第五百七十五話
「山頂なんて味気ない場所を選ぶなんてねぇ……」
「拠点の場所がわからない以上、主導権は向こうにあるからな」
山を登っていく秀星とラターグ。
お互いにその顔は真剣さが薄いものの、これから面倒なやつを片付けに行くというのがわかっている表情だ。
実際、ラターグとしてはギラードルを片付けなければ裏金が暴露されてしまうので、どうにかして片づけなければならない。
「お、いたいた」
山頂に到達。
そこでは、銀色の剣を地面に突き立てた貴族風の金髪の男が立っていた。
「ギラードル。久しぶりだね」
「そうだな。ラターグ。そして初めましてだな。朝森秀星」
「アンタがギラードルか」
「ああ。私は天界神ギラードル。第一世代型の最高神の一人だ」
秀星は見た瞬間、内心では警戒態勢に入っている。
「さて、私としては、これから戦うのではなく、君たちを仲間に引き入れたいところなのだがね」
「僕個人としては無理だね。君を捕まえないと、僕は裏金を全知神に暴露されちゃうのさ」
「そうか。お前に指示をしたのはレルクスか……」
ラターグに対してはあきらめたような表情をするギラードル。
次に秀星の方を見る。
「秀星。君としてはどうなんだ?全知神レルクスにもあっているんだろう。そしてラターグも一緒にいるところを考えれば、私の目的は知っているはずだ。賛同するつもりはないのか?」
「別に、アンタが言ってることが間違ってるとは思わないけどな。確かに、神器を使っているとはいえ、第一世代型ではない最高神を何人も倒してる。俺みたいなイレギュラーっていうのは、ふとした偶然で生まれる心臓に悪いものだ。そいつらがもしも数を揃えて、そして組んでしまったら?って考えるのはわかるよ。だから、『強い天界を作り上げるため』にお前は動いてる。要するにそういうことだな?」
「そうだ。君のようなイレギュラーの発生は、人が人である以上避けられない。そもそも、神というのはそうして生まれたのだから」
「そうか……」
「もう一度聞こう。君は、私についてくるつもりはないか?」
「……」
秀星はギラードルを真正面から見て、考え直す。
そして、首を横に振った。
「いや、やっぱり、俺はアンタとは合わないな」
「どういうことだ?」
「俺とアンタでは、『正義』という言葉に対する価値観が違う。それだけだ」
秀星はプレシャスを右手に出現させた。
「そうか……」
ギラードルも銀色の剣を地面から抜いて、構える。
次の瞬間、秀星とギラードルは、二人がいたちょうど中間の場所で剣をぶつけ合っていた。
「ほう、私が作った神器に耐えるか。さすが、創造神が作った神器だ」
「そこまで調べてるのか」
「当然だ。私は君を過小評価していない!」
鍔迫り合いを押し込んだのはギラードルだ。
次の瞬間、秀星の真下の地面が沈むが、秀星はそのままギラードルの剣を横に受け流して、すぐに転移してギラードルの背後をとった。
そのままプレシャスを真横に一閃するが、ギラードルも同じく転移して距離をとってくる。
……のがわかっていたので、転移先を予測して、そのまま上からプレシャスを振り下ろす。
が、ギラードルは反射神経だけで転移魔法を使って離れて回避した。
「転移魔法を使う敵になれているな」
「まあな。いろいろあったんだよ。うん」
剣を交える二人。
そんな中……。
「zzz……」
ラターグは寝ていた。
いつの間にか敷布団と枕まで用意されており、本当に熟睡した。
秀星とギラードルは、それぞれ魔力の塊をぶん投げる。
ラターグは直後に気が付いて急いで離れた。
「おい!ギラードルは良いとしてもなんで秀星君まで攻撃してくるのさ!」
「むかつくからに決まってんだろ!一連の騒動の担当チームの一員だろお前!職務怠慢で天界に訴えるぞ!」
「うーん。それは不味いな。証言者としてレルクスが立ったらちょっとシャレにならないからね」
完全に爆散して跡形もなくなった枕と敷布団を見ながら、ラターグはそういった。
「ていうか、僕の布団にあたった瞬間に魔力が堕落して攻撃が無力化されるはずなんだけど、なんでこうなった?」
「堕落耐性を作ったからに決まってるだろう」
「エリクサーブラッドを魔力に混ぜた」
「うーん……なるほど、これは改良が必要だね。さてと、僕も戦うか」
ラターグは枕を新しく作った。
「さてと、この堕落枕は絶大な性能を誇る。当たらないように注意した方がいいよ」
悪い笑みを浮かべるラターグ。
「……ちなみに、当たったらどうなるんだ?」
「簡単に言うと精神構造が僕みたいになるね。だから僕はつかんでても大丈夫なんだよ」
「なるほど、触れないようにした方がいいな」
「そうだな。天界政府を作る上でその精神は邪魔だ」
秀星は『ギラードルと協力してラターグを天界に追い返した方がいいかな』と一瞬思ったが、とりあえずスルーしてプレシャスを構えたままで、マシニクルを左手に出現させる。
ギラードルが見てきた。
「その拳銃も神器か」
「ああ。そういうことだ」
「フフフ、覚悟しろギラードル!僕のようにしてやるからな!人生楽しいぞ!」
どこが?
と思った秀星とギラードルだが、何となく人生を楽しそうに生きているようにも見えるラターグを見ているとイライラしてきた。
結論、秀星は、ラターグをある程度無視して戦おう。そしてどさくさに紛れて確信犯で誤爆してラターグを倒そう。と考えた。
ラターグ。基本的に人望がない神である。




