第六百十四話
お帰りいただく際に不死属性は抜いておいた。
で、その翌日のことである。
「通信用の魔道具を持ってる新聞社がいるんだろうな。情報速いねぇ……」
新聞には『聖竜騎士団。脱退者続出!?』と書かれていた。
秀星の遊びがどうやら相当効いたようである。
ちなみに、あの太ったリーダーはかなりもたもたしていたが、他のメンバーがしっかり訓練をして、実践を経験している精鋭たちであるということは秀星にはわかっている。
わかった上で、軽くあしらって、遊んでお帰りいただいたわけだが、それがトラウマになったのか、聖竜騎士団を辞めるものが続出した。
見た目は何かがあったようには見えないくらいピッカピカの状態で帰っていったので、失敗した結果左遷されると思うが、そんなことはどうでも良くなったのだろう。
悪夢を見るのは、一度でいいのだ。
「記事を見る限り、神聖国の上層部はあの太った人の報告を完全に無視してるみたいだな」
「常識から考えて現実味がありませんからね」
「セフィアがそういうってことは、やっぱり神聖国の技術力はそうでもなさそうだな」
「施設が優れており、それを使っているだけですから」
「はぁ、まあ、この報告を信じなかった第二陣が来るんだろうな。正直、壊れるのが早くて遊んでも面白くないんだよなぁ」
贅沢な言い方である。
「まあ、また次が来たら、そのときは適当にやろうか。適当に隕石でも降らせればいいだろ」
「そうですね。竜は災害だと思われることがあるそうですが、本当の災害には及びませんから」
中にはドラゴンを倒せるものもいるので、知恵のあるドラゴンは強くても人を襲うことはあまりない。
恨みという感情は馬鹿にできないし、いつ、自分より強い者の逆鱗に触れるかわからないからだ。
だが、災害というのは違う。
星がちょっといつもと違うことをして、ただ破壊する。
それだけなのだ。
そして、被災者は嘆くことができても、プレートのちょっとしたズレを恨むことなどできない。
そこに意思がないからだ。
そういう意味では、自らの意思で襲わないことを決めるドラゴンは災害ではない。
「で、次のやつが来るのっていつくらいになるんだろうな」
「それは不明ですが、あまり遅くはならないでしょう。このままでは黒星が増えますから、圧倒的な魔力量で優位になっているという現状を崩したくはないでしょうし」
「だよな。ただ、俺も遊ぶのはだるいんだよなぁ」
秀星はあくびをした。
「正直、やろうと思えば……見つけてぶっ壊すまでに一秒かからないんだけど、どう思う?」
「私も同意しますが、あえて言えばそれはしないほうがいいでしょう」
「そうなんだよねぇ……あまりにもそういうことを早く済ませようとすると、全知神レルクスから妨害されるんだよな。その理由は絶対に教えてくれないけど」
「そうですね」
秀星はソファでゴロゴロを再開する。
「ヴィーリアが攻める準備してるみたいだけど、周りの貴族が面倒みたいだな」
「戦争というのは基本的に主権の衝突の間違えた最終段階と呼べるものですが、貴族にとっては自らの武力を示すための晴れ舞台という見方もあります。戦争で最大の戦果を挙げたものが勲章を得るというのはよくあることです」
「ヴィーリアからすれば、俺がいれば勝ち戦みたいなものだから周りの貴族なんてどうでもいいけど、貴族は勝ち戦にかかわりたいから話が進まないって感じか」
「そうですね。では、秀星様はどうしますか?」
「最終的には勝手に攻めるよ。まあ後……ユイカミに残った六人のうち、椿以外は全員、神聖国を一人でつぶせるだろうし」
高志は正面から衝突する場合はもちろん、勘で奇襲がすべてわかるだろう。
来夏に対しては隠し事が通用しない。
風香は、国一つ程度の面積ならば、十年以上、気候を竜巻にできる。
星乃は魔法使いだが、聞いてみれば『雨属性』とのことなので、百年以上豪雨にすればいい。
秀星に至っては、国をつぶす手段は五桁ではすまない。
「さてと、とりあえずどう動くのか見せてもらうか」
秀星は、精神と呼ばれるものや心というものを自由に作り替えることは可能だが、今ある心がどう動くのかを予測することはまだできない。
神聖国をつぶすことは別に目的ではない。あくまでも魔力を独占している手段を破壊するのが目的だ。
それそのものは一秒でいいので、今は観察することにする。




