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第六百二十九話

 確定していることが一つある。

 それは、『神を殺すことは不可能である』ということである。

 天界にいる神々、そして秀星たちが話題にしている神祖も変わりはない。

 秀星が考える限り、神というものは主に二種類。


 『人間が進化して限界点にたどり着いた結果生まれた神』

 『命名神に名を与えられて神になった者』


 神祖は前者に属する。

 人間が進化し、ありとあらゆる肉体の制約から解き放たれるのが基本であり、魂そのものをどうにかしなければ何も起こらない。

 そして、『神』の魂は永遠に消えることはない。

 どれほど悪性の神であろうと、その存在がとある理由により必要とされているからである。


 秀星は『再封印』を選ぶわけだが、これは『封印魔法を元に戻すための時間が足りない』ためである。

 加えて、大昔に暴れまわった者とは別の神祖が出現してよからぬことをやった場合、既に緻密に構築された魔法陣であるグリモアの惑星魔法を使うことができれば大きい。ということもある。


 いずれにせよ、封印が解かれることを止めることはできないため、再封印のための魔法陣は必要になる。

 そのため、秀星は頼んだわけである。


 ただ、一つだけ計算外のことがあった。


「……」


 グリモアという惑星の核に近い場所。

 そこにはとある台座が存在する。


 ほかに使い道がないほどの『拘束台』だ。

 いや、外見としては見たことのない色のコンクリートのようなもので固められた直方体のようにも見えるので、中に人がいると考えるものはほとんどいないだろう。


 ただ、その中に存在する『神祖』は、何かを感じ取った。

 少し、力を入れる。


 次の瞬間、コンクリートのブロックは完全に崩壊し、砂となって消えていった。


「……」


 コンクリートのようなものが取り除かれたが、まだ拘束されているといっていい。

 頭、首、胸、胴体、両肩、両腕、両手首、両手、両太腿、両膝、両足、両足首、両脚。

 全てにおいて、外見からは一切特徴がわからないほど、台座に黒い革製のもので覆われている。

 その上から呪術的要素が強い刻印のある金属具が存在した。

 そのまた上に、細さ、長さの異なる鎖が巻き付いていた。


 グリモアで唯一発動されている惑星魔法である。


「…………」


 ただし、コンクリートのようなものが破壊された時点で、もう『無意味』と言っていいのだろう。

 先ほどより、もっと力を入れる。

 鎖が切れ、金属具にヒビが入り、革製のそれは悲鳴を上げる。

 ブチブチと、ビキビキと壊れていき、ついに、すべて砕け散り、砂となって消えた。


「……どうやら、何らかの要因で、封印が緩んだようですね」


 拘束具の下にいたのは、陳腐な言葉で表してしまえば、ルックス、スタイルが共に完成している紫色の髪の女性。と言えるだろう。

 ドレスのような白いネグリジェ一枚のみという扇情的なものだ。

 豊満な胸とくびれた腰、大きなお尻は蠱惑的なものであり、少し動けば危険な場所が見えてしまいそうだが、本人が気にしている様子はない。


「さて、封印が解除されたということは、古の契約通り、この世界を破壊していいということですね」


 次の瞬間、女性は惑星の核から、近くの大地に転移した。


 見渡す限りの大草原の真ん中に神殿のようなものが存在する。

 いや、それは神殿なのだろう。

 しかし、その神殿には札や鎖といったアイテムで全体が縛られており、明らかに何かを封印することが目的で、信仰は感じられない。


「途中まではしっかりと封印のための儀式を行っていたようですね。しかし、もう行われていない様子。愚かなことです。もしも儀式が滞りなく行われていれば、私を縛る封印が行われ続けるよう、魔法陣の調節が行われていたものを……まあ、世界の無能さに関しては感謝しましょうか」


