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第五百六十九話

「神でしかないんだな。こいつら」


 秀星はそう思った。

 というか口から出た。


「な、何故だ。何故、僕の力が使えない!」

「クソッ!俺の力が……」

「なんで使えないのよ!アイツは神器を使ってるのに、なんで……」


 理解できない状態に陥った場合に思考が停止するのは、人間であれば普通のことだ。

 ただ、『神の力が使えないのなら他の力を使う』という考えがないのだ。

 確かに、神の力の方が優先権があるため、小さな出力であったとしても神の力の方がいい。


 だが、神の力が使えないというのであれば、次善策をとればいいのだ。


 エインズワース王国で、秀星は一度、元星明りの大地スターライト・グラウンドのリーダーである星宮明美が持つ神器によって、『神器無力化』の効果を受けたことで神器を使えなかったが、『自分の体そのものを改造・強化する』ことで戦闘力を生み出した。


 策などいくらでも作れるのである。


「というわけで、まとめて気絶しておいてもらうよ」


 オールマジック・タブレットを左手に出現させて、それが光りだした。

 次の瞬間、全員に電撃が走った。

 結果として気絶する。


「ふーむ……自分の意見にそぐわない神を抱えすぎだろ……多分遠回しに、俺やラターグを倒せばいいポストを与えるとか言ってるんだろうなぁ……ていうかなんか何人か言ってた気がするけど」


 秀星は溜息を吐きながらその場を離れた。


 ★


「間引きは進んでいるか?」


 豪華絢爛という文字は、正確な描写をあきらめた楽な言葉である。

 だが、彼が言葉を発する場においては、その言葉がふさわしい。

 わかる範囲で描写すれば、大理石の床にクリスタルのテーブルが置かれていて、そこでは大きなフカフカのソファが対になるように二つ置かれている。

 他の物体がインテリア程度しかないので、この部屋は『ソファに座って対談すること』にしか使えないだろう。

 だが、そのためだけに部屋を用意できるほどの空間なのである。


「はい、現在はおよそ八割といったところでしょう」

「あの地球はかなり強いものが多数いて処分場として適切だな」


 二人の存在がソファに座って話している。

 入口から遠い上座に座っているのは、貴族のように豪華な服を身にまとった金髪の男性だ。

 ゆっくりとした動作で紅茶を飲んでいるが、育ちがいいというより幼いころから叩き込んできたのか、背筋はしっかりと伸びて、優れた所作である。

 ……ぶっちゃけてしまうなら、ラターグと比べればどのような神であっても優れているわけだが。


「ギラードル様。そろそろ、法案の方も整いつつあります。それから、あの地球を第二の天界として運営することを隠蔽する技術も、根本的な部分は完成しました」

「うむ。私もすべて目を通しているが、なかなか優れた法案だったぞ。フレイオ」

「当然です」


 下座に座っているのは、スーツ姿で眼鏡をかけた男性だ。

 左横にアタッシュケースを置いているので、大体必要なものはそこに入っているのだろう。


「計画が成功した暁には、お前に対するポストも考えておこう」

「おお、ありがとうございます。それでは、私は詰めておかなければならない法案がありますので」

「ああ。行くといい」

「はい」


 フレイオが立ち上がると、礼をして部屋を出て行った。


「……さて、あいつは間引きが終了すれば、うまく言って特攻させて処理するか」


 そういって、カップに残った紅茶を飲み干すギラードル。


 神には派閥があり、その中でも『指導者』と扱われる神もいる。

 その点では、ギラードルは『派閥の指導者』と言えるだろう。

 神そのものはいずれも利己的な存在であり、関係が悪化すれば切ることも多い。

 そして、『自分は切られる候補として挙げられている』ということすらわからないやつに、興味はない。


 だが、たとえ他の神に対して容赦なく切る神であったとしても、自分が抱える神兵に対しては、その内側に抱えている闇や、黒い部分を知ったうえで受け入れている神が多い。


 ほぼすべての神にとって。神兵長というのは、最も信頼を寄せる存在に等しい。

 どれくらいの者かというと、仮に計画が成功して、ギラードルが政治の指導者となったとしても、『フレイオがナンバーツーになったとしても誰も文句を言わない』くらいである。

 要するに、天界に存在する常識の部分として『神にとって、神兵長は特別』というのが普通なのだ。


 だが、ギラードルにはその常識が存在しない。

 たとえ手塩に掛けて育ててきた神兵長であっても、不必要となれば切る判断ができる。

 絶対的ともいえる『自分以外が性悪である』という価値観。

 ギラードルはそれにとらわれているのだ。


「フレイオが出した法案では、不必要な利益が官僚に流れる。それでは何も意味がない」


 ギラードルは、責任と義務を抱えて働く以上、その対価が支払われることは当然だと考えている。

 賃金というのはそういうもので、何かしら割引が発生するのは許容範囲内だ。

 しかし、汚職をさせるために政府があるわけではない。


「官僚はあくまで官僚。特権階級を作るために私が動いているわけではない。アイツは、それすらもわからなかったか」


 チャンスを与えることもない。

 ギラードルは、何かしら法案を自分に提出する場合、紙ではなくデータとして提出させるようにしている。

 それらを自分が作ったセーフティにかけると、汚職のための法案が出るわ出るわ……。

 機密の名を借りた横領をはじめとして、ペーパー会社に公共事業を斡旋してキックバック。官僚を特権階級にするために法整備など、言葉を巧みに使って汚職まみれになっていた。


「それを私が許さないことすら、フレイオには分からなかったか……」


 一瞬たりとも悲しそうな顔をすることなく、カップをテーブルに置いた。


「さてと、大体のことは済ませた。あと邪魔なのは……朝森秀星、堕落神ラターグ。この二人だけだな」

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