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第五十九話

 秀星は今回、歴史を改竄した。

 雫の十年を取り戻すためにやったことであり、いろいろと問題が出てくるかもしれないが、別に悪いことだとは思っていないし、反省も後悔もない。


「久しぶりの自宅だな」

「そうですね」


 いろいろと衝撃的な出会いがありながらも、朝森宅に帰って来た秀星。

 なんだかんだ言って濃いものだった。

 ダンジョンに挑んで稼ごうとか言っていたのに、いつの間にか過去を改変するとか言いだしたのだ。

 秀星としては我ながら意味不明である。

 とはいえ、五手先とか六手先とかは考えるが一手先など全く考えないのが秀星だ。

 自分の情報の隠蔽に関しても、わざとさらけ出すことで周りに意識させるほど、敵がほしいと考える性格である。

 異世界では、過去を改変するということはさすがにやっていなかったが、それと似たようなレベルでヤバいことはいろいろやっていたのだ。


「なんていうか、一段落着いたって感じがするな。日常が帰って来たとも言う」

「日常と言う言葉は『束の間の平穏』であるとするなら、確かにそう言えますね」

「嫌なこと言わないでよ。ちょっと嫌な汗かいたじゃないか」

「それはいいのですが、これからどうするのですか?」

「精神的にいろいろと疲れてるからな。こういうときはやるべきことは一つだ」


 秀星は自信満々に言う。

 とはいえ、答えはシンプル。


 ★


「えへへ。秀星さーん」


 ガイゼルの娘、ライナをモフりに来たのだ。

 ふさふさの毛並みに、小さな体と、穢れのない無垢の瞳。

 はっきり言って性格の悪い秀星も意地悪はできません。


「……久しぶりに会いに来たと思ったら、娘をモフりに来るとか、一体何を考えてるんだ?お前は」

「……というより、最近は秀星のことを話す機会も多かったがな。父親を考えるような目で」

「ナターリア。そう言うこと言うのは止めてくれないか?ちょっと嫌な汗が流れてきた」


 マクスウェルであるガイゼル。

 エイドスウルフであるナターリア。

 風香が住んでいる山に生息する二人だが、モンスターとしての視点を持っているので、秀星としても時折いい話相手になる。

 あと、ライナがかわいい。

 アニマルセラピーと言う言葉を御存知だろうか。

 分からない人は、動画で生まれたての動物の赤ちゃんの動画とか、じゃれ合ってる猫の動画とかを見るといい。すぐに分かる……多分。

 秀星としても、いろいろな意味で行く意味がある場所なのだ。そのうち、ライナをモフりたいという感情は八割くらいを占めている。


「zzz……」


 ライナが寝た。

 寝ている赤ん坊の動物と言うのもいいものである。


「そう言えば、何かかわったことはないか?」


 ライナも寝たことだし、ここからは子供には聞かせられない話を混ぜていく。


「変わったこと?」

「評議会の力が落ちてそれなりに時間があっただろ?一週間くらいはなれていたからな」


 秀星としては、歴史の改編で何か九重市に影響があったとすれば、対応策を考える必要がある。

 いや、影響そのものは確実にあったと秀星も考えているが、セフィアの指示通りに動いたので、問題がないとしても、細部が異なる可能性がある。


「……最近、八代家がいろいろと動いているな。いや、悪い意味ではないが」

「?」

「外国の魔戦士がこのあたりをうろついているそうだ。ただ、監視目的と言うか、観察目的と言うか……とにかく、周りからこちらを見ているような感じらしい」


 外国の魔戦士か。

 何を見に来たのかはわからないが、剣の精鋭のアジトがあるので、見る価値はある……のだろうか。

 秀星としてはよくわからないレベルの話である。


「九重市において、戦闘力と言う意味では君たち『剣の精鋭』がトップに立つだろう。だが、それ以外に関しては八代家がほとんど対応している」

「そうだな」

「九重市で何かが起きた場合……それも、魔法社会に関連することであった場合、その対応をするのは八代家だ。まあ、このあたりは秀星も知っているだろう」

「知っていたかどうかは俺もよく分からんが、納得はできる」


 大きな力を持つと、何かと周りも気になるものだ。

 自分が住んでいる街なら尚更だろう。


「とはいえ、何かがあったら秀星はどうにかするのだろう?」

「黙って見過ごせるような性格ではないからな」


 セフィアにもいろいろ突っ込まれるだけあって、一応、自分をそれなりにではあるが多角的な見方をできる秀星。

 地球を過小評価するという、なんとも言えないことになっていたが、それはいいとしよう。


「……フフッ」


 ナターリアが微笑む。


「どうした?」

「いや、出会った頃のようにいい顔をするようになったと思っただけだ」


 秀星は苦い顔をした。


「……そんなにひどかったか?」

「ひどかったぞ。いつもいつも、砂でできた城を壊さぬように動いていたようなものだ。年齢故に、多少の甘い部分はあるということを考慮しても、なかなか無いレベルだったぞ」


 ボロクソである。


「俺も思ったぜ。ナターリアから聞いていたヤツとはなにか違っていたような気がしたからな」

「いや、ガイゼル。それは嘘だろ。お前が人を見るわけないだろうに」

「バレるの早くね!?」

「お前がわかりやすいだけだ」


 結構バッサリ行くナターリア。


「それはそれとして、外国の魔戦士の話か」

「いろいろと可能性があるからな。外国の魔戦士がこの洞窟に乗り込んできて、俺を捕獲しようとしたことも別に珍しくない」

「……ちなみにその捕獲しに来たやつはどうしたんだ?」

「パンツを残して服をすべて奪ってやった」


 鬼畜である。


「アイツ等面白いんだよな。火を出して奪った服に当てようとしたら慌てだすんだからよ」

「そりゃあ……捕獲をするためにやってきた部隊が予備の服を持っているわけないもんな」

「私の知らないところで何をやっているんだお前は」

「だって弱かったんだもん。娯楽に飢えていたからな。なので娯楽になってもらっただけだ」


 ふむ……と秀星もつぶやく。


「面白そうだな。俺もどこかのタイミングでやってみるのも面白いかもしれない」


 とてもいい笑顔だった。


「……自重しないバカ共に対して、苦労するものがいるのはいつものことか……」


 そう言いながらため息を吐くナターリア。

 どうせみんなギャグ要員。

 だが、苦労するものや頭を抱える者は確実にいる。

 ナターリアも、そっちに分類される存在だった。

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