 女性が指を鳴らすと、神殿の奥から二つの玉が飛んできて、女性の手の周りを浮遊し始める。

 そして、一瞬ですべてがはじけた。

 ネグリジェ一枚だった体の上から、薄紫色のドレスが覆われる。

 裸足だったがドレスに適した靴と。足を覆うように太腿まで覆うほどのストッキングが出現する。


 右手には銀色の槍が構築された。


「……私に向かって真っすぐ向かってくる者がいるようですね」


 その方向を見る女性。

 金色の瞳が、一瞬だけ光った。


 ★


 朝森高志

 性別 男

 HP SSS

 MP SSS

 筋力 SSS

 耐久 SSS

 敏捷 SSS

 魔力 SSS


 懸念すべきスキル

 『ギャグ補正』


 ★


 諸星来夏

 性別 女

 HP SSS

 MP SSS

 筋力 SSS

 耐久 SSS

 敏捷 SSS

 魔力 SSS


 懸念すべきスキル

 『ギャグ補正』『悪魔の瞳(ラプラス・アイズ)』


 ★


「……ふむ、冒険者ギルドが使っている基準を採用する限りでは、ステータスは人間にしては高い。スキルはほかに何があるのかわかりませんが、懸念すべきスキルは……見たことはありませんが、持っていることを知っておけば問題ない程度でしょう」


 そう判断する。


 次に、『脅威鑑定』を行った。


 一位 ????

 二位 朝森秀星

 三位 朝森高志

 四位 諸星来夏

 五位 石動優奈

 六位 八代風香

 七位 朝森椿

 八位 朝森星乃

 九位 ヴィーリア・サーレイ

 十位 潺宝一


「地球ではないのですからもう少し頑張ってほしいですね」


 それに関しては本当に申し訳ない。


「一位が私にも見えませんか。懸念すべきは全知神レルクスですが……大昔に私を封印しに来たときは彼も紛れていたはず。私の復活を止めることも不可能ではなかったはずですが……まあ、確定していないことを決めるのはやめましょうか」


 何十億年とかそういうレベルだ。

 どんなふうに事情が変わったとしても、現物を見なければわからないだろう。


「二位の方を見ておきましょうか」


 もう一度鑑定を使い、二位の朝森秀星を見る。


 ★


 朝森秀星

 性別 自由

 HP 自由

 MP 自由

 筋力 自由

 耐久 自由

 敏捷 自由

 魔力 自由


 懸念すべきスキル

 『アイテムマスター』『ギャグ補正』


 ★


「こんな表記は初めてみましたね」


 そりゃそうである。

 全部のステータスが自由とか二人以上いてたまるか。


「グリモアに存在するもう一つの惑星魔法。それを破壊するために動くとしましょうか」


 ちらっと視線を向ける。

 二人の人間がこっちに来ていた。


 ……昭和の暴走族が乗るような改造バイクに乗って。

 もちろん、高志と来夏である。


「二人共地球の日本人のようですね……一体いつから、日本という国は風紀が乱れているのでしょうか」


 それは風評被害である。

 女性は指をパチンと鳴らすと、巨大な炎の玉が出現した。

 そしてそれを、高志と来夏がいる場所に真っ直ぐ落とす。


「直撃しましたね……あら?まだ生存反応が消えていない……」


 ありとあらゆる耐性を貫通する筈。

 人間であるなら、炎に対する耐性は素では低いのは普通だ。


「……!」


 次の瞬間、背後の空間が『べキッ!』と音を立てた。

 振り向くと、ベキベキ、バキバキと空間が割れていく。

 その奥から、先程炎の玉を落としたはずの二人が出てきた。


「ふう、あっぶねー。やっぱりバールを携帯してて正解だったぜ」

「オレも間一髪だったな。さて、お前が『鑑定神祖ライズ』だな!再封印のために時間稼ぎをさせてもらうぜ」


 ライズとしては気になるところが一つある。


(一体いつからバールは空間跳躍に使われるようになったのでしょうか……世界というものは不思議な方向に進化していますね)


 この二人は単なるイレギュラーなのでそこまで気にしないで、本当に。


「再封印?」


 脈を見る。

 すると、重要な部分の修復のために、脅威判定は二位の朝森秀星が動いていた。


「なるほど、なら私は、あなた達を殺したあと、脈そのものを破壊しましょう」


 ライズは槍を構えた。


「ハッ!やってみやがれ!」

「俺達に簡単に勝てると思うなよ!」


 三下みたいなセリフだが、これで強いのだから世も末である。

 ライズに壊してほしいわけではないが、本当に、世も末である。

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― 新着の感想 ―
[一言] シリアスブレイカーなギャグ陣には勝てんよ…
[気になる点] 秀星いつギャグ補正のスキルを得たのだろう。 正誤に悩む。
[気になる点] 鑑定神ライズが秀星を鑑定してるのに名前が高志になっている
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