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第五百九十六話

「辞書完成!」


 秀星は『よっしゃあああああ!』と言いたそうな表情で辞書を掲げた。

 『秀星式魔法辞書』と書かれている。


「ふう、あとはこれを王城に配っておくか」

「お、おお、完成したのですね」


 アルトが秀星が作った辞書をぱらぱらとめくっている。


「確かに、すごくわかりやすいですね。これからはこれをもとに資料を作ることになりますね」

「そのために作ったからね。ちゃんと使ってほしいもんだ」

「秀星さんって普段から辞書って使うんですか?」

「いや、全然」


 他人に求める割に自分では使わないタイプらしい。


「まあとりあえず、こういったものが一冊あると混乱しないだろ」

「そうですね。これがあれば、意味不明な報告書のために現地調査をしなくても済みます」

「そんなことしてたの?」

「貴族が仕事しないので。貴族の下で働いている人がノウハウを持っているので入れてるだけですから」

「クソみたいな貴族だな」

「クソみたいな貴族だから他国から飛ばされてきたんですよ」


 なるほど。

 自分たちにとても有益な運営をする貴族をわざわざ他国に潜り込ませるわけがない。


「しかも、そういう奴に限って、貴族単位みたいなしょうもないレベルの駆け引きばっかり得意なんですよね。領地の運営やれよっておもうんですけど」

「アルト。本音漏れまくってるな」

「当たり前です」


 大変なものである。


「最終的に全員処分できたらいいなって思います」

「それには同意だ」


 領地を運営し、領民が幸せに暮らせる場所を作る。

 そうした成果に対して報酬が支払われるのならだれも文句は言わないだろう。

 ただ、何もしていないのに、何も生み出さないのに、何も祈らないのに、ただ贅沢をするような馬鹿がいると、自分たちの国が他国に食われる。


「……そういえば、秀星さんは貴族というものをどう思いますか?」

「うーん……初代は何か功績があったんだろうけど、そこから先のやつに対しては別に興味ないな」

「まあ、確かに爵位を与えらえるというのは功績がないと無理ですからね」

「で、興味がなくなるっていうか……期待しないな。俺は」

「見限るってことですか?」

「いやそもそも……『十秒もあれば潰せそうな国の貴族』に価値なんてあると思うか?」

「……」


 アルトは『そうだった。それくらいすごい人だったわこの人』と思った。


「でもな。やろうと思えばできるけどやらんぞ。だって、絶対的な力で叩き潰すっていうのは、本当の意味で『最終手段』だからな」


 仮に現代地球から核兵器がなくなったらどうするか。

 要するに『全て終わらせてしまうような理不尽な兵器』を誰も持たないということなのだから。自重する必要がなくなるのである。

 すべての国が、『核兵器だけは使わせたらダメだ』という感情を持っているからこそ、紛争地帯はノロノロやっているのである。


「まあ、それもそうですね」

「さて、辞書も作ったし、なんか書類の数も少なくなったから、この国に来た当初の目的に戻ろうか」

「そうですね」


 秀星の目的は、『グリモアで魔力を大量に独占している状態を破壊し、長年にわたって再分配されるようにすること』である。


「その存在を探す必要がありますね」

「実はね。これ相当面倒な話なんだよなぁ……」

「そうなんですか?」

「ああ。そもそもの話だけど……魔力が大量にあるからって、それが存在感につながることなんてまずないからな」

「あ。そうですね。僕も魔力は多い方だといわれますけど、町の中を歩いていても振り向かれることあまりありませんから」

「だろ?……ってそれはどうなんだ?アルトって一応、この国では王族だろ」

「あんまり外に出てないんですよねぇ。王城勤務なので」

「なるほど」

「姉様はよくメディア露出してますけど」

「まあ、あのルックスとスタイルなら、そりゃメディア受けするだろうな」

「そうですね」


 というわけで。


「で、どうやって探していくかなんだけど……多分、何か起こってるはずなんだよなぁ」

「そうなんですか?」

「独占しようとして、本当にすべてを抱えていけるかどうかっていうのは別だからな……」


 秀星はそう考えている。

 となれば、調べることができる。


「というわけで、強いモンスターが出現していたり、なんだかすごい装備やスキルを持ってる冒険者がいたりしている可能性がある。で……そういった連中にとって、多分俺は目障りだろうなぁってことだ」

「あー……秀星さん自身がとんでもない量の魔力を持っていますからね」

「そういうことだ。というわけで、探し始めるとしよう」

「はい!」


 ★


「ムッフッフゥ!星乃!楽しいことになりそうですね!」

「……」

「あれ。元気ないね。星乃」

「なんかこの世界と比べて強そうなドラゴンを一刀両断する実力がありながら、タイムマシンの設定をミスって二十年前に飛ぶ姉のフォローをするんだと考えると萎えるんだよ……」

「フフフ……そんなこと知らないよ!アダダダダ!痛い痛い痛い!アイアンクローしないでえええぇぇ……」

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