第五百七十話
「まだいるのか!いい加減にしろやゴルア!」
秀星は頭を抱えたりはしない。
だが。『いったいどうなってんねん!』と叫びたくなるような状態だった。
「まあまあ秀星君。それだけ『ギラードルの派閥』っていうのはとても多くの神にとってうまみのあるものだと思われているんだよ」
「なんで思われてんだよ……」
「基本的にギラードルが強いっていうのもあるし、なにより『天界神』だからね。『コイツに巻かれておけばなんとかなりそう』って考えてるやつが多いんだよ」
「あとさ。俺が普通に倒せるやつばっかりいるんだけど、神になる条件クッソ緩くないか?」
「神になる条件かぁ……確かに、最近は緩くなってるねぇ」
「ぶっちゃけ俺が成れそうだわ」
「ハッハッハ!まあ君が成ったとしたら嫌がるやつ多いだろうね」
現在、秀星やラターグに襲撃してきた神……といっても、ラターグは有名なので『狙うなら秀星だ!』と思っているものが多いのか、秀星がよく狙われているのだが、捕縛して天界に回収された神は、現在は刑務中である。
神に寿命という概念は存在しないので、刑務といっても馬鹿長いのだが、その間に秀星が神になったら、『今までめっちゃ下に見てたのに、神になっちまったぞ。どうすりゃいいんだ?』となるのだ。
「秀星君は戦闘力を考えると最高神になれる候補くらいは考えられるかな。嫌だろうねぇ」
「はぁ……ぶっちゃけ、俺が倒したほとんどの神って、全然強くないうえに選民思想を持っているやつばっかりだったぞ。なんであんなのが神なんかになれるんだ。神様のバーゲンセールとか言いたいのかクソッタレ」
「あくまでも命名神は名前を与えるだけで、名前の価値を高めるのは本人次第だからねぇ……」
「名前の価値か……」
「何度も言うけど、神にとって重要なのは名前だけだからね。その価値を高めるために動くわけさ。まあ、テンプレを知らずにコケるんだけどね」
「新入社員か」
「あ、本当にそんな感じだよ」
秀星は『命名神って単なる資格の面接官なんじゃないか?』と思いたくなってきたが、ここでラターグに言っても頷かれるだけである。
いうだけ無駄だ。
「まあでも、そろそろ間引きが終わるころじゃないかな」
「ていうか、なんでこんなに捕縛しまくってるのに、『自分たちはできる』って思ってるんだろ」
「新しく神になった奴ほど、自分本位になるからね。周りのことなんて調べないんだよ。多分、天界神はどこかのタイミングで、すごく派閥に入れる規制が緩くなった時があって、大量に神々が入り込んできたんだろうね。たまにそういうことをする神がいるんだよ。ただ、派閥には入ったけど自分本位の者って多いからね」
「自分本位のやつが多い……派閥の全体像に対して全く知らないうえに、勝手なイメージで自分の組織を把握してるのか」
「それでも何とかやっていけるほど、神っていうのは技能的に優れてるからね」
「……要するに、『俺は大丈夫だ!』って考えてるわけか」
「うん!」
力強く頷くラターグ。
秀星は『そのやみくもな確信の根拠はなんだ?』と思った。
「というわけで、そろそろ間引きは終わるころだと思うよ。そして……そのうえで邪魔になるとすれば、僕や君だけだからね」
「その認識は甘くないか?」
「君は地球ではかなり有名で、僕は天界ではかなり有名なんだ。だから、その二人を一斉に処理し、『私は秀星とラターグを倒した!』という情報が流れると、一気に株が上がるわけだね」
「なるほど」
「彼にとって僕たちは邪魔だと思うよ~」
「ただ、俺やラターグに勝てるのか?」
「さあ?ただ僕に関していえばスキャンダルをたくさん抱えてるからね!」
「自慢気に言うな」
ポジティブすぎる。
「まあまあ、秀星君もそれくらいポジティブに生きた方がいいよ。ただでさえ苦労人なんだから」
「……」
お前が言うのか、といいたそうな秀星の目には何も言わず、ラターグはごろっとソファに寝っ転がって寝始めた。
溜息しか出ない秀星である。




