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第六十話

 アメリカの失態。

 この事実は思った以上に世界に影響を与えていた。

 魔戦士としての強さというのは、本人の練度もそうだが、魔装具の強さも含まれる。

 魔装具の研究により、その成果を上げてきた。

 ここ数年は、アメリカが魔法社会を牽引するレベルで魔装具を進化させてきた。

 武装を用いた訓練により、大きな組織として、最低限の素材の確保を把握。

 人材が多いこともあるだろう。

 中国やインドは文字通り桁違いだが、アメリカもそういった桁の範囲を除いて考えると多い。


 武装のレベルが高く、魔法や呪術など、『才能』を必要とするものではなく、『訓練』を前提とする戦力強化は、効率としてはいいものだ。

 英雄がいない代わりに、優秀な指揮官がいれば、それだけで戦力が増強される。


 マザーモンスターそのものは、アメリカの魔戦士も、死亡・負傷者が出る可能性はあるが別に勝てないわけではない。

 今回の場合は『出し抜かれた』というほうが正しいだろう。

 ただ、その『出し抜かれた』ということすら、魔法社会の中では珍しいことなのである。


 今回の失態はほぼほぼ想定外の要素が積み重なって出来たものだが、いずれにせよ、失態というのは屈辱だとか逆恨みといったものを産む。

 ただし、不確定な部分が多すぎる以上、あまり出しゃばりすぎるとひどいことになるのは明白。

 直接的に勝てない相手であることはさすがに理解している。

 ただ、それはそれでやりようはあるのだ。


 ★


「魔法社会の掲示板でボロクソにかかれてるな。俺」

「外国の大型掲示板ですね。おそらくアメリカでしょう」

「逆恨みか?」

「おそらく」


 魔戦士のものにしか開くことができないウェブページが開発されている。

 なんだかんだ言って電子技術には強い地球だが、それはそれとして、魔戦士が安心して利用できるというのはいいことだ。

 しかも、国ごとに翻訳してみることが出来る。

 秀星はアルテマセンスで補助できるので、ぶっちゃけると英語のままでもいいのだが、別に日本語になるからと言って悪いわけではない。


(ただ、剣の精鋭そのものに悪い噂は少ないし、攻める部分があまりないんだよな。強すぎるだとか、チートだとかいろいろ言っている連中が多いが……)


 秀星としても、自分が持っている力がチートであることは認めるし、理不尽であることも承知している。

 とはいえ、『だから何だ』という話だ。


「秀星様はどうするのですか?」

「いうだけ言わせておけばいいだろ。俺は困らないし」


 気にしなければどうと言うことはない。

 秀星は周りの方針は気にかけるタイプだが、自分を対象とする評価など気にしない。

 異世界ではそんなものを気にしても仕方がないからだ。


(……『女を侍らせる人類の敵』か。変われるものならかわってやりたいくらいだ)


 苦労というのはその場にいるものにしかわからないものだ。

 普段から何を考えているのかわからない上にキャラが濃いやつが多いのだ。

 いい加減にしろと言いたい。

 というより、一人は既婚者である。


「まあそれ以上に気になるのは、この掲示板の書き込みが出てきたくらいから、クラスメイトの視線が気になるんだが……変化を感じる」

「九重市はダンジョンが一応ありますからね」

「え、あるの?」

「八代家の近くにあります。ダンジョンの規模は大きいですが、罠もなければ、モンスターの強さもたいしたものではなく、間引きのために学生をバイトで呼ぶことも多いそうですよ」

「何その降って湧いたような設定……」

「結果的に、魔戦士がそれなりにいるのです。流石に剣の精鋭と比べると霞みますが」

「そりゃそうだ」


 小遣い稼ぎに適したダンジョンもあるということなのだろう。

 古くから管理していた可能性もある。

 長い間管理していると自然な感じで運営できるので、あまり怪しまれないのだ。

 それは言いかえるなら、マニュアルが出来上がっていることでもある。

 ダンジョンである以上、頑丈だろう。

 いろいろと実験にもってこいであり、ダンジョンをダンジョンとしてだけではなく、他の見方をすれば使えるのだ。


「ただ……ダンジョンを保有しているとなったら、いろいろな意味で面倒なことにならないか?」

「ダンジョンにも便利、不便はありますよ。八代家は改装工事を行うことでそれをクリアしていますが、最初は適当に穴が空いた洞穴のようなものでしたから」

「なるほど。しかし、八代家の近くか……」


 ナターリアたちも使っているのだろうか。


「ちなみに、俺のクラスメイトで、剣の精鋭を除くと魔戦士って何人いるんだ?」

「十六人ですね」

「そりゃ雰囲気も変わるわな……」


 クラスは三十人

 秀星たちを入れると、三分のニが該当する。

 明らかにおかしい。


(ここまで揃っているとなると……学校の中でも、魔戦士であることは珍しくないかもしれない)


 身体能力が高い割に運動部に所属している人間が少ないのが沖野宮高校だが、その理由がわかった。

 みんなダンジョンに潜っているのだ。

 ただ、ここまで揃っていると、モラルだけでは制御できないはずだ。


「なあ、生徒会長とかって魔戦士なのか?」

「来夏様より強いですよ」

「えー……」


 秀星の頭を占領しているのは、こんな内容だ。

 『もういや』である。

 どうやら、これからは学校内における魔戦士事情にも突っ込んでいくことになりそうだ。

 なにか悪いことをしたかな。と思う秀星だが、心当たりはたくさんあるので諦めることにした。

 ただ、最後に一度、ため息を吐いた。

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