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第六十二話

 チラ見はガン見。と言う言葉を御存知だろうか。

 例を出して説明すれば、女性の胸を見る男性のちらちらとした目は、見られている女性からすれば、ジーッと見られていることに等しいということである。

 そもそもチラ見と言うのは、少しの時間の間で対象を観察するという目的でするものだ。

 結果的に、その少しの時間にかなり集中する。

 とはいえ、チラ見されていることに気が付けばの話だが、分かる人間にはわかる。

 女性と言うのは、そう言う視線を不快に思うものなのだ。


 なぜこんなことを説明するのかと言うと、秀星はその意味を身をもって体験しているということと、チラ見はガン見。というこの言葉に性別は関係ないということに気が付いたからである。


「ねえねえ来夏。剣の精鋭に入れてほしい人がいるんだけど、いいかな」


 安定の屋上で来夏に電話している雫。

 風香と羽計はやることがあるみたいですぐに帰って行った。

 そもそも雫は喫茶店でバイトしているのでは?と秀星は思うのだが、今日はオフらしい。

 そして、軽いノリで来夏に頼んでいる雫。

 それに対する来夏の返答だが……。


『いいぞ』


 と言うものだった。

 ちょっと男らしすぎるだろう。ホルモンバランスが心配になってくるレベルだ。


「え、いいの?」

『いいぜ。で、どれくらいの実力なんだ?』


 加入に対して賛成した後に実力を聞いて大丈夫なのだろうか。

 秀星としてはかなり問題がある気がしなくもない。


「……秀星君。エイミーちゃんの実力ってどうなの?」

「剣の精鋭に入れるレベルなのかどうかっていう話なら、別に実力は問題ないぞ」

「ふむふむ」


 雫は頷いた。


「秀星君が言うには、剣の精鋭に入れるくらいの実力はあるみたいだよ」

『ほう、今までチームに所属していなかったのが不思議なくらいだが、まあいいか。で、本人は納得してるのか?』

「それはね……全く話していないんだよ!」

『順序がおかしいだろ』


 認めるがお前が言うな。


「じゃあ、納得したらまた連絡するね」

『おう。分かった』


 通話終了。

 雫は秀星の方を見た。


「秀星君。何かいい案ってある?」

「その答えを求めるのは無茶振りだと思うのは俺の気のせいか?とりあえず話すしかないだろ。本人はもう家に帰ったから明日になるけどな」


 そう、本人はもう帰っているのだ。

 押しかけたら逆に『!?』という感じになる。


「それじゃあ秀星君。説得は任せるよ」

「……」


 エイミー本人の目的としては、剣の精鋭に入りたがっていることは間違いない。

 だが、何かモヤモヤする秀星だった。


 ★


「エイミー。どうだ。剣の精鋭には入れそうか?」

「……まだわからない」


 エイミーが家に帰ると、父親のメイソン・ルイスが待っていた。

 金髪碧眼のナイスミドルだが、少し、怯えたような目をしている。


「剣の精鋭……特に、リーダーの諸星来夏と、ジョーカーの朝森秀星の力は驚異的だ。なんとしてでも所属し、庇護下に入る必要がある。今までは納得できるチームがいなかったが、剣の精鋭は問題ないだろう。お前も、そろそろ安息の地を見つけるべきだからな」


 ルイス家は常に、狙われている状態だ。

 その理由はここでは明かさないが、実際にあちこちを転々としている。


「切り札の秀星が女好きというのは利用できる。この際、既成事実を作ってしまえ……おい、顔を赤くしすぎだろう」


 既成事実、という言葉のあたりからニヤニヤし始めたメイソンだが、それを聞いたエイミーは顔を耳まで赤くしている。


(……おかしいな。それなりに修羅場を潜ってきたのだが、こんなにシャイだったっけ?)


 学校で何かがあったのだろうか。

 秀星関連ならいいのだが、残念なことに(バカ)が原因である。

 無論、エイミーは話さないだろう。転校初日に穢されたとは流石に父親には言えない。


「……お前から見た秀星という男はどうだ?」


 エイミーは今日見た秀星を思い出す。

 席は秀星よりも後にある。どんな様子なのかはよくわかるのだ。


「……頭は良くて、運動神経もすごい。なんだか常に落ち着いてて、近くにいると安心する」

(最強じゃねえか)


 そんな漫画の主人公みたいな奴がこの世にいるのか?とメイソンは思ったが、だからこそ女が集まったと思えば別に不思議ではない。

 いずれにせよ、いろんなやつの敵になりそうだが、メイソンはここは利用できると感じた。

 利用できることは利用しなければならない事情があるのだ。

 娘を変態に押し付けるのも最初は嫌だったが、エイミーの様子を見る限り、メイソンとしては別にそこまで悪いというものではないように感じる。

 ……とはいえ、変態ではないと言っても性的な話であり、頭のネジが吹っ飛んだ別の意味での変態の巣窟である。そこはもうどうしようもないのだが、このときのメイソンが知る由もない。

 完全に問題がないとは言えないが、メイソンとしては、絶対に安心できる戦力が揃っており、入団する余地が残っているところはそう多くない。

 ある程度は目を瞑るべきだろうというのが判断した結果なのだ。


「早く話を進めておけ。話がわかる強者のそばにいて、悪いことはないからな」

「はい」


 転々としているが、逃げ続けるというのはつかれるものだ。

 さらに言えば、敵が強すぎる。

 エイミーは、明日からどうしようかと考え始めた。


 ……無論、既に内定が確定していることなど、想定すら不可能である。

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