと思う。


「以上でよろしいですか?……わかりました。では、リオ先生。戦闘用の結界をお願いします」

「私か?」

「はい。実は、まだ予算の関係上、戦闘用の結界を通常通り運用できる段階ではないのです。かなり無理をして作った教育機関なので」

「まあいろいろツッコミどころはあるが、引き受けよう」


 リオ先生はそう言うと、グラウンドを覆うようにドーム状の結界を作り出す。

 数秒でできあがったそれは、魔法社会への関わりが薄く、注意力が足りていないものたちにも見えるように着色されていた。


「すげえな。ここまでの結界を一瞬で……」

「基樹が全力で戦っても壊れないくらいだからな」

「頑丈すぎる……」

「まあそもそも、リオ先生は、奇策とか搦手とか倫理観度外視戦術とか、そういう部分を取り除いた素のスペックは俺より高いし」

「!?」


 魔法社会というもの、そして朝森秀星を知っている生徒たちが、一斉にリオ先生の方を見る。

 ただ、剣の精鋭メンバーと聡子と宗一郎と英里はそうではなかった。

 ギラードルが神だと知っているわけではない。

 神として動いていたギラードルに会ったものは秀星しかいない。

 だが、なんとなくわかるのだ。


「あと、結界を作るのは私の得意分野のようなものですからね。私からすればこれくらいは造作もないですよ」


 天界神ギラードルの名は伊達ではない。


「へぇ、まあなんかわかんねえけど。お前が相手っていうのは違いねえ。俺がぶっ潰してやる!」


 空閑君は元気そうだ。


「三対一ですか。まあいいとしましょう。空閑さんたち」

「なんですか?」

「これから戦ってもらうわけですが、もしも秀星さんに勝ったらなんでも一つ願いを叶えてあげましょう」

「!?……い、いいんですか!?」

「俺たち三人全員ですか!?」

「ほ、本当になんでも!?」

「ええ、あんなことやこんなことでも構いませんよ」


 ニコニコしながらそんなことを言う聡子。

 というか空閑君たちの食いつき具合もなかなかオカシイ。

 一体何があったのだろうか。


「さて、それでは始めてもらいましょう」

「よっしゃあ!さっさとやろうぜ!」


 空閑君たちが元気そうに結界の中に入っていく。


「あ、秀星さん」

「ん?」

「手加減してくださいね」

「本気でやるわけ無いだろ」


 そもそも秀星が本気で戦う場合、相手の体を萎縮させるために殺意で圧力をかける。

 秀星くらいになると、殺意むき出しみたいな普通に戦うことも可能だ。

 ただ、その状態で戦うと!相手の心臓が止まってしまう。


「どんなふうに遊ぼうかなぁ。あくまでも合同演習だし、生徒の役に立つものを見せることをこころがけるか」

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― 新着の感想 ―
[一言] 多分その母性パゥワァーで包まれたからそれを再度体験したいとかだろうなぁ…… ところで誤字が多いのってパソコンですか?スマホですか?スマホの方が誤字多い可能性がありますけど……句読点がビック…
